虎に翼 第40話
前回のラストで寅子(伊藤沙莉)を訪ねてきた人物。
この重苦しい週の金曜日に、寅子になんらかの救いをもたらしてくれるのか!?と思ったら、法科女子部の後輩・小泉さん(福室莉音)が女子部の閉鎖と、高等試験中止の報を伝えにきてくれた。
……救いじゃなかった……むしろ、寅子が切り拓いてきた女性法曹の道が閉ざされたという、更に打ちのめされる展開。寅子が出産育児で立ち止まっても、誰かが後に続いてくれるという願いは潰えた。
高等試験が再開されたら、必ず挑戦するという小泉さんの力強い言葉だけが希望だ。
他のみんな……よね(土居志央梨)、涼子様(桜井ユキ)たまちゃん(羽瀬川なぎ)、梅子さん(平岩紙)はこれを知っているのだろうか。ヒャンちゃん(ハ・ヨンス)にはこの報せは届くのか。皆、どんなに落胆するだろう。私のせいだと自分を責めるかもしれない。それを想像するのもつらい。
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そして、覚悟はしていたが、優三さん(仲野太賀)に召集令状が来る。
この第8週の月曜日の寅子の台詞。
「いつになったら女の人ばかりが辛い思いをする世の中が終わるのかしら」
これへの答えが示された。……いや、ずっと前から示されていた。男性は愛する家族からも打ち込んできた仕事からも引き離され、戦地に送られる。
理不尽に晒されているのは女性だけではない。
そして、男女それぞれに酷い目に遭うんだから一緒に耐えようねという作品ではないことは「私たち、すごく怒っているんです」の台詞などで表されている。
真に戦うべき相手は、壊すべきは、変えるべきはなんなのか。
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優三さんの出征までの、夫婦ふたりの時間やお別れの場面などは、簡単に感想を言葉にできない。静かだが、悲しみの中で愛が満ちている。
優三さん「寅ちゃんができるのは、寅ちゃんの好きに生きることです」
あなたはあなたのまま、あなたの人生を生き切ってくれることが望みだと笑顔で告げるのも愛であり、お裁縫は苦手な寅子が自分の着物の端切れで
「五黄の寅生まれの私が力を込めたお守り」を渡すのも愛。
恐らく、これまで毎日やっていたのであろう優未のオムツ変えをして、その温かさと香りを忘れないように抱きしめるのも愛。
夫婦で渾身の変顔を見せ合って、泣き顔で別れないようにするのも、
でもふたりとも涙が頬を伝い止まらず、胸元に雫が落ちるのも。
大河ドラマ『いだてん』に続き、また仲野太賀がバンザイで見送られ旅立つ。今度こそ帰ってきてほしい。光り輝く川辺で寅子に告げた「僕の願い」はまるで遺言のようであったが、そんな視聴者の予想は覆して構わない。
帰って……と、ここまで祈ってふと気づく。無事に帰ってくるということは、ころされないように戦って相手をころした人間として戻るということだと。この優しい人は、妻子のもとに戻るためにその道を選べるのか。いや、きっと多くの男性が、文字通り心を鬼にしてそちらを選んだのだろう。それで帰れた男性もいたが、そこまでしても帰れなかった多くの戦死者。
そして、朝ドラ『カーネーション』『ごちそうさん』を観た私たちは覚えているのだ。心を壊されて帰還した勘助、源太を。
どちらにしても地獄が待っている。
戦争はクソ。クソだ。
(つづく)