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【サッカー考察論⑥】モルフォサイクルから学ぶ休むことの重要性⑴


皆さんこんにちは。西田です。

今回の記事では「休むこと」「選手の疲労」などに焦点を当てた考察を、トレーニング論を例に出しながらの内容になっているのですが、文章が長くなってしまった為、二本に分けて記事を投稿します!

今回投稿の一本目→
「考察の参考にさせてもらったトレーニング論について。」

次投稿の二本目→
「そのトレーニング論から考えられる疲労回復の重要性の考察。」

という予定になっているので、ぜひ時間のある方は最後まで読んでいただきたいと思っています!


また、前回の記事を読まれていない方は是非こちらも!↓



【情報社会】


私は、実際にバルセロナへ行き現地で、スペインのサッカーやサッカーの指導方法、指導論を自分の肌で感じることが出来ました。ですが、まだまだ他にも学びに行きたい国はたくさんあります。今はまだ難しいですが、いつかこのコロナ禍の状況が改善し、時間と金銭的に余裕が生まれたら、また自分の成長のため、そして興味がある国へ行ってみたいという気持ちがあります。

しかし、なにも現地に行けないからといって何も学べないということはありません。今の世の中にはYoutubeやSNSなどの素晴らしい情報ツールがありますし、最近では様々なトレーニング風景やトレーニング論、さらには日本語へ翻訳されたものなどが無料で見られたり、実際に現地で学んで来た方や、今も現地で指導をされている日本人の方などが発信をしてくれるという素晴らしい時代になりました。もちろん自分の足で現地に行き、自分の目で見ることに勝るものはありませんが、使い方次第で学べることはあると思いますし、このような時代だからこそ、このようなツールはどんどん活用していくべきだと思います。



【科学的、理論的視点からサッカーを考えたポルトガル】


そんな私も一時期、インターネットを使って色々な国のトレーニング論について漁っていた時がありました。その中でも私が面白いなと思った国、それがポルトガルです。
今ではご存知の方は多いと思いますが、ポルトガルという国には、トレーニング論の中でも、非常に興味深い内容のトレーニング論が多く提唱されている国として有名です。中でも、最近日本でも良く聞くようになった「戦術的ピリオダイゼーション」は、ポルトガルのポルト大学のスポーツ科学教授であるビクトール・フラーデによってかなり前から提唱されてきました。

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※引用元:Skysport


彼のこの理論は日本人を含め多くの人によって解説されていますし、インターネットでも調べると見つけることが出来ます。
もしこの理論について詳しく知りたい方や興味がある方は、下のリンクに詳しく書かれているサイトのリンクを貼っておいたので見に行ってみて下さい。↓


この理論は相当面白いのですが、今回はもう一つ、私が考察するきっかけとなった理論を紹介したいとお思います。

その理論を唱えた人物とは、この戦術的ピリオダイゼーションの最たる支持者であり、数々の栄冠を手にしてきた世界的監督、そして現在ASローマの監督を務めるポルトガル出身のジョゼ・モウリーニョです。そして、その彼が提唱した理論は「モルフォサイクル」と呼ばれています。



【モルフォサイクルとは?】


モルフォサイクルとは、モウリーニョによって提唱された、1シーズンを週単位で期分けし、各週末にある試合に向けてどのようなトレーニングを行うかを考えるために構成されたトレーニングサイクルの事をことを指します。
その為、各曜日でどのようなトレーニングを行うのかをしっかりと考慮したうえでその週のトレーニングは構築されています。

週末に試合があることを想定し、その曜日が前の試合から何日後で、次の試合から何日前なのかによってトレーニングの内容や負荷が異なってくるこのサイクルで最も重要なことは、選手が前節の試合からの疲労をしっかりと回復し、次の試合までに良いパフォーマンス状態(シーズンのうちの最高のパフォーマンスを100%とするなら、80%くらい)へ持って行けるようにその一週間のトレーニングを考えるということです。

選手の疲労度と選手のパフォーマンスレベルは密接に関係しています。
昨シーズンのプレミアリーグ終了後、ペップ・グラウディオラは記者のインタビュー内でこのようなことを言っていました。

「私たちは今シーズン、始まってからは選手の疲労を回復することに専念することしかできなかった。そのくらい次々に試合がやってきたんだ。戦術的なことはプレシーズンのみしかほとんどやれなかったよ。」

年間の試合数が多すぎることで有名なプレミアリーグ(特にチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに参戦するチーム)ですが、ペップが言っている通り、このような過密日程の中で優先すべきことは選手を育成することよりも選手の疲労のケアをしっかり行うということです。

しっかり選手の疲労が回復しない限り負荷の高い(ここでの負荷は身体的なものと戦術的なものの両方が入る)トレーニングは一週間の中に入れるべきではありません。なぜなら、疲労が残っている状態で、そのようなトレーニングを無理やり入れても、選手の怪我のリスクが高まったり、肝心な試合で良いパフォーマンスが発揮できなくなってしまうからです。



【モルフォサイクルの内容】

ではここから、そのモルフォサイクルの具体的な内容についてですが、この週は、前に週の日曜に試合があり、次の試合は今週末の同様の日曜に行われる事を想定したプランになっています。

このプランは、先ほど添付した資料を参考にさせてもらっています。


月曜日(試合から+1)–パッシブリカバリー(休日)

ほとんどの期間理論では、試合の翌日、チームは軽いリカバリーセッションを行ってから体内に蓄積した乳酸を取り除くために、翌日(火曜日)に休みを設定しますが、モウリーニョは試合後の精神的な疲労、戦術的な疲労を考慮し、休日を月曜日に設定します。これがこのサイクルの特徴でもあり、彼らこの点についてこのように書いています。↓

