見出し画像

新留学事情:目指す分野の「本場」で学びたい!がもたらす海外留学(その1)

はじめに

本稿は、TOEFL Web Magazineの連載コラムFor Lifelong Englishに2016年に掲載した記事の前半部分(その1)です。少々加筆しました。後半部分は引き続き(その2)でお届けします。4年後2020年から2022年まで新型コロナパンデミックで世界的に留学という活動が一時停止に近い状態になったものの、現在また復調しつつあります。但し、別稿「アメリカ理系Ph.D.取得者、日本人は大激減、中国人、インド人、韓国人、台湾人は大激増 ・・・Survey Earned Doctrates調査 」でも述べましたが、日本人の場合、学部、大学院生共々パンデミック前にすでに激減傾向にありました。本稿は8年前の2016年にそれを裏付けるデータおよびそれに対する反響に触れています。若い方々が海外に目を向け、そうした傾向に歯止めを掛けられるよう、その理由に触れました。別稿「新留学事情:Study Abroad Onlineのススメ](前編)と(後編)は、この記事に連動し、いつでもどこで誰にでも安価(または無料)でできる留学体験のススメです。参考にしてください。



TOEFL Web Magazine 連載コラムFor Lifelong Englishで筆者は過去4回TOEFL iBT テストとSATを紹介しました。いずれも日本の高校生に難しすぎるので敬遠との声を耳にしますが、高等学校卒業までに主要科目として英語を8年も学習するのですから挑戦できるはずです。否、挑戦すべきテストと言ってよいでしょう。算盤、簿記、柔道、空手、合気道などを8年も学びながら、難しいことを理由に、級・段の検定昇格試験も受けないというのに等しくはありませんか?

従来の受信型の学習方法では無理です。別稿「”学ぶ”から”する”英語コミュニケーション!---言語+5感覚表現媒体フル活用」や「TOEFL iBT®テストと効果実証済み"プロジェクト発信型英語プログラム"の発想」その他で述べたように、コミュニケーション重視の発信型学習方法に切り替えるべきです。英語の単語を丸暗記し、文法構文を覚え、訳読、穴埋め、並び替え問題に熟達しても身に付きません。柔道の本を読んでどんなに技を学ぼうとも実際にやってみなければうまくならないのと同じです。毎日段取りなどの練習し対抗試合に出たりしながらうまくなっていきます。英語も同じです。英語でコミュニケーションすれば身に付きます。これらのテストはその能力の到達度と診断をするテストで、柔道の昇格検定と同じなのです。

今ではインターネットで無料または安価で提供されている English online coursesを上手く使えば一人でできます。特にアメリカの主要大学が提供しているonline high school coursesは世界中から受講者が集まり、受講者同士、時には講師と意見交換ができます。

このことを念頭に、別稿「アメリカのだいがくに留学する際に必要とされる一斉テストSAT(2)TOEFL iBTテストに並行してチャレンジしてみよう。」
(近日中Note発表予定)で、これら2つのテストにチャレンジを促しました。(*1)

闇雲にアメリカ留学はダメ、求める領域の「本場」the home of learning を探す

そのチャレンジがアメリカ留学を射程に入れてのことであることはもちろんです。しかしながら、闇雲にアメリカ留学を推奨するわけではありません。自分が学びたい学問分野の「本場」がアメリカであることが前提です。これが今回のテーマです。アメリカに限らず、留学は「本場」で学んでいるとの確信が無ければ、現地の辛苦に耐えられず成功しません。学問分野の「本場」がアメリカ以外の国であるならそこに留学すべきです。日本でしか学べない学問は日本の大学で学ぶべきです。スポーツ界で、野球ならメジャーリーグ、相撲なら日本、サッカーならヨーロッパや南米での修行を目指すのと同じです。                                                                                                     

