連続ブログ小説「南無さん」第五話
秋は夕暮れ。弓なりになって雄叫びを上げた南無さんは、フッと糸が切れたように後ろへ倒れこむと、やがて静かに射精した。
寝転がっていると、公園の芝生が背中をちくちくとくすぐるようで、それが気持ちよくて、南無さんは二度目には勃起もせずにサラリと流し出した。さながら乳白色の泉が湧いて出たようである。
山に帰るカラスの一羽が、通りざまに糞を落としていった。南無さんの少し手前より投下されたそれは、慣性にしたがって南無さんのヘソへ飛来、着床した。
自分の体から出たものと同じく白いソレは、顔をもたげた南無さんと目を合わせると、こんなことをいった。
「やいやい、どうしたってこんなところで寝ているんだ。お陰で俺ァ土に還れねえ。え、なんだってんだい」
よもやカラスの糞に叱られるとは思っていなかったので南無さんは面食らってしまったが、白い糞は特に気にした様子もなく当たりを見回すと、南無さんの股間に自分と似た色を見つけた。
「おいおい、そっちに行きゃあいいのかい、こいつぁ俺の見当が違ったようだ。相済まねえこった。悪いね、邪魔するよ」そう言いながらずるりずるりと南無さんのへそから這い出ると、白い筋を残しながら南無さんの股ぐらへとずり落ちていった。幸いなことに南無さんの毛は陰毛屋に取り立てられたあとだったので、糞を遮るものは何もなかったのだ。
やがて芝生に垂れた精液と合体すると、糞はもう喋らなくなった。
いったいなんだったのだと南無さんが起き上がろうとしたところで、まだ股間に掻痒感があることに気がついた。見れば糞が残した足あとの中に一筋黒い線が紛れ込んでいるではないか、しかもなにやらぐねぐねと、動いているらしい。南無さんはそれをつまみ上げようと身を起こしたが、その拍子に黒い線は南無さんの股間へと滑り落ちていってしまった。
そうして、あ、と思ったが最後、黒くてうねうねとしたそれは南無さんの尿道に侵入を試みたのである。すわ南無さんの運命やいかに、と案ずるには及ばない。なぜなら南無さんの尿道はすでに開発済みで、いろんなものの出入りが自由だった。いわば勝手口である。
これはまた新しい刺激を得た、と南無さん。先程よりひときわ大きい声を上げると、その状態から大きく上体を反らせ、ブリッジから勢い良く射精した。股間は瞬く間に勃起している。
ちょうど上空を通りかかったカラスたちが急いで南無さんから離れていった。
もう太陽は沈んで、あとは暗くなるのを待つのみである。
西の空に明星が見えた。黒い線がどうなったかは、南無さんも知らない。