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「特許の鉄人2024」に出場しました

2024年8月24日、「特許の鉄人2024」第一試合に出場しました。「特許の鉄人」とは、制限時間25分以内に、初めての発明品を見てヒアリングし、従来技術と差異のあるクレームを作成するという過酷な試合です。



発明品

私の出場した試合でお題に出された発明品は、株式会社発明ラボックスの、鞄に装着でき、濡れた雨傘の雫を取れるKassupや、かさモンM2でした。
雨傘の吸水部材を内側(雨傘側)に取り付け、あらゆる雨傘に対応できるように、面ファスナーでしっかり固定する雨傘保持具です。左がかさモンM2、右がKassupで両方が発明品です。

Webから引用

一方、類似商品も、折り畳み傘用、長傘用とそれぞれに対応した個別のものがあり、吸水部材がついている商品がありました。類似商品を組み合わせれば、発明品になるのではないか?と感じ、進歩性を出すための技術的特徴を導き出すのに苦労しました。

類似商品(会場で投影された画面を引用)

色々考えた結果、本発明は類似商品と異なり、あらゆる傘に対応できるので、伸縮できる点が技術的特徴であると捉えました。


私の思考回路

通常、私は発明者さんにヒアリングするとき、発明者さんの思いをメモ(いつもは紙に記入するアナログタイプ)にします。その上で、従来技術との差異を抽出し、技術的特徴を明らかにします。そして、幾つか抽出できた技術的特徴の中から、ビジネス面でアピールできそうなもの、侵害発見が容易なものを中心に、他社が模倣し難い広い権利範囲を決定します。

今回私の思考回路は以下の通りです。あらゆる傘に対応できる点に着目して、最も広い権利範囲を作成しようとしました。

(本発明)
傘ホルダー
雨の日傘を持つのが不便
傘が濡れているので、バッグの外側に置きたい
傘を閉じたら拭きたい
鞄の外
折りたたみ傘も長傘も使える
初代ははみ出し吸水部(鞄も拭ける)⇒不評
(1)平面を巻いて筒状にする
(2)内側に吸水部
(3)入れるだけで雫が取れる
(4)持ち手 コンパクト

(従来技術との差異)
 巻くのはあった
 底部が無いものもあった
 鞄に付けるものもあった
 〇底がずっと空いていない

(ビジネス面)
 あらゆる傘に使えるように伸縮する

当日のメモ


本番で作成したクレーム

請求項1は、あらゆる傘を挿入できるように伸縮性を特徴にし、請求項2は、傘が落ちないように下側の開口面積を小さくしている点を特徴としました。今考えると、請求項1と請求項2を入れ替えた方が良かったと感じました。
請求項3は、美観を高めるために吸水部材が外から見えない点を特徴とし、請求項4は、かさモンの方のクレームで鞄に装着する工夫点を特徴とし、請求項5は、固定部下側のマジックテープ(登録商標)によって縛り付けることで、傘が落ちない点を特徴としました。

【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
鞄に装着可能で雨傘を保持する雨傘保持具であって、巻いて両端部を固定した状態で筒状になる筒状体を備え、前記筒状体は伸縮可能に構成されている雨傘保持具。

【請求項2】
前記筒状体は、前記雨傘の挿入方向に沿った上側の開口面積は、下側の開口面積よりも大きい請求項1に記載の雨傘保持具。

【請求項3】
前記筒状体の中央領域には、前記雨傘と対向する吸水部材が設けられており、前記雨傘を前記筒状体に挿入した状態で、前記吸水部材は、外部から視認できない請求項1又は2に記載の雨傘保持具。

【請求項4】
前記筒状体から前記雨傘の挿入方向に沿った上側に延びる一対の腕部が設けられており、一対の腕部の端部どうしを固定することにより、前記鞄に装着される請求項1又は2に記載の雨傘保持具。

【請求項5】
前記筒状体は、開いた状態の前記両端部に、第一固定部と第二固定部とが設けられており、前記第一固定部は、前記雨傘の挿入方向に沿った上側で所定位置に固定され、 前記第二固定部は、前記雨傘の挿入方向に沿った下側で位置を変更可能に構成されている請求項1又は2に記載の雨傘保持具。


総括

結果は負けましたが、選手として参加できて良かったなと思います。対戦結果よりも会場の皆様から沢山の応援、そして終わった後のお褒めの言葉を頂き、改めて25分間で発明品のヒアリングから技術的特徴の抽出、クレーム作成を仕上げるといった経験値を得られたことが大きかったです。

解説の谷先生、審査員の田村先生、綾木先生、佐竹先生からはプロ目線でのコメントを頂き、気付きが得られ、今後の弁理士としての資質向上に繋がった気がします。谷先生からは、クレーム1の伸縮方向について指摘があり、確かに様々な傘に対応するためには、「少なくとも横方向に」伸縮可能という文言にすべきだったと思います。このワードが入っていれば結果が変わっていたかと思うと、クレーム表現は、緻密に決定すべきであり、生成AIでは真似できない部分だとも思いました。

今回の対戦相手となってくれた弁理士法人R&Cの畑山先生にも改めて感謝の意を表すると共に、ご準備頂いた知財塾はじめ、運営スタッフの皆様、スポンサーの方々ありがとうございました。打ち上げ楽しかったです!!

知財塾のブログで、第4回「特許の鉄人」振り返り特集が今後アップされますので、是非、ご覧ください。


おまけ

審査員の綾木先生がVanceAIを用いて、私を新海誠風にアレンジしてくれました。だいぶん盛られています。

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