虎に翼 第15話
私には傘や荷物を持たせるお付はいない、おにぎりを施す余裕はない、留学させてくれる家族もいない、休み時間に水泳したり歌歌ったりなんてできない……と法科女子部の仲間たちに言っていた、よね(土居志央梨)は実は、皆の苦しみをわかり、認めていた。
「この人は家事や育児をしながら学んでいる、この人は国を離れて言葉の壁もある、この人は常に周囲に行動を見張られて自由もなく、いろんなものに縛られて生きてる。そいつは誰よりも熱心に授業を聞いているのに、月のものが重くて授業を休まないといけない」
「これだけは言える……つらくない人間なんて、いない」
普段は教室で皆に背を向けて、耳に入ってくる会話を聞きながら、どれほど考えてきたのか。自分の身の上と比べて、どれだけの葛藤を抱えてきたのか。想像して胸がいっぱいになる。
そして「誰も弱音なんか吐かないだろ」というよねと、弱音を吐くべきだというトラコ(伊藤沙莉)……そうだね、弱音を吐いて初めて、自分と相手を認識できることもある。
花江ちゃん(森田望智)の本音も弱音も、聞けてよかったよ。確かに甘ったれた弱音だ。自分で選んだ道だろう、と言われてしまうのもわかる。だけど、自分で選択した道でも思った以上に厳しかったり辛かったり、耐えられなかったり……というのは、誰しも覚えがあるだろう。
大丈夫だ、こうやって打ち明けられたのだから。
そして、はるさん(石田ゆり子)が弱音を吐ける場も、これからはあってほしい。彼女だって悩んでいたのだもの。
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直道(上川周作)の「わかるよ」に、実は第一週から軽くイラッとしてました。違うと否定しているのに、まあまあ俺はわかってるんだからと一人合点される苦々しさ。わからなくても別に困らないから満足げに頷けるのだ。正直、上川周作でコミカルな演技演出だったから、そして花江ちゃんが彼に惚れた理由が納得いくものであったから、見ていられたというのはある。
この第15話を観てわかった。私が求めていたのは当事者意識だ。
直道は今回、妻と母……彼女たちを結び付けている当事者として理解するために考え、そして答えを出した。ふたりとも愛していて、ふたりには憎み合ってほしくなくて、そしてどちらか選ぶとなったら
「花江ちゃんが一番」。
だから別居、と。
膠着した関係に、スーパーマンとしてではなく当事者として舞い降りた直道。いい男だ。こんなときでも、ちょっとずれてるんだけど。
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今日はすごくよい場面、よい台詞だらけだったけれど、涼子さま(桜井ユキ)が、たまちゃん(羽瀬川なぎ)に「ありがとう、たま」と御礼を言う姿にグッときた。
怒りも、弱音を吐くことも、御礼も。口に出すことが大事ね……
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「失礼」と跪いてトラコの足を取り、三陰交……月のものの痛みに効くツボを教える、よね。ツンツンキャラがデレる瞬間というのは朝ドラの名物、盛り上がり要素の一つであるが、こんなにも高濃度王子様成分のデレシーン……
ちょっとみなさま、ご覧になりまして!?ご覧になりましたわね!?脳裏に焼き付けましょうね!
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一気に時間が進み、まさか法科女子部卒業式だなんて。
まさか5名しか残らなかったなんて。
ああ、でも!あの法廷劇を見に来ていた子たちが1年生になってる!ここで今日、一番泣いてしまった。劇は酷いことになってしまったが、怒りを露わにし立ち向かう法科女子部の姿に、希望を見出した少女がいたということだ。
根性あるぅ。
来週から本科。新たな舞台となる。
がんばれトラコ、がんばれみんな!
(つづく)
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