Biden commutes death sentences~の"commute"とは?...英語ひとくちメモ
表紙写真Photographs - Supreme Court of the United States
2024年クリスマス直前、突如、バイデン大統領が連邦刑務所の死刑執行リストにある37名の死刑判決を終身刑に減刑する(commute)と発表しました。
Biden commutes dozens of death row sentences to life without parole (December 23, NBC News)
それに対してトランプ次期大統領はそうした減刑(commutation)がまったくナンセンスだと異を唱えました。
Trump blasts Biden's federal death row commutations: 'Makes no sense'
(December 25, NBC News )
ここで使われている”commute"(名詞形commutation)ですが、日本語にも借入され「コミュートする」は「通う」という意味一択で定着しています。それもそのはず、How to Use commute in a Sentence(Merrium-Webster)でサンプル文をチェックすると、(ほんの1,2例を除き)アメリカ人ですらこの語はもっぱらその意味で使っているようですから。私たち日本人がこれらタイトルを見たら通勤とは関係なさそうなので何のことやら首をかしげるのも無理からぬことです。
Webster’s Third International Dictionaryを調べてみると、この語の歴史は古く、多分中世英語の時代にラテン語の他動詞commutare:com- + mutare(まったく変える)から借入されたもので、基本はchange (変える)とかexchange(交換する)を意味する動詞であることが分かります。そうであれば、ある刑を別の刑に変えるということで合点できます。逆に「通勤する」なんていう意味がどこから来たのか気になります。以下を同辞書を調べてみました。他動詞そして自動詞の用法があります。
[他動詞]
1. to place or give in a exchange for another(~の代わりに~を置く、与える):
a) exchange換金する, substitute代用する, interchange交換する(例: commute foreign money to domestic外貨を国内貨幣に換える)
b) change, alter変える (例: commute base metal into gold卑金属を金に換える)
2.to convert 換える (例: the thithe was commuted to a rental to be paid in cash. 十分の一税は現金決済が可能になるよう賃料に換えられた)
3.to revoke (a sentence) and impose something less severe (判決などを)取り消し厳しくないものを科す(例:commute the death sentence for a long prison term死刑を取り消し長期刑を科す/Biden commutes the sentences of 27 individuals on death rowも該当する)
[自動詞]
1.to make up fpr something 埋め合わせする(例:commute with payments in place of 労役を金で埋め合わせる)
2.to pay in gross instead of part by part 少しづつではなくいっぺんに払う(=少額返済を一括払いに変更する)
3.to tarvel by use of a commutation ticket, daily to and from a city and one's suburban residence 定期振替券で郊外の自宅と町を移動する;travel back and forth regularly or frequently 常にまたは頻繁に行ったり来たり移動する(例:commute between Boston and New York ボストンとニューヨークを行ったり来たりする)
ここから、この語が元々は他動詞として基本「~を~で/に変える」という意味で色々な状況で長い間つかわれてきたことが分かります。(恐らく自動詞の用法はその後で派生したのでしょう。)商業・経済の状況では換金とか契約変更、法律・政治では政策や刑の変更、工業では原料などの変換加工など、基本的な意味が保たれています。もうひとつ想定されていることは、どの例文を見ても、より(都合が)良いものへの変換です。刑罰で言えばより厳しくない刑への減刑への変換です。上記2つの記事のタイトルのcommute(commutation)はまさにこれに該当します。
さて、commuteが自動詞として「通勤する」という意味で使われ出したのは、定義通り、「日々daily」「頻繁にfrequently」「町と郊外の自宅の間」を「移動する(travel」を可能にする飛行機、汽車、電車、バス、自動車が交通手段として普及してからと推察できます。この語の最も新しい意味と言えます。そこでこの語の基本的意義「変える」を「場所を変える」という意味に拡大解釈してみたのですがどうやらそうではなさそうです。
その決め手が”by use of a commutation ticket”(定期振替券で)とあります。それでこの"a commutation ticket"をチェックしてみると"a transportation ticket sold for a fixed number of trips over the same route during a limited period"(決められた期間内に決められたルート一定回数使用できる交通券)とありました。日本の定期券のことですが、"commutation"という語が付されており、それは[自動詞] 2.to pay in gross instead of part by part 少しづつではなくいっぺんに払う(=少額返済を一括払いに変更する)の定義に該当し「一回一回分けて運賃を払う代わりにいっぺんに払った」券とも解釈できるのではと解釈してみました。単なる推測です。
いずれにせよ現在一番頻繁に使われているこの語の意味「通勤する」にはその基本的意味「変える/変換する」が底流に流れていることが分かります。
バイデン大統領もトランプ次期大統領もlawmakerとしてこの語を法律用語として使い、死刑を終身刑などにcommute減刑するかどうかをめぐって真っ向からぶつかっています。来年1月20日大統領就任式をもってトランプ氏は大統領特権の恩赦(pardons)を発表するかもしれません。今回報道されているcommutationはそれを見据えてのことなのでしょうか。
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