嗜好の背景
趣味を問われれば、音楽、読書、建築鑑賞、料理、旅、散歩‥と答える。これらがなぜ自分の趣味になり得たのかという背景は、決して偶然ではなく育った社会環境によって規定されるという。フランスの社会学者ピエール・ブルデューの理屈。
例えば、労働者は「美しき青きドナウ」を好むが、高等教育卒者は好まないという。逆に、労働者は「平均律クラヴィーア曲集」を全く好まないが、高等教育卒者は好む。同じ写真を見せると、労働者と高等教育卒者の嗜好は逆になる。あくまでブルデューの調査だが。
人を類型化する考え方で、反発したい気もするが、一つの真理ではある。物事に対する好き嫌いの前提には評価眼があり、その評価眼は育った社会において育まれる。親の趣味が絵画鑑賞かパチンコかによって、子が受ける影響は異なるはず。先天的な資質の有無に関わらず、環境によって人間の行動は支配される。
どれほど愛し合う男女でも、元々の育ちが大きく異なると、やはりうまく行かない場合が多い。人を知る際には、その人の背景を知ることが大事。人を好きになることは、その人の背景も含めて受け容れること。当たり前といえば当たり前。