T. Nishimura

人的資源管理(Human Resource Management: HRM)の研究者です。本や論文の記録をしていく予定です。 執筆依頼・共同研究などのお問合せは,以下よりお願いいたします。 https://note.com/nsmr4156305/n/n32099d7dfec3

T. Nishimura

人的資源管理(Human Resource Management: HRM)の研究者です。本や論文の記録をしていく予定です。 執筆依頼・共同研究などのお問合せは,以下よりお願いいたします。 https://note.com/nsmr4156305/n/n32099d7dfec3

最近の記事

  • 固定された記事

お問合せ

執筆依頼・共同研究・講演・講師等のお問い合わせについては,以下のGoogleフォームからお願いいたします。

    • キャリアにおけるポジショニングの問題

       アカデミアにおけるキャリアは,学問領域ごとの個別性が高すぎて同じモノサシで測ることが難しい。  そのことを考えるための比喩として簡単な例を出したいと思います。 経営学において自社の優位性は, (1)外部環境でのポジショニングの違い  (2)内部資源の違い(他社にない特別な資源を持っている) から,説明される。  では,例えば,利益率が相対的に低い繊維産業と利益率が相対的に高い製薬業界で,ある繊維産業に属する企業の社員が,製薬会社の勤務する大学同期に向かって 「おまえの

      • パフォーマンスのダイバーシティ?

        1. 独立変数のダイバーシティ?ダイバーシティと聞くと,一般的には人種,性別,年齢,性的嗜好などの多様性を指しています。外見的な多様性(人種,性別,年齢)や内面的な多様性(思想,信条など),タスク(職歴の多様性)などがあり,それらが,パフォーマンスに影響を与える研究が大半です。 しかし,上記の話は独立変数側のダイバーシティであって,従属変数側のダイバーシティではありません。従属変数側の多様性は考慮しなくてもよいのだろうか?,という疑問が今回の内容です。 2. 従属変数の

        • JREC-INの募集内容の見極め方(個人の見解)

          JREC-INとは JRECINは,大学教員になるためのいわゆる募集サイトで,各大学が必要なスペックを提示してすでに勤務している大学教員から大学院に在学している博士課程の人たちあるいは実務家の人も含めて人材を募集するサイトです。    今回のNoteでは,どのように情報を見極めれば良いのかあくまでも個人の見解ですし経営学の視点からとなりますが,メモを残しておきたいと思います。 JREC-INで見るべき3つのポイント私自身は,JREC-INを使って何回か大学を変わっています

        • 固定された記事

          地方大学にいることの強みと弱み

          最近,X(旧Twitter)で若手の研究者の発信をよく見かけるようになりました。別の先生も述べておられるように発信が増えることは,地方の大学で孤軍奮闘している若手研究者にとってとても良いことだと思います。なぜなら地方の大学では,社会科学系の学部が一つにまとまっていることが多く,私が専門とする経営学領域においても,教員がほとんどおらず1人か2人ということもうざらにあるからです。 若い研究者の投稿を見て自分が地方の国立大にいた頃の気持ちを思い出したので筆を取ってみた次第です。

          地方大学にいることの強みと弱み

          【番外編】Youtubeより「岡村吉起さんと桜井正博さんの対談」の中の「定数」と「変数」の話から考えたこと

            1.岡村𠮷起さんと桜井正博さんの対談(Youtube)  いつもは本や論文をざっくり要約した上で感想を述べるのですが,今日は以下のリンクにあるYouTubeを観て思ったことを少し書いてみたいと思います。岡本さんはCAPCOMのストリートファイターや古くはsonsonなどのゲームを手掛けたクリエイターで,対する桜井さんは任天堂で星のカービィや大乱闘スマッシュブラザーズを手掛けたプロデューサーです。この2人の夢の対談が全8回にわたって展開されており,どの回も非常に面白いも

          【番外編】Youtubeより「岡村吉起さんと桜井正博さんの対談」の中の「定数」と「変数」の話から考えたこと

          研究者が所属する大学に「貢献」するとは?ー藤本隆宏(2020). 「発信せんとや生まれけむ―ジャーナル点数主義と日本の経営学―」.『組織科学』, 53(4), 18-28.

