【任天堂ゲーム大会】ガイドラインを遵守したコミュニティー大会の進行の仕方及び書式の案
1 はじめに
先日、任天堂さんが、自社が著作権を有するゲームについて、大会を主催するためのガイドラインを作成しました。
任天堂さんは、いわゆるeスポーツ業界とは一線を画す立場を取っており、ゲーム大会の開催についても消極的な立場を取っていました。そのためグレーゾーン(事実上黙認される形)で、非公式のコミュニティー大会が開催されてきました。今回のガイドラインは、これまでの現状にお墨付きを与えるところもあれば、運営方法についての是正を求める部分も見られます。
※お墨付き、といっても、法的には「著作権侵害を主張しません」ですから、特段の許諾を与えているわけではないことは要注意です。大会の運営方法によっては、大会中止の申入れや知的財産侵害に基づく損害賠償請求・差止請求を求められることが予想されます。
かなりボリュームが多く、じっくり読み込まないといけない部分が多いです。また、先例の集積を待ちたいところもありますが、以下の通り、箇条書きで気になったところをまとめます。
2 ガイドラインに則した開催条件
許諾なしでゲーム大会を開催するための条件を以下の通り整理します。
1 主催者が成人の個人であること
2 出場者は個人か、非営利のチームが出場者であること
※1 特にスマブラは、ゲーミングチーム所属の選手が増えている。チームの運営母体はそもそも株式会社(商人と扱われる)のことが多いため、非営利の要件を満たさないように思われる。
※2 ただし、Q8で、選手が個人として出ると表明すれば出ることができる、ただしその場合はチームが告知などできない可能性が高い。
3 オンラインで300人以下、オフラインで200人以下の出場する小規模な大会であること
4 出場料、観戦料はそれぞれ税込2000円、1500円以内に収めること
5 ただし、観戦料は、オンライン大会の観客からは徴収しないこと
※1 Q3を見ると、オンライン大会は出場者からも出場料の徴収はNGとある
※2 逆に出場者に出演料を払うのはNG(有名プレイヤーに対価を払って出場してもらうことはできない)
※3 金額制限は振込の場合等は手数料込の金額か?が明記されていない。出場者、観客の負担をなるべく避けるという趣旨があるならば、消費税込みの金額のようにも思える。
※4 なお、民法の大原則は債務者負担(485条)
6 参加条件、視聴条件に、チャンネル登録やフォロー、有料メンバーシップ加入を条件としないこと
※ 意外に忘れそうなので重要
7 徴収した出場料、観戦料はそれが大会設営費用に充てられることを明示すること、実際に充当するのは同費用に限られること
8 出場料、観戦料や景品購入費用を含む大会開催費用に関するすべての会計書類は、誰もが見られるウェブサイト、SNSに直ちに掲載して公開すること
9 徴収した料金が大会設営費用を超えないようにすること(その旨を明示すること)、超えた場合は料金を支払った出場者や観客に還元すること
※1 明記されていないが、超過額を全ての出場者、観戦者に按分などして返還するのは現実的に難しいように思える。あらかじめ出場者、観戦者の連絡先等をメモしておく必要があると思われる。あるいは「あ、これ以上受け取ったら超える!」となったら一切受け取らないようにする方法もあるが、支払った出場者、観戦者と、支払っていない出場者、観戦者との間で不公平が生じるため、グレーゾーンにも思える。
※2 あらかじめ出場者、観戦者の数は、黒字にならないような人数で固定しておいて(事前募集)、観客も座る席(有料)、立ち見(無料)みたいにすると計算がしやすいか?
10 大会の模様を動画投稿で収益化したい場合は、出場者から事前に同意を得ること、任天堂が出している「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」に基づくこと
※投稿の収益化は例えばYouTubeならパートナープログラムが妥当するので、スパチャ等は受け取れるように思われる。←上記のオンライン大会の観客から料金を徴収してはならないことの例外、と位置づけられるか。
11 出場者に対する景品は金銭、電子マネー、同様の価値があるものは避けること、物品でも50万円を超えないこと
※1よく「paypayで賞金を払ってもいいですか?」みたいな相談が自分に来るが、回答としてはNGとなるか。
12 スポンサー等の第三者から物、サービス金銭等を提供を受けないこと
※カンパや寄付は許されるかは微妙ではないか(文言上は×のようにも思える)
13 会場で飲食物や商品の販売を伴わないこと
14 大会名に、特定の商品や第三者の名称を付けないこと
※主催者や出場者、観客の多くが同一の団体等であれば利用可「〇〇大学ゲーム大会」等
15 大会名にゲーム名等をつけるのはNG
※〇〇ブラ、〇〇スマはグレーか。ただ、TwitterのTLを見る限り、このような団体も任天堂から個別許諾を受けているように思われる報告を見かける。
16 ゲームのキャプチャ映像やスクショは告知物に限り掲載すること
※Q2にあるが、任天堂のゲームのロゴ、イラスト、音楽、効果音等は大会告知や会場の装飾、BGMには利用できないとある。(装飾NGは公式感を出してしまうため?また、BGMは、別個の著作権が問題になるためやむを得ないか)
17 ウェブサイトや告知物には「この大会は、任天堂の協賛・提携を受けたものではありません」と文言を明記し、以下のURLへ誘導をすること
17 オフラインのコミュニティ大会場ではプレイ映像を上映することができる(上映権の侵害を主張しない)
18 大会の活動や告知に当たっては、プレイされるゲーム名に言及する場合を除き、ロゴやキャラクターイラストを使用しないこと
※「使用するゲームタイトルはスマッシュブラザーズです」等はOK
※実況者、解説者を用意して、「〇〇選手/くんの〇〇のキャラが〇〇をする!」等は文言上直ちに当たらないが、常識的に考えてOKか。そもそも〇〇のキャラ名や〇〇の技名など自体が知的財産としての保護を与えられるとは限らない?(グレーゾーンは、キャラ名とゲーム名が連動する場合?マリオ、ピクミン等)
19 海賊版、改造版のゲームは使用しないこと
20 任天堂が公式に提供していないオンラインプレイ用のサーバーは使用しないこと
※ディスコード等はNG、となるのか?オンラインの大会運営のノウハウに影響する可能性があるかもしれない。
21 学校やサークル、町内会が主催する場合は、2つまでの学校による大会であること、出場者はその学校サークルに限られること
3 大会開催の書式(告知物、同意書、会計報告書)
あくまで、ひとつのたたき台ですので、適宜微調整が入ります。私も後日、大会を主催したいと思っていますが、是非ご意見を下さい。
4 参考URL等
任天堂さんがおそらく配慮をしたであろう、参加料徴収型大会ガイドラインです。
配信・動画投稿のガイドライン
上述のコミュニティー大会のガイドライン(再度掲載)
上記ガイドラインから外れた、団体主催の大会や大規模な大会(オンライン200人超え、オフライン300人超え)を主催する場合には、個別許諾を得る必要があります。以下のURLは、許諾申請フォームの入力の仕方をまとめています。
5 追記
スマブラオフ会で有名なウメ「ブラ」は、個別の許諾が通ったみたいです。スマブラの名前ダメでも「スマ」とか「ブラ」なら問題なさそうですね。
檸檬堂のお酒を景品・賞品に提供していたオフ会は、ガイドライン(未成年にふさわしくないものはNG)に抵触すると判断して開催を断念した模様。
若干修正などされてますが、スマブラ界隈で知名度のあるくまっぷさんのツイート。界隈が今どんなことを気にしてるのかをフォローできるのでご紹介。
黒字繰越はNGだと思います