虎に翼 第32話
本人は平静なのに、本人以上に家族が異性に「きゃー!」と盛り上がる。この図は見たことある…『カーネーション』の糸子(尾野真千子)と、母・千代(麻生祐未)だ。
花江ちゃん(森田望智)と、はるさん(石田ゆり子)がふたりでアシストして寅子(伊藤沙莉)の気持ちを少しずつ揚げてゆく。
雲野事務所の事務員・常磐さん(ぼくもとさきこ)が読む雑誌に、厚生省が制定した『結婚十訓』が並んでいる。
一、父兄長上の指導をうけよ
二、自己一生の伴侶として信頼できる人を選べ
三、健康な人を選べ
四、悪い遺伝のない人を選べ
五、盲目的な結婚を避けよ
六、近親結婚はなるべく避けよ
七、晩婚を避けよ
八、迷信や因習に囚われるな
九、式の当日結婚届を
十、産めよ殖やせよ国のため
十にすべてが込められていると思うと、一から九までも「ケッ」と言いたくなるような国のご指導である。しかしこういったスローガンを見ると、否が応でも『適齢期』の男女に結婚の圧が高まっていることが察せられる。
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いつもとは違い口紅を差した顔、いつもとは違う素敵なワンピース。
花江ちゃんの
「ささいなことにお気づきになりそうな気の利いた殿方なんて、ほんの一握りなんだから」
という言葉通り、雲野先生(塚地武雅)岩居先生(趙珉和)も全く気づかない。お気づきになる殿方はその女性の装いに関心があるということなので、雲野先生と岩居先生が無反応……関心がないというのは、職場ではまことに結構なことだ。実際、常盤さんの「なにかお約束でも?」「ああ、そう。ウフフッ」というコソコソ話は、同性であっても若干ウザいではないか。
そして、サロンで待ち合わせた花岡(岩田剛典)が
「その服、とてもよく似合ってるよ」
と言ってくれたのは、花岡が「一握りの男」だからではない、寅子の装いに関心がある…というより、一緒に食事をする場にお洒落をしてきてくれたことが嬉しいからであろうよと寅子に耳打ちしたい気持ちでいっぱいだった。
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花岡に謝りたい。てっきりプロポーズするつもりで二人きりの祝賀会を提案したと思っていたのだ。
いや、花岡は迷っていた。ギリギリまで……
「もうとっくに大人だろ。身の回りでも所帯を持った者ばかりじゃないか」
から、握手をしての別れ際、万感の思いを込めた
「……ありがとうな。猪爪」
この一言まで、ずっと寅子の表情を読み、彼女の言葉の意味を考え、背負っているものと将来を思い……噴水の下で別れたのち、花岡の背中に向かって明るく「またね!体に気をつけてね!」と声をかける寅子に、振り向かず手を挙げて応える彼に泣く。まさか、全く言葉にせず、寅子に断らせもせずに別れるなんて思わなかったよ。
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そして、よね(土居志央梨)が雲野法律事務所に!
轟(戸塚純貴)と同じテンションで喜んだ。よねに「うっとうしい」と言われそうだが、ただただ嬉しい。
花岡が佐賀に帰ったときいて、ちょっと驚き「ふうん……」と言うよねに、
(お前もそう思うか)といった顔の轟。花岡と寅子のことは、共通の友人であれば気がかりだったろうな……わかるよ。
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寅子、ついに弁護士に。しかし依頼任に断られまくる。
あのー。雲野先生。寅子ひとりに最初から担当させずに、
「新人ですがご安心を!私も共にご依頼に当たりますので」とか、そういったフォローはなさらないんですか……?寅子が断られているのは
「女だから」だけではなく「新人だから」というのもあるのではと……
みんな人生かかった案件抱えて来てるんだろうし。
こうして新人を育てて行く段階って弁護士に限らずあると思うんですが、どうなんでしょう。
第33話は案件を担当させてもらえるといいな。
(つづく)