          大学に貢献するということは何なのだろうか,ふと考えたのでメモをしておきたい。 大学に貢献すると聞くと,すぐに思い浮かぶのは,自身の研究の成果を一流の雑誌や海外ジャーナルに投稿して掲載されることかもしれない。 しかし, 藤本隆宏.(2020). 「発信せんとや生まれけむ―ジャーナル点数主義と日本の経営学―」.『組織科学』, 53(4), 18-28. では,次のように述べている。 評価軸の多元化 私なりに藤本(2020)を解釈すると,海外ジャーナルに掲載されたことはと

          研究者が所属する大学に「貢献」するとは?ー藤本隆宏(2020). 「発信せんとや生まれけむ―ジャーナル点数主義と日本の経営学―」.『組織科学』, 53(4), 18-28.

          "ワイルドカード"研究者であること

          ここで言うワイルドカード研究者は,トランプをはじめとするカードゲームのジョーカーのように「万能」を意味していて,その分野についてどんなテーマを振っても卒なくこなしてしまう研究者をいう(私はワイルドカード研究者ではないけど)。ちなみに「ワイルドカード研究者」は,私の造語なので一般的ではありません。 でも,研究者にとって「ワイルドカード研究者」と周囲から認知されることは,必ずしも良い面だけとは限らない。 研究者のキャリアは,ある意味,その人が書いてきた論文や本で分かる。指導教

          "ワイルドカード"研究者であること

          僕がHRM研究者を志したワケ

          MBAの教員をしていると,MBAの学生や企業研修の受講生から「なぜ大学の先生を目指したのですか?」ということをよく聞かれる。 いくつか理由はあるけれど,整理をしておこうと思う。 0. 研究者になろうと思った3つの理由  1つは,元々ずっと会社にいるつもりはなかったこと。詳しいことは下に書いたが,多くの企業がMBAの出願要件として実務経験(だいたい3年から3年半以上)を求めており,その実務経験と学費を稼ぐというのが何となくあった。  2つ目は,自分の部長の転籍手続きを行

          僕がHRM研究者を志したワケ

          三戸公 (2004). 「人的資源管理論の位相」 『立教經濟學研究』, 58(1), 19-34.

           人的資本経営が注目される中,改めて「人的資源」とは何かを考える必要があると思い読んでみた論文。  本論文は,日本労務学会のシンポジウムを原稿に起こしたもので,しかも,本論文を読むまで「労務管理論・人事管理論」と「人的資源管理論」の違いを論じる原稿になぜ,大学の自己点検・自己評価制が関わるのか理解できなかった。しかし,読了後,「人的資源管理論」への名称変更と大学の自己点検・自己評価制の関連性が理解できた。 人事管理論は,管理の主体は人間であり, 客体もまた人間であった。

          三戸公 (2004). 「人的資源管理論の位相」 『立教經濟學研究』, 58(1), 19-34.

          奥田健次(2011).『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』大和書房.

           著者が,自分の専門は「応用行動分析学」と述べているように,行動療法の観点から子供の行動を促す言い回しや対処方法についてQ&A方式で説明されている本。  結論から言うと,参考になることが多いし,忙しいとつい自分もしている言動があるなぁと反省と共に読了。行動療法は,専門ではないので何とも言えないけど,ポイントは2つのように感じた。  1つは,刺激と反応のように,行動の結果,何が起きるのかを子供に分からせるということ。良いことをしたら思い切り褒め,悪いことをしたらサンクション

          奥田健次(2011).『叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本』大和書房.

          髙橋好江・武村雪絵・市川奈央子(2021).「仕事におけるエンゲージメントの概念整理と今後の方向性: 組織で働く看護職の特性を踏まえて」『日本医療・病院管理学会誌』58(4), 96-104.

