見出し画像

キャリアにおけるポジショニングの問題

 アカデミアにおけるキャリアは,学問領域ごとの個別性が高すぎて同じモノサシで測ることが難しい。

 そのことを考えるための比喩として簡単な例を出したいと思います。
経営学において自社の優位性は,
(1)外部環境でのポジショニングの違い 
(2)内部資源の違い(他社にない特別な資源を持っている)
から,説明される。

 では,例えば,利益率が相対的に低い繊維産業と利益率が相対的に高い製薬業界で,ある繊維産業に属する企業の社員が,製薬会社の勤務する大学同期に向かって

「おまえの会社は大した経営努力もしていないのに,高い利益率を出しているよな」

と発言したとしよう。

この発言に同期は,
「それは繊維産業を選択したお前のリサーチ不足でしょ」とか
「だったら利益率の高い(≒給与の高い)企業・業界に転職したら」とか
「給与を上げるために何が必要かを考えてスキルを磨いたら」など,アドバイスするだろう。

同じことがアカデミアでも言える。
上記事例は,

業界=各学問領域
利益率=業績・評価基準

を示す。そう考えると
利益率という目に見える,あるいは比較しやすい業界横断的な指標は作成できるかもしれない(いわゆる雑誌のインパクトファクター)。

 でも,利益率が「高い」「低い」といった水準の高低はバラつきがある。
上記の例で言えば,繊維産業にせよ,製薬業界にせよ,利益率の分布が標準正規分布であると仮定すると,繊維産業でイケている企業(上位10%の企業)は,製薬業界の利益率でみたら下位10%と同じくらいの利益率かもしれない。この時,繊維産業の上位10%の企業のことを製薬業界の人々は,馬鹿にしたり,嘲笑したりすることはできない,と個人的には思う。

 だが,現実は必ずしもそうではない。ピアレビューという名のもとに「グローバルスタンダード」の評価基準が形成されつつある。その結果,昔から「グローバルスタンダード」の評価基準で戦ってきた学問分野がマウントを取り始め,諸事情により後発として「グローバルスタンダード」に合わせようとしている経営学が過渡期で苦労している。

 例えば,「紀要」の位置づけや国内学術雑誌(=インパクトファクターのついていないもの)に対する評価が分野によって極端に異なる。こうした学問の分断が対立構造を生み出しているように感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?