彼の体調は数週間で元に戻った。 幸いなことに仕事をしたい気持ちも徐々に戻りつつあって、会社側に休み期間として伝えてあった1ヶ月を迎えようとしていた。 人事に戻りたい意思を伝えたところ、本当に戻れる状態か確認するため、カウンセラーや産業医との面談がまず必要とのこと。 ひさびさに行く会社。 少し気まずい気持ちもありつつ、勇気を振り絞って向かった。 カウンセラーとの面談では、入社から休職に至るまでの経緯や気持ちの整理を行った。会話の中では、こんなことも言われた。 「会社は
じつは彼、今年の春から仕事を休職している。 あまりにも仕事が忙しかった。 転職からはや3年、任される仕事もだんだんと多くなってきていた中、直属の上司が退職するというダブルパンチだった。 社会人になってからも、帰宅後に毎日必ず楽器練習をするのが日課であり、唯一といっていいストレス解消法であったが、それすらやる気が起きない状態になってしまっていた。 日中では仕事が終わらないから、夜中も仕事。 当然のように関西出張が毎週あり、帰宅は新幹線の終電。 典型的な一人暮らし独身男らし
彼の座右の銘。それは「なんくるないさー」である。 これまでの人生、決して順風満帆ではなかったけど、かといって死ぬほど不幸というわけでもなかった。至って普通の男の子。 誰しもそうだと思うが、思い通りにいかないと、自分は周りと比べてダメな人間だと決めつけてしまう。 そしてまるで人生のドン底にいるかのような気持ちになり、余計うまくいかなくなる。 でもその負のサイクルをなんとかして乗り越えてみる。 そうしてあとから冷静になって振り返ってみると、いまいる地点はすごく自分にピッタリ
これは、とある若者が夢を追う物語。 彼の親はサラリーマンと専業主婦。 ごくごく一般的な家庭に生まれた。 地元の公立小学校に通い、中学受験を経て、私立中高一貫校に進学した。 進学するや否や、東大合格を目指すために中1から塾に通い始めた。 なんだ、よくある高学歴ルートじゃないか、と思ったかもしれない。 でもこれは親から敷かれたレール。 自分で自発的に何かを考えたことなんてなかった。 中高6年間はあっという間に過ぎてしまい、案の定、浪人コース。 浪人中も、大学入学後の目標