「本場」は英語で"the home of learning"と言います。まさに野球ですね。1塁the first base、2塁the second base、3塁the third baseに進んでも本塁the home baseに到着しなければ点が入りません。すなわち、自分が目指す学問領域、さらに絞って学びたいテーマの「本場」、すなわち、ホーム、1
塁でもない、2塁でもない、3塁でもない、本塁、ホームベースthe home base of learningを探すことが先です。

とはいえ、学業や部活で多忙を極める学生生活では、空き時間をうまく使って少しずつ調べていくしかありません。手っ取り早くできる例として、学術書がある大学図書館を利用することを勧めます。多くの大学図書館では高校生も含めて一般の人も登録すれば利用できる筈です。図書館の所蔵図書検索用のコンピュータに、該当する分野名を入力して検索すれば、その分野の書籍が収められているセクションが見つかります。最近出版された入門書、専門書、論文を収めた学術雑誌などの著者、それぞれの巻末にある参考文献の著者をメモしておき、インターネットで検索すれば所属大学や研究機関を調べられます。

インターネットで「本場」を探す

図書館が利用できなければ、インターネットで調べてみましょう。単に該当分野を入力しても出てきますが、bibliography(著書目録)をチェックするのもよいでしょう。bibliography in___ の下線部に該当分野やテーマを入れて検索すると、分野を代表する著書と著者のリストが分かります。annotated bibliography(注釈付き著者目録)には著書の概要が掲載されています。各分野の専門家に直接会って聞くのもよいでしょう。大学、企業の公的・私的の研究機関、専門機関にそうした専門家がいます。貴重な情報や意見を提供してくれるでしょう。

科学ではノーベル賞など世界的権威がある学術賞の受賞者の学歴・研究歴・教育歴をチェックします。ノーベル賞ならネットで簡単に調べられます。list of Nobel laureates in ___の下線部に、physicsなどの分野名を入れて検索すると出てきます。国別でしたらlist of Nobel laureates by countryで検索してみましょう。ちなみに最多1位のアメリカの歴代受賞者の数は357名です。list of Nobel laureates by university(affiliation)で調べると、大学別に国籍関係なく卒業生をはじめ何らかの形で籍をおいた受賞者がリストされています。ちなみにリストのトップはアメリカの主要大学で占められ、Harvard大学は卒業生だけでも70名以上います。同様の手順で他の世界的な学術賞についても調べられます。

要は、目指す学問分野の「本場」を調べることが先決です。自分が目指す分野の「本場」がアメリカであることが確認できれば、留学先は迷わずアメリカです。さらに、自分が目指す分野の専門家がアメリカのどの大学にいるかも調べると良いでしょう。第一志望の大学を絞ることができ、application form(願書)の志望動機がしっかりします。調べて行くうちにアメリカ留学へのモチベーションはさらに高まり、当然TOEFL iBTテストやSATにチャレンジしようという意欲も高まります。難しいからチャレンジするのをやめようという消極性はいつしか消え去っているでしょう。 (その2)に続く。

(*1)別稿「 ハーバードなどアメリカ主要大学、標準テストSAT/ACTの提出不要・・・試験スコアから創造力重視へ」(2024年執筆)で述べた通り、パンデミック以降、Harvard大学などのトップ校が軒並みSATトTOEFL iBTスコアの提出をオプショナルにしています。パンデミック期間中これらのテスト受験が困難であったということもありますが、これらの大学の応募者のスコアが平均95%を超え1点2点の差が合否の参考資料として役立たちません。その他いろいろな事情が絡んでいるようでこれについてはまた別稿で触れますが、アドミッション・スタンダードは更に上がり、SATとかTOEFLなど軽くクリアする能力が前提とされ、これらの試験が難しいと思っているようでは第一線の国際競争に遅れるでしょう。実際、日本はTOEFL iBTでは先進国はおろか発展途上国と比較しても低位に甘んじています。


サポートいただけるととても嬉しいです。幼稚園児から社会人まで英語が好きになるよう相談を受けています。いただいたサポートはその為に使わせていただきます。