家庭の蔵書数と子供の学力との疑似相関
2021年8月31日に文部科学省が,「令和3年度全国学力・学習状況調査」の結果を公表した。ここでは,家庭の蔵書数と学力に相関関係がみられるということで割と色々なメディアで取り上げられている。
例の設問は,下の添付の問22のp126。
しかし,2つの点で疑似相関(第三の変数が双方の変数に影響を与えていること)と思われる。
簡単に言えば,「親の所得」(もしくは家庭環境の良し悪し)という第三の変数の影響。
(1)親の所得が多い →蔵書数多い
(2)親の所得が多い→たくさんの本を置ける広い家→蔵書数多い
↓
(3)親の所得が多い→習い事・塾に通う可能性高い →学力
よって,蔵書数が多いから子供の学力が高くなるので本を置きましょうという帰結は間違っている。
しかも,この調査のもう1つの欠陥は,電子書籍の存在である。例えば,親が本を自炊したり,kindleで本を読んでいて,自宅に本はほとんどない(蔵書がない)が,親のタブレット端末やPCに1万冊の蔵書がある場合,この調査で行われている物理的な蔵書は意味をなさない可能性がある。以下の問いを見ていると,子供が親のタブレット端末やPCに入っている本をカウントしている可能性は低い。
蔵書数と学力の相関関係を信じたい人は,「普段から本が見えるところで子供が育つことで,子供が自然と本に触れて興味を持ったりする」ということだと思うが,「風が吹けば桶屋が儲かる」のように中間変数が抜けているか,第三の変数の存在が軽視されているように思う。
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