新任マネージャーが成長できる組織を目指した結果、「30分の支援プログラム」を全力で作ることにした話
こんにちは!
カミナシでHRを担当している緒方です。
社内では「のぶさん」と呼ばれています。
現在は、メンバーやマネージャーの良き伴走者として事業・組織の健全な成長に貢献するべく、HRBP機能の立ち上げに取り組んでいます。
そんな僕にとって「マネージャー支援」は重要なミッションの一つであり、マネージャーが安心してマネジメント業務に取り組める環境と仕組みを提供し、同時に成長できる組織を目指してお仕事しています!
まだまだ道半ばではありますが、一旦一区切りつくタイミングとなったので、同じようにマネージャー支援に課題を感じている方々に少しでも参考になる情報をお届けしたいと思い、この記事を書くことにしました。
はじめに
この記事は前半と後半で内容が分かれています。
前半では、
マネージャー支援プログラムに込めた考えや背景について触れています。
プロジェクトが目指したゴールや支援の重要性、そしてそれに伴う課題感について書いています。
後半では、
支援プログラムそのものの設計や運用における工夫点について具体的に紹介しています。
1テーマに対して30分で実施可能なプログラムをどのように設計したか、その狙いや実行方法について掘り下げています。
もし『30分の支援プログラムってどんなもの?』と気になる方は、後半部分だけを読んでいただければ、具体的な内容を確認できます!
そしてプロジェクトが立ち上がる
カミナシに限らず、企業の成長や組織拡大に伴う新任マネージャーの立ち上がり支援は、多くの会社にとって重要なテーマとなっています。
しかし、現代のマネージャーに求められる役割は非常に複雑で、多様なスキルや人間力が必要とされるため、この役割を担うことは一筋縄ではいかず、簡単にこなせるものではありません。
そのため、新任のマネージャーが安心してスタートを切るためには、適切な支援体制を整えることが組織としての大きな課題です。
この課題に向き合うべく、僕たちカミナシHRチームは「新任マネージャー支援プロジェクト」を立ち上げ、「新任マネージャーが成長できる組織」を目指して本気で取り組むことにしました!
プロジェクトが目指したこと
「人事が、人事のために、人事の仕事をする」とならないよう、このプロジェクトのゴールは単なる支援施策にとどまらず、事業・経営にインパクトをもたらすことを目指し、以下のように設定しました。
マネージャーが組織の戦略と合致した形でチームを育成し、目標達成に導くことで組織力が向上する
マネージャー自身の自己効力感低下を防ぎ、メンタル不調や離職を防止する
これらの成果を実現するためには、まずマネージャーが自分の役割を全うできる環境を整えることが不可欠であり、マネージャーが実際に「できる」ようになるための仕組みやサポートが重要だと考えました。
マネージャーの日常は「忙しい」
具体的な支援内容を検討する過程では、さまざまな試行錯誤がありました。
詳細を書くと大長編になってしまいそうなので、今回は試行錯誤の結果として得られた方向性に絞ってお伝えします。
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まず、このプロジェクトの一歩目として定めたのは、マネージャーが求められる役割を正しく理解し、日々の業務で必要な基本動作を確実に習得できるよう支援することです。
その実行方法を考える中で直面したのは「マネージャーはめっちゃ忙しい」という現実でした。
ここで言う「忙しい」とは、単にタスク量が多いという意味ではなく、その複雑さにあります。
先述した通りマネージャーは多くの役割を担っており、カミナシでも「マネージャー要件」としてマネージャーの役割を以下のように定義しています。(一部簡略化)
戦略を描き、実行を推進する
チームメンバーとの目線を合わせる
経営や周辺組織のハブとなる
組織を健全に保ちながら、拡大プランや育成に取り組む
これらの役割は、KPI達成やその他の成果管理と並行して求められるため、日常的な業務負担は非常に大きなものとなります。
だからこそ、僕たちHRの支援は「彼らが本当に必要としているもの」に焦点を当てなければなりません。
HRとしてどう支援するのが最適なのか
こうした状況の中で、単に「マネジメントの課題を伝える」「役立つ情報を提供する」だけでは、期待する効果を得ることは難しいと考えました。
その理由は決して、マネージャーが情報を受け取ることに対して消極的だからではありません。
むしろ、役割の多様性や日常業務の複雑さにより、受け取った情報を適切に活用するためのリソースを確保することが難しいから、と言えます。
また、情報提供型の支援は、「必要なときに探せばよい」というスタンスに依存してしまうため、マネージャーのプロアクティブな行動を過度に期待してしまいがちです。
しかし、現実的には、多忙なマネージャーが自ら情報を探し、選び、解釈することは大きな負担となります。