          エンゲージメント概念を詳しく知りたくて 髙橋好江・武村雪絵・市川奈央子(2021).「仕事におけるエンゲージメントの概念整理と今後の方向性:組織で働く看護職の特性を踏まえて」『日本医療・病院管理学会誌』58(4), 96-104. を読む。とても参考になった!MBAのリーディングスリストに入れても良いかもしれない。 論文は以下からダウンロード可能。 この論文では,エンゲージメント(本によってはエンゲイジメントと表記されていることもあるので,検索の際は注意が必要) 一

          髙橋好江・武村雪絵・市川奈央子(2021).「仕事におけるエンゲージメントの概念整理と今後の方向性: 組織で働く看護職の特性を踏まえて」『日本医療・病院管理学会誌』58(4), 96-104.

          稲垣豊・新間寛太郎・羽鳥洋介・藤井奏枝・古橋健太郎(2021).「メガネスーパー V字回復を成し遂げた組織変革」『一橋ビジネスレビュー』 68(4) 東洋経済新報社 160-174.

          今回は,本ではなく,ビジネスケースの読書記録。 メガネスーパーが,以下のような痛んだ組織からいかに立ち直ったかを示すビジネスケースである。とても参考になった。 ポイントは, 1.創業者によるワンマン経営とマグレガーのX理論的な経営管理手法によって引き起こされた従業員の意欲低下 2.創業者の急逝による組織の混乱 3.業績低迷におけるファンドの介入による現場との乖離 そこにファンドから再生請負人として送り込まれた星崎尚彦氏が,どのように組織を立て直したかを示している。 組織

          稲垣豊・新間寛太郎・羽鳥洋介・藤井奏枝・古橋健太郎(2021).「メガネスーパー V字回復を成し遂げた組織変革」『一橋ビジネスレビュー』 68(4) 東洋経済新報社 160-174.

          家庭の蔵書数と子供の学力との疑似相関

           2021年8月31日に文部科学省が,「令和3年度全国学力・学習状況調査」の結果を公表した。ここでは,家庭の蔵書数と学力に相関関係がみられるということで割と色々なメディアで取り上げられている。  例の設問は,下の添付の問22のp126。   しかし,2つの点で疑似相関(第三の変数が双方の変数に影響を与えていること)と思われる。  簡単に言えば,「親の所得」(もしくは家庭環境の良し悪し)という第三の変数の影響。   (1)親の所得が多い              →蔵書数多

          家庭の蔵書数と子供の学力との疑似相関

          媒介効果の測定マクロ「PROCESS」

           統計分析で媒介効果(X→Y→Z)を測定するツールとしてSPSSにアドインできるマクロとして「PROCESS」がある。  ダウンロードサイト:  https://processmacro.org/download.html  もちろん清水先生のHADでもできるが,独立変数・媒介変数・従属変数の3変数しか見ることができない(2021年12月25日時点)。  PROCESSは,共変量となる変数も統制できる点が強み。  Youtubeで解説があったので載せておく。    自分用の

          媒介効果の測定マクロ「PROCESS」

          永松茂久(2021).『喜ばれる人になりなさい母が残してくれたたった1つのこと』すばる舎.

          「編集者が5回泣いた。」というキャッチコピーに惹かれて購入。  結論から言うと私は泣きませんでした。だからといって悪い本ではなく,経営学的にみても納得できる部分がある本である。  まず,この本の肝はタイトルにもある通り,「喜ばれる人になる」ということを主眼に置くということ。「利己」に対する「利他」といってもよいかもしれない。ただ,内容的には同じことがトピックスを多少変えながらも冗長的に書かれているので,早く読める分,間延び感がある。 (細かい移動時間を利用してモジュール(=

          永松茂久(2021).『喜ばれる人になりなさい母が残してくれたたった1つのこと』すばる舎.