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30年後にとけた魔法 トルード・デ・ヨング『くまのローラ』(児童書・1994)
子供の時にはわからなかった。
小学5年生の娘が、私の古い本を読んでいた。7才の誕生日に、親戚からもらったものだ。
トルード・デ・ヨング『くまのローラ』
懐かしくなって読み返した。
舞台はオランダ。主人公はノールという女の子。両親の離婚で、父と二人暮らし。5才の誕生日に母から届いたクマのぬいぐるみ・ローラは、彼女の大事な相棒になる。
大切にしていたのに、ある時、ノールはローラを電車に忘れてしまう。ローラは見つからず、悲しむノールのもとに、ローラから手紙が届く。
「私は元気だから心配しないで」
さらに、写真も届く。でも、ローラは写真を撮るのが下手なようで、ぼんやりとしたクマの影だけが写っている。
そして、「私の子供よ」というローラからのメッセージとともに、新しいクマのぬいぐるみが届いて、物語は締めくくられる。
これを初めて読んだ7才の私は全く気づかなかったが、ローラからの手紙は、ノールのパパが書いたものだろう。写真がぼやけているのは、小細工がばれないようにするため。新しいくまさんを送ってくれたのもパパ。
ノールって愛されてるな、と大人の私は思う。
ローラが元気でいてよかった、と子供だった私は思った。
魔法がとけてもがっかりしていないのは、やはり自分が大人だからだろうか。
娘にも聞いてみた。やさしいパパの魔法をもし娘が信じていたら、それを邪魔したくないので、用心して尋ねた。
でも、あっさり、「あれはパパでしょ」と言われた。