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虎に翼 第41話

3月の東京大空襲。よね(土居志央梨)とマスター(平山祐介)は逃げられたのか、カフェー燈台の外で空を見上げていた路上生活者は。
花江ちゃん(森田望智)のご両親は亡くなってしまった。結婚前のお食事会や結婚式の場面を思い出し、胸塞がる思いであるが、猪爪家に追い打ちをかけるように直道(上川周作)の戦死公報が届く。

花江ちゃん(森田望智)の顔をまともに見ることができない直言(岡部たかし)の心中、察するに余りある。

「どこかの島にいたのか。船が沈没したのか……」

紙切れ一枚で骨も帰らないどころか、どこで戦死したのかもわからない。
こうした戦死者は珍しくなかったのだと、祖母の思い出話を振り返る。

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玉音放送なしで終戦を迎える。あの放送は戦争の終わりを告げる象徴であり、朝ドラに限らず終戦を描く映像作品ではほぼ欠かせない存在だ。しかし、この作品内では登場しない。敗戦国として、国民の生死を賭けた戦いはまだ続いている……それどころか、ますます激化するのだという表現に思えた。

疎開先から帰った寅子(伊藤沙莉)たちが目にする、変わり果てた東京の街。出征した男性たちの大半がまだ帰国していないこともあって、画面には行き場を無くした女子ども、老人が映る。男性もいるが、心を病んでいるのか、乞食の子を叫びながら乱暴に突き飛ばす男、路上に座り込む傷病兵。

カフェー燈台の人は空襲で死んだと近所の女性は言うが、いやいやいや、まさか。何かの間違いですよと、寅子の代わりに返事をする。あれが寅子とよね(土居志央梨)の最期の別れになるなんて、そんな馬鹿なことはなかろうよ。
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はるさん(石田ゆり子)が直道の息子たちを慰めて言う

「おばあちゃんは、ちゃーんとわかってますよ」

「俺にはわかる」という直道の口癖は、彼が幼い頃に母・はるさんから、こう言ってもらって安心したからかと思うし、はるさんが子どもたちを安心させるために敢えて直道の口癖を真似して言ってみたようにも見えるし。
どちらにしても、はるさんの優しさが沁みる場面だった。

「僕にはわかってるんだ。寅ちゃんに言うと面倒なことになるって」
重苦しい回の、唯一の笑いどころであった。面倒なこと……うん。甥っ子たちが理不尽な目に遭っているのならば、なんとか解決せねばと寅子が相手の家族に掛け合いにゆく姿が、目に浮かぶようだ。正しい行動だが、子どもからすると「面倒なこと」なのよねえ、本当によくわかってる。

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成長著しい直明(三山凌輝)が戻ってきて、家族のために働く……帝大を目指せるほど優秀な若者が、学業の道を諦めてしまうことに、納得いかない。いかないのに、寅子から「はて?」が出てこない。優未を産み、優三(仲野太賀)を見送ってからの寅子は、悲しいこと苦しいことが起こっても沈黙してしまうだけになった。「スン…」とは違うように見える。ただ耐えているのでもない。目の前の事態を受け止めるだけで精一杯なのか。

あんなにも明朗で、生命力はちきれんばかりだった女性が、ぐしゃぐしゃに折り曲げられて元の姿には戻れないまま、なんとか生きているかのようだ。

42話では、寅子は自分を取り戻せるのだろうか。

(つづく)





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