戦術的ピリオダイゼーションでは、身体と心が切り離されておらず、感情的・精神的な疲労が優先されるため、試合の翌日には受動的な回復が行われます。これにより、選手は気持ちを落ち着かせ、考えを整理し、これから始まるトレーニング週に向けて準備することができます(Mourinho in Amieiro et al., 2006)


火曜日(試合から +2)–積極的な回復

選手はまだ試合から疲労を回復している最中のため、精神的または肉体的に厳しい要求は避けます。そのため、またゲームモデルの学習と獲得が始まる次のセッション(水曜日)へ向け、完全に回復することを目的とした軽いコンテンツになります。また、この日は小さなゲームモデルの構成要素を入れたることが可能です。
前節のゲームで発生したことをカバーすることを好むコーチもいれば、チームがアイデンティティを確立し続けることができるように変更されないゲームモデルの一般原則をカバーすることを好むコーチもいます。前述の両方のアプローチは受け入れられますが、プレーヤーは新しい情報を学び始める準備ができていないため、次のゲームでの作業は避ける必要があります。
回復セッションですが、それは特異性の原則に反するため、プレイヤーが気楽になりすぎないように注意することが重要です。プレーヤーは、ゲームで行うのと同じように、集中力を最大にして各エクササイズを実行する必要があります。ただし、各エクササイズの複雑さと期間は短くする必要があり、セット間で最大の回復が必要です。また前節のゲームに関与していなかった、ほとんどプレイしなかったプレーヤーは、ゲームに全て、またはほとんどをプレイしたプレーヤーよりも大きな負荷がかかることになります。(Mourinho in Ameiro et al。、2006)。


水曜日(試合まで -4)–体力の主要な物理的要素を持つサブおよびサブサブ原則の日

これは、ゲームモデルの学習からだけでなく、物理的刺激の観点からも、ゲームモデルの学習と獲得の最初の日です。この日は、ゲームモデルのサブ原則とサブサブ原則を、個人、グループ、部門別、さらには部門間のレベルで取り上げます。この日の意識すべきことは強さであるため、エクササイズのスペースを減らし、短時間のエクササイズを作成します。これらのエクササイズは、プレーヤーが加速、減速、方向と速度の変更、ジャンプ、シュートなど(体力を強調する物理的な動き)をしている状況をシミュレートします。プレーヤーはすべてのセッションを高強度で発揮する必要があるため、セットやセッション間の休憩時間は長くする必要があります(Bordonau&Villanueva、2018)。この日、コーチは通常、対戦相手に焦点を当てることなく、ゲームモデルの特定の詳細に取り組みますが、それはコーチの裁量に委ねられています。


木曜日(試合まで -3)–持続時間の支配的な物理的刺激を伴う主要な原則と副原則の日。

この日は最もトレーニングが複雑になる日になります。そのため、多くのプレーヤー(11v11、11v10、10v10など)がいる広いスペースで、集合的または部門間のレベルに焦点を当てて練習します(Bordonau&Villanueva、2018)。より多くのプレーヤーがいて、より大きなスペースと状況はゲームにとってより現実的であるため、1セッションの時間はより長くなります。これにより、試合に似た「連続性の中に不連続性」が生まれます。通常、この日は前の試合から完全に回復した日なので、コーチは次の対戦相手への対策を紹介します。なぜなら、次のゲームまではまだ72時間以上あるため、感情的、精神的、肉体的な観点から、新しい情報を完全に受け入れる準備ができているからです。


金曜日(試合まで -2)–速度の物理的刺激が支配的なサブ原則とサブサブ原則の日

このトレーニング中、すべてのエクササイズはスピードと速さを重視する必要があります。速度について話すとき、私たちは動きの速度のような物理的な速度だけでなく、精神的な速度(思考の速度)、そして反応の速度についても注意することが重要です。トレーニングでは少ないスペースで行う必要があるため、プレーヤーはより迅速な意思決定を行う必要があります。プレーヤーのバランスが崩れ、複雑さが軽減される可能性がありますが、思考と意思決定のスピードの必要性が高まります(Bordonau&Villanueva、2018年)。次の試合からわずか2日しか離れていないことを考えると、コーチはこのセッションでプレーヤーに過負荷をかけすぎないように注意する必要があります。セッション間は、休憩時間を含めて短くなければなりません。コーチがいずれかのエクササイズにスプリントを含めたい場合は、方向を変えずに直線にする必要があります(Mourinho in Amieiro et al。、2006)。


土曜日(試合まで -1)–事前アクティベーション

このセッションは、次のゲームに向けた最終準備です。この日の目的は、プレーヤーが肉体的および感情的に完全に回復することを確認しながら、ゲームに関する最終的な詳細を準備することです。コーチは特定のゲームの状況、セットプレー、さらには11v11のゲームに取り組むことができますが、セッションの長さは短く、完全に回復する必要があります。 11v11で作業するときは、フィールドのサイズを小さくすることが重要です(ハーフフィールドまたは2/3フィールド)。これにより、プレーヤーは、疲労と怪我のリスクのレベルを高める長距離を走ることなく、迅速な意思決定とアクティブ化に取り組むことができます(Oliveira、G.、2016年)。

これらを一個にまとめると以下のような図になります。
横軸が曜日にっており、縦軸は上から、ゲームモデルの原則、トレーニング規模、精神的・感情的要求、筋収縮への要求、スペース、インターバルの長さ、選手の人数というようになっています。
また、この色分けはその日意識するべき筋収縮を視覚化するためのものです。

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今回はモルフォサイクルの紹介までになっています。

次回の記事では、このモルフォサイクルで重要視されていること、そして、そこから考えられる「休むこと」「選手の疲労」に関する考察になっているので是非続きの記事も読みに行ってみて下さい!

→2へ続く。




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