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このような状況を踏まえ、単なる情報提供ではない支援方法を模索し、選択したのが「HRが直接関与するハンズオンの支援」というアプローチです。
特に就任初期に重要な基礎知識や基本動作については、講座形式のプログラムを通じて、HRが直接サポートする形にしました。
こうすることで、マネージャーが直面する負担を軽減しつつ、必要な情報を確実に届けることができると考えたからです。
ただし、このアプローチはいわゆる「研修地獄」と化してしまうことを避けるため、プログラムの実施方法や内容には細心の注意を払う必要があります。
だからこそ、僕たちはこのハンズオンプログラムを全力で作ることに決めました。
マネージャーが実際に役立つと感じられるコトを、できるだけ負担にならない形で届けること、それが僕たちの大切な仕事だと思っているからです。
徹底的に拘り抜いたプログラムの設計
ここからは、支援プログラムそのものの設計や運用における工夫点について具体的に紹介していきます。
組織の状況によって正解は異なると思いますが、少しでも同じ課題に取り組む方の参考になれたら嬉しいです。
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1. テーマの選定は慎重に
「重要だから」と様々なテーマのプログラムが乱立すると、どこから習得を始めればよいのか分かりづらくなります。
そこで、マネージャーとしての成長を Basic、Standard、Advanced の3段階に分け、それぞれのステップで必要なテーマを整理しました。
最初のステップである Basic では、マネージャー就任後すぐに求められるスキルであり、活用頻度が高く、対応を誤るとリスクが大きいテーマを中心に選定しています。
カミナシではこれらの重要性を踏まえ、組織のフェーズや現在の課題と照らし合わせた結果、以下の4つを Basic のテーマとして定めました。
メンバー理解
1on1
目標設定
労務理解
それぞれのテーマの概要は以下の通りです。
メンバー理解
各メンバーの特性や状況を把握し、それに応じたコミュニケーションや働きかけを行うための基盤を築く
1on1
メンバーと定期的に対話し、目標達成の支援や課題解決、キャリア相談など、個別のニーズに対応する場をデザインする
目標設定
個人の目標を明確化し、チームの成果に向かって取り組むための認識を合わせる
労務・ハラスメント・DE&I
メンバーの心身の健康を守り、多様性を尊重した職場環境を実現するために必要な知識と行動を身につける
(画像割愛)
これらは、マネージャーとしての最初の一歩を確実に踏み出すための基盤であり、適切なアクションを支援する上で高い価値を持つテーマだと考えています。
2. プログラムの時間は30分
タイトルにもある通り、プログラムは一つのテーマにつき30分に設定しています。
マネージャーの多忙なスケジュールに配慮し、効率的に参加できる形を追求した結果、以下の3つの理由から30分が最適であると判断しました。
2-1. マネージャーの業務実態に即した設計
マネージャーは、会議や1on1、連絡業務、準備作業など、日々多忙な業務に追われています。
その中で、60分などまとまった時間は貴重であり、その分参加に対する心理的なハードルも高くなります。
30分という設定は「最小限の時間」という印象を与え、隙間時間を活用しやすく、参加の負担を軽減する効果があります。
2-2. 集中力を維持しやすい
長時間のプログラムでは、業務連絡やタスクの割り込みが発生しやすく、集中力が途切れるリスクがあります。
特に60分以上の場合、チャットや電話といった緊急性の高い対応が必要になることも少なくありません。
その結果、プログラム全体への没入感が失われ、学習効果が下がる恐れがあります。
30分という短い時間設定は、これらの割り込みを最小限に抑え、集中力を維持しやすくする利点があります。
2-3. 運営側の利便性
プログラムは複数のマネージャーが同時に参加する形式を想定しています。
全員のスケジュールを調整する際、60分の空き時間を確保するのは難しいですが、30分であれば比較的調整が容易になり、1〜2週間以内に実施できる可能性が高まります。
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このように、30分という時間設定は「参加しやすさ」という観点で大きな価値を生み、さらに、適度な集中力を保ちながらプログラムに取り組むことを可能にしました。
一方で、時間的制約がある影響で、ぷちワーク(後述)の回答を共有したり、感想を交換するといった、双方向の要素が制限される課題も浮き彫りになりました。
実際、受講したマネージャーから「他の参加者の意見や視点をもっと聞きたかった」といった声が寄せられています。
ただし、この双方向性の時間を取り入れると、インプットや思考整理の時間が削られる可能性があるため慎重にならざるをえません。
