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文字の力を過信してないか

あぁまただ。私は届いたメールを見て思う。

この人は文字の力を過信している。

言葉と文字のちがいについて

私は言葉が苦手だ。ぱっと言葉が出てこずに、あわあわ焦ってうまく伝えられないことがある。加えて自分の無神経さが相手を切りつけないように、言葉を選んで紡ぐ必要がある。30年以上言葉を使ってきてようやくこの言葉というものに慣れてきた。

対して、私は文字は得意だ。ゆっくり考えて、頭の中にあるぼんやりとした影を、ゆっくりと縁取っていくことができる。言葉は空気に霧散するけど、文字は残る。自分の思いが形作られていく様は正直快感。そこが好きで書き続けてるってのもあるのかもしれない。

言葉と文字って同じだろ、と思う人もいると思う。相手に伝達するという手段でいうと同じものだけど、私は別のものととらえている。あまりにも性質が違う。話すと書くは全く別物で、だからこそ私はあえてそれを「言葉」と「文字」と分けて考えている。まあこれはとても感覚的な話になってしまうからしっくりこない人にはこないんだろうけど。

そう、別物なのだ。言葉と文字は。だからこそ、私は文字をより大事に扱う。正直、言葉よりもずっとずっと気を遣う。

なぜなら、文字は言葉より鋭い刃だから。

言葉以上に鋭い刃をしている「文字」というもの

文字はそれだけだとあまりにも無機質で、冷たい氷のよう。だから、なにも手を加えずただつらつら書き連ねるだけだと、相手に冷たい氷をぶん投げてるものだと私は考えている。言葉は自然と感情が乗るが、文字は意識しないと乗らない。

「まちがえてるよ」

これも、文字と言葉で比較すると全然違うものになるだろう。私がこれを言葉で伝える時は冗談めかして言うと思う。まちがえてるよ~って。だってこの7文字、そのまま伝えるとちょっと重い。だからちょっとぐらい軽くしてあげないと受け取る相手がつぶれる。

で、これ文字でそのまま相手に伝えるとする。まちがえてるよ。その一言だけメールで送られてきたら、私頭抱えてうずくまると思う。うわ~やらかした~相手怒ってるのかな~ってしばらく落ち込む。
もちろんその後フォローの「次から気を付けてね」ってあるだけまだマシかもしれないけど、いや、この言葉も逆に重い。怒ってるのか励ましてるのか、全然読み取れなくて、追い打ちかけられてしぬと思う。ただでさえ相手の顔が見えない状態なのだ。

で、ここまで書いてきて感じると思うけど、文字はより、か・な・り「感情」を乗せないと相手をずったずたにする。

それなのに、文字を言葉と同等に扱って、伝えた気になってる人がなんと多いことよ。

感情を乗せなきゃいけないことはやっぱり「言葉」を使った方がいい

私としては、相手を注意するだとか、大きい仕事を依頼するだとか、相手の反応によってその後の言葉選びを考えなくてはいけない内容は、極力言葉で伝えるよう心掛けている。またはLINEとかで会話形式で伝える。顔文字も多用して、自分の感情を乗せて伝えている。私はね。

で、冒頭の出来事に戻るんだけど。
上司からメールで注意文が届いたのよ。一ミリも感情が乗ってない文面で。いや、違うな、乗ってた、めちゃくちゃキレてた。お前仕事舐めてんのかって心の声が聞こえてきた。私の顔が目の前にいないからって、言いたいことボロクソに言ってた。ここも言葉と文字の違いだよね。

文字は意識しないと感情が乗らないことはご存じですか?
私が目の前に居たとして、その言葉、口に出して言えますか?
それで正しく伝わったと思ってますか?
伝えたから自分の責務は全うしたと思ってませんか?

あなたは文字の力を過信していませんか?

――この問いかけを、私はにっこりと笑みを浮かべながら、間をあけながらゆっくり諭すようにしています。と最後に記して締めようと思う。このまま詰問しっぱなしで終わると怖いもんね?

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