虎に翼 第47話
GHQの働きかけにより、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本にして、多くの改正を目指す民法親族編と相続編。
寅子(伊藤沙莉)の言うように、これが実現したらどんなに喜ぶだろうと、去っていった仲間たちの顔が浮かぶ。
新民法、いいじゃない!どんどん改正を進めようよ!と思うのだが、妻が夫の家に隷属し縛られる形を完全に変えろというGHQの案をそのまま実現した場合、夫に先立たれた妻は婚姻関係がなくなるため、夫の名字を名乗れなくなる。
久藤ライアン(沢村一樹)「(夫が亡くなったら)夫の家族と、もう家族ではないです。バイバイ。そうしたくない女性だって沢山いるだろう」
ああ、43話の直言(岡部たかし)の「直道(上川周作)が亡くなっても花江ちゃん(森田望智)は猪爪家の人間でいられるんだよな?」は、作品内でこうした提示がなされる布石でもあったのか……。
はるさん(石田ゆり子)、花江ちゃん、寅子。猪爪家そして同居する佐田家の女性は、現在全員寡婦である。例えに出されたこの名字問題は他人事ではない。
ライアンの説明通りであれば、花江ちゃんは同居は続けられるだろうが、猪爪ではなくなる……花江ちゃんの思いがどうであろうと。
GHQの要求は、女性の尊厳を最優先にしているようにみえて、個人の思いという自由を保障するには至っていない。これは単純にはいかないぞと思っていたら、ライアンに寅子が
「君は思ったより謙虚なんだね」
どうしても出てくるスンッを指摘されてしまった。
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寅子がライアンに謙虚だと言われたことに
「トラちゃんが謙虚だと思ったことないよな」
と、笑い転げる直人(琉人)と直治(楠楓馬)。そのふたりをじっと見つめて、だんだん笑顔に近づいてゆく優未ちゃん(斎藤羽結)が可愛いったらありゃしない。
しかし、家族の団欒の中で、一人浮かぬ顔の花江ちゃんは
「私はとてもじゃないけど笑えないわ。直道さんの仇の国の人と寅ちゃんが一緒に仕事して、仲良くして」
ああ。この複雑な思いと嘆きは、朝ドラ『ごちそうさん』のめ以子も経験したものだ。愛する人を奪った国の人間を、許すことはできない。そんなに簡単に割り切れない。
「怒涛のように変わってゆく世の中についてゆくのに、誰しもが必死」
直人と直治も、小学校で教科書に墨を塗ったりして、その怒涛に直面しているのだろうな……と想像する。
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寅子のスンッな言動を
「君もそんな薄っぺらなことを言うのだなと」
と、面白くないっと唇を歪めて批判する桂場(松山ケンイチ)。
致し方ないではないか。どうしようもない状況に追い込まれた挙句の挫折を経験した。家族の生活を背負っている。失敗できない、この職場を失えない。守るべきものがある……。
そこに現れた神保教授、木場勝己!名優の登場だ、これは期待が高まる!
「こちらの素敵なお嬢さんは?」
「ご婦人がいるだけで空気が華やぐねえ」
お、おおお……現代なら完全にアウトな誉め言葉。
からの
「古き良き美徳が失われれば」
「家族と家族が手を取りあう必要がある今、家制度や戸主がなくなってしまったら大変なことになる」
保守も保守、ホッシュホシュなおじいさん先生やないか!極めつけが
「君もそう思うだろ?」
自分よりずっと弱い立場である女性に同意を求める権威ある男性の姿、現代でもよく見かけますよ先生!
さあ、どうする寅子。桂場もライアンも注視している。
うわあーーー!となったところで、つづく。
マジですか……。
(つづく)