そのため、今回は体験や学びの質を高めることを重視し、インプットと思考整理を優先する設計を採用しました。
3. 資料は見やすく、わかりやすく
プログラム進行にはスライド資料を活用しており、短い時間にギュッと情報を詰め込んでも分かりやすさを損ねないよう、以下の点にこだわりました。
3-1. 1メッセージの原則
スライド資料の鉄則とも言われていますが、情報を明確に伝えるため、一つのスライドには一つのメッセージに絞りました。
特に、口頭で補足を加えながら説明する場合、情報量が多すぎると「読む」と「聞く」の情報が混在し、説明内容が正しく伝わらないことがあります。
スライドに書かれている内容を簡潔に読み上げた後に補足説明を加えることで、情報を効果的に届けることができます。
3-2. 複数のポイントを説明する時は少しずつ順番に表示する
とはいえ、『3つの目的があります』などのように、いくつかの情報を提示する場面があると思います。
この時に一気にすべての情報を出すと、受け手は読むことに意識が向くことになるので、あえて情報を小出します。
3-3. 視認性と可読性を意識したデザイン
フォントサイズ、要素の配置揃え、視線の流れなど、スライド作成の基本原則を徹底的に守りました。
4.「インプット」と「ぷちワーク」のハイブリッド構成に
すべてのプログラムで統一した構成を採用し、受講者の認知負荷を軽減しました。
具体的な流れを「メンバー理解」のテーマを例に、一部のスライドをピックアップしながら説明します。
(※実際には一つのテーマごとに60枚くらいのスライドがあります)
▶ はじめに
まずはマネージャー支援全体像を説明
▶ プログラムのゴールや意義の提示
そのテーマにどのような価値が込められているかを説明
▶ 先人の言葉
権威ある人物の言葉を引用し、重要性への理解を深めてもらう
▶ ぷちワーク(仮想体験)
初めてマネージャーを経験するメンバーもいる為、マネージャー業務の一部を仮想の「お題」として、自分だったらどうするかを考えてもらいます。
頭で考えるだけではなく、実際に手を動かしてもらうために作業用のドキュメントも用意しています。(弊社はNotion)
▶ オチ(学び)
テーマごとの一番重要な学びをまとめとして提示します。
▶ やってみよう(現状整理)
必要性についての理解をした上で、「自分の現在地はどうか」を知るための整理をしてもらいます。
メンバー理解では、マネジメント対象であるメンバーそれぞれの「Will / Can / Mustをどれだけ認識しているか」を確認しています。
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このように、情報提供と自己認知を整理する体験を織り交ぜ、「なんとなく聞いた気になる」ことがないようにしています。
さらに、知識のインプットや学びのポイントは、1テーマごとに絞って提供しています。
情報が多すぎると、持ち帰れる内容が分散してしまうため、「学び」や「実践」に直結する内容に集中しました。
プログラムへの評価
どれだけ拘ったとしても、実際に役立つプログラムになっていなければ自己満足でしかありません。
マネージャーから正しい評価とフィードバックを得るために、各プログラムの最後にアンケートを実施しています。
(1分程度で回答できるよう「選択式3問+任意記述」のシンプル設計)
一通りの実施を終えた結果、各設問の平均点は以下のようになりました。
社内アンケートという点を鑑みても、高い評価をつけていただけたと思っています。
これは、情報量を絞りつつも、受講者の体感を重視した構成が奏功した結果と考えています。
作成した身としてはQ1がとにかく拘った部分ですし、Q3はこのプロジェクトの主目的でもある為、これらの結果が高かったことはとても嬉しいです!
今後の課題と改善ポイント
今回のプログラム設計では多くの成果が得られたものの、以下の課題も見えています。
双方向性の向上
他の参加者の意見や回答を共有する時間が取れなかった点を補完するため、フォローアップセッションや共有コミュニティなどの運営を検討しています。
長期的な効果の検証
プログラムの満足度が高いだけでは、マネージャーが成長したとは言えません。
プログラムの受講後、実際の業務でどのように活用されたかを追跡し、長期的な効果を検証していく仕組みが必要だと考えていますので、その点は絶賛設計中です。
さいごに
プログラム設計においては、短時間で効果的な学びを提供するために多忙なマネージャーの状況に合わせた柔軟な設計を行い、受講してくれたマネージャー陣からも高い満足度を得ることができました。
一方で、双方向性の向上や長期的な効果の追跡といった改善ポイントも見えています。
これらを踏まえ、さらなるプログラムの充実を図り、カミナシが「新任マネージャーが安心して成長していける組織」になるようこれからも全力で取り組んでいきます!
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