目指す学問の「本場」か?現地で認可されている正規のプログラムか?正規の学位か?(その2)...留学チェックポイント-
「目指す学問の「本場」か?現地で認可されている正規のプログラムか?正規の学位か?」(その1)の続きです。
交換留学、英語研修プログラムの違い
しかし、アメリカの大学のキャンパスで繰り広げられているプログラムが全てそれぞれの大学の正規のプログラムであるとは限りません。正規のプログラムとは、どの国の大学でも同じで、大学の学則に明記され、学則に則り設置され決められた学位の取得ができるプログラムです。よく聞く大学の交換留学は、外国の大学と交換協定を結び、それぞれ学生が交換協定校に留学し取得し単位を認めるということが学則(履修要項)に明記されているので正規のプログラムです。
しかし、そうした交換留学以外に、アメリカの大学では特に夏季休業中に多くの英語研修プログラムが行われています。これらの多くは、大学とは直接関係がない教育機関が大学の敷地を借りて行っているものが多く、そこで取得した単位はその大学の単位にはなりません。但し、そうした中に日本の大学が夏季や春季の休暇を利用して行う研修プログラムがあり、それぞれの英語の単位として認められるものがあります。その大学の学則にはその旨書かれている筈です。しかし、それが行われているアメリカの大学側では場所と施設を貸しているだけで直接関係ありません。
Summer School、English as a seconf (foreign) language course
英語にある程度自信がある読者には、そうした、研修プログラムより、もし、日程が合うなら、アメリカの大学のSummer Schoolで正規のコースを取ることを勧めます。許可が簡単に取れること、そして学則にあるので正規の単位として認められます。また、日本に帰っても、多くの大学の学則で単位として認められる可能性は大です。少なくとも、筆者が赴任した慶應義塾大学経済学部も湘南藤沢キャンパスの学部も認めていました。
また、アメリカの主要大学にはEnglish as a second(foreign)language courseが、授業についていくだけの英語力が足りない留学生用に設置されています。多くの場合、履修単位にはなりますが、学位取得に要する単位には含まれません。1970年代のアメリカの大学では、こうしたESL coursesは大学の第三セクターの機関が行っていて、大学の正規の留学生以外に、これから他大学に入学する学生や、コースを取りながら他大学に入学しようとしている留学生が殆どでした。
筆者が居たGeorgetown University ESL coursesはそのうちの一つで、夏季休業には日本の大学生が、それ以外には、場所がら各国の政府、省庁、企業、大学からの短期留学で来られる人や、これから他大学の大学院に行く人たちが沢山いました。この機関は当大学のSchool of Language and Linguisticsの管轄下にあったので、教員は筆者の大学院のクラスメートらで、筆者も留学生の先輩としてよくアドバイスをしたものです。
TOEFL iBTテストは現地人学生と競争できる英語能力測定、大学入試英語とはレベルが違う
アメリカのEFLやESL coursesは、その前提が、そこに学ぶ留学生が、これから多くの分野で世界トップのアメリカの大学や大学院で、アメリカ人と対等に競争する英語力をつけることです。もし、これがたとえアメリカであっても、留学生専用の学部や大学院プログラムで、競争相手がアメリカ人ではなく、留学生同士であったら全く別物であった筈です。同じことが、TOEFL iBT® テストにも言えます。このテストは留学生とアメリカ人を区別しない、アメリカの正規の学部や大学院のプログラムで学べるacademic English communication skillsを持っているかどうか、そこでアメリカ人と一緒にそうした能力を更に磨ける基礎力を持っているかどうかを診断するテストです。
すなわち、外国からの留学生がthe first languageの母語以外に、今や、学術界では外国語a foreign languageではなく、a second languageとして併用できるかどうかを診断するのです。言い換えれば、バイリンガルに近い状態であるかどうかが問われるのです。筆者は多くの英語テストを見てきましたが、1967年に初めてTOEFL® テストを受けて以来この点に気づきました。あれはTOEFLテストの黎明期でした。以来このテストはアメリカの大学と二人三脚で相当数の学者を介入させ、しかも、学部や大学院入試のSAT, GRE, GMAT, LSATなどのテストと連動して改良を重ねようとして居ます。その前提は留学生を正規のプログラムで学ばせることで、それが世界トップのacademic English communication skillsを持つ日本の若者の育成を目指すというのが開国以来150年持ち続けた日本の英語教育の目標なら、それと合致します。
この視点から現有する多くの英語のテストを見ると、本コラムの読者はどれに挑戦すべきか自ずと分かるでしょう。英語は言語の一つです。日本語と同じです。誰か特殊な才能を持った人だけが使えるようになるのではありません。誰しもそれに向かって学習すれば使えるようになります。筆者の場合渡米して1年目はやっと授業についていけるかどうかでした。でも2年目、3年目になるとアメリカ人と対等に、自分で言うのも何ですが、それ以上の成績を収められるようになりました。
そして、30才前後で言語学(英語学)に専攻を変えて博士課程に挑戦した時には、何ら不自由も感じなくなって居ました。資金が無くて初めは1年で帰ろうと思いましたが、外国人もアメリカ人も平等に扱ってくれることに感動し、アメリカに残ろうと即断しました。高校生の頃描いた自分の生き方でした。英語学の本場でアメリカ人と学べたことに悔いなしです。
(2018年4月16日記)
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