作品を通してつながる「Creators-Stage」実験開始
初めまして。コンシューマシステム事業部の長尾です。
2024年3月より、芸術系学校に通う大学生・専門学生を対象としたサービス「Creators-Stage」のPoC(実証実験)をスタートしました。
このサービスは、芸術系の学生が持つ才能や可能性をより世間に知ってもらうために、Webサイトやリアルイベントを通して作品を発信する場です。最初は弊社の新規事業アイデアコンテストから始まり、関西の芸大である京都精華大学様に大いに協力いただきながら、ここまで来ることができました。試行錯誤のなかで、実際の芸大生にも参加してもらい、学生のリアルな課題やニーズを探りました。
今回は、そういった活動を通して学んだことについてお話します。
芸大生のリアルを知るために
サービス化に向けて検討するなかで、最も重要で難しい壁として「芸術系学校に通う学生のリアルな姿や思考って誰か知ってる?」というのがありました。
私たちのプロジェクトメンバーには、芸術系学校出身者がいませんでした。また、身近なデザイナーに話を聞いても、現役学生のリアルな生活や思考が以前とは変わっている可能性があり、想像の域を出ませんでした。そこで、次のようなユーザー中心設計のプロセスによって学生のリアルを浮かび上がらせようと考えました。
芸術系学生・生徒を対象としたアンケート
芸大生へのインタビュー
ペルソナ、共感マップ、ジャーニーマップの作成
導き出したペルソナへの物足りなさ
まずは、芸術系大学、大学院、専門学校へ通う現役の学生・生徒200人に対してアンケートをしました。そして、学校などで創作した作品の保管方法や、創作活動のモチベーション、創作した作品の販売意欲、利用している SNS(またそれを活用して作品発信をしているか)などを探りました。
次に、アンケートで得られた結果をもとに、関東、関西の芸大へ通う大学生にインタビューしました。このインタビューでは、生活スタイルや交友関係、日々考えていることや不満など、芸大生にとっての課題やニーズを深堀りしていきました。
そして、ここまでに集めた情報をもとに、ペルソナ、共感マップ、ジャーニーマップを作成し、私たちなりの仮説と芸大生像を描きました。
しかし、何かモヤモヤとした気持ち悪さが残っていました。もちろん、当初は知りもしなかった新しい事実や気づき、想定とは異なる芸大生の価値観など、得られるものは数多くありました。イメージした芸大生像が間違っているとは思いませんが、何かピースが足りないような、忘れ物をしたような怖さがありました。
そうだ、芸大生につくってもらおう
事業化には芸術系学校との連携は必須であり、私たちはサービス立上げに協力いただける学校を探していました。
いくつも学校を回っていたなかで、サービスコンセプトやチャレンジに対して共感いただき、京都精華大学様にご協力いただけることとなりました。また、京都精華大学様は、美術やデザイン教育はもちろんですが、メディア表現学部ではUXについても取り組まれており、まさに私たちが求めていたパートナーでした。
それをきっかけに、改めて京都精華大学様の学生と共にユーザー中心設計のプロセスに取り組むことで、仮説や芸大生像へのモヤモヤを解消しようと動き出しました。
見えない強敵「社会人フィルター」
ここまでに、芸大生の姿はある程度は見えてきたと感じていました。
しかし、業種や周りの環境が違えば、見える世界も抱く常識も異なります。また20代と50代でも物事の価値観も捉え方も大きく異なります。今回は、学生という業界も年代も、私たち社会人とは違うユーザーでした。そのため、気付かないうちに我々の「社会人のフィルター」がかかってしまい、学生の目線や価値観が抜け落ちていた部分があったと気付きました。
なので、改めて学生を中心に、インタビューからカスタマージャーニーマップ作成までを行いました。学生同士でインタビューをすることで、インタビューを受ける学生にとっても、いつもの大学の学食やカフェでする会話のような雰囲気で、本心に近いものが出てきたと思います。また、インタビュアーも同じ学生ということで、気になりどころや共感ポイントなど、同じ世代と環境を共有しているからこそ、深堀りできました。
そうして見えてきたことを、ワークショップを通して学生と私たちで手を動かしながらディスカッションし、さらに共通理解を深めていきました。
芸大生の"本当"の声
当初は、学生は自分の作品をアピールすることに積極的で、たくさんの人に見てほしいものだと思っていました。でも実際の声を聞いてみると、積極的に作品をアピールしたい学生ばかりではありませんでした。「制作は自分の楽しみのためで、作品を発信したいとは思っていない」「作品に思い入れはあるが、誰かに売りたいまでは思わない」など、率直な意見を知ることができました。
これ以外にも改めて発見することが多かったので、今回Co-Creationとして芸大生に参加してもらってよかったと思いました。
そして、PoC(実証実験)開始へ
学生とのCo-Creationによって、サービス検討当初には見えていなかった芸大生像がより明確になり、新たなインサイトが得られました。それにより、サービスから学生にとってそこまで重要でなかったものを削ぎ落とすことができたり、途中で抱えていたモヤモヤを払拭したりすることができました。
PoCでも、実際に出展の応募をしてくれた京都精華大学の学生の声を聞きながら、さらにユーザーに寄り添ったサービスへと模索し続けたいと思います。