違和感を感じることは大切です
日本企業では、4月は入社式でスタートしますが、新たな社会人になった人たちは自分が感じる「違和感」は大事にしてほしいと思います。
企業に入って最初に感じる違和感は、まともに生きてきた自分と企業における差異であり、問題や課題がある部分となることが多いからです。
私は新卒で入社した企業において、毎月行われていた「押し込み販売」、いってみれば毎月の売上目標に到達することができないとき、代理店に販促費を支払って達成させるための販売数量を納入させてもらうことでした。
必ずしも毎月ではありませんでしたが、このような販売方法で押し込んだ商品についていえば販売先が確定していません。
代理店からみれば過剰な在庫になります。
私には、メーカーの甘えとしか映りませんでした。
ほかにメーカーとして努力、対応することがあるだろうと。。。
しかも、メーカー側がおこなう実績作りのための押し込み販売の要望に応じていた企業(代理店)の多くは倒産していきました。
勿論、私が在籍していた企業の商品は日用品ですから、だまっていても毎月コンスタントに販売できる数量をもっているのも特徴でしょうか。
会社(責任者)は、押し込んでも売れると考えていたのでしょう。
しかし、押し込んだ翌月の販売に関しては、押し込まれた商品が販売できるまで代理店へ新たな商品が納入されることはありません。
これを繰り返していれば、目標数字が未達の場合、必ず押し込むという悪弊がついてきます。
また、実際に悪弊がついていました。
私は、入社と同時にこのような販売を毛嫌いしました。
なにか自分のなかでしっくりとこないので、ずっと違和感を持ち続けていました。
私が担当した代理店は、東京でも福岡でも決して押し込み販売を許可しませんでした。
メーカーのこのような要請を拒否する経営の強さ、あるいは軸がありました。
そのかおかげで年間を通して、計画的にどのように商品を販売するかという実行力がつきました。
年間の販売計画を3か月単位で計画をたて、数字を落とす月(未達の月)、たとえばある月は、競合他社へ販売をゆずりますが、とくに販売数量があがる11月と12月は2か月間確実に販売を固めておくなどの施策をおこないました。
月末の押し込み販売に違和感をもったことから、販売における計画性をもつこと、さらに販売エリアの実態を把握することがとくに重要で、細かな販売施策と対応ができるようになりました。
販売数量未達のために、代理店へ商品を押し込むことなどしないで、営業として、メーカーの人間としてプライドをもって仕事をしたい、と。
しかも、私は、自分だけでなく、営業所全体でやらなければ意味がない、と考えていました。
そのうえで、私は、福岡営業所全体で押し込み販売を止めることを提案し、社員を巻き込んで押し込み販売をやめるために邁進しました。
自らの仕事をやりぬき福岡営業所で他の社員の信頼を得たうえで、この取り組みをはじめました。
当初、すぐにうまくいきませんでした。
そもそも営業所のトップ(所長)は自分のことしか考えていないような方でした。
旧態依然のやり方を変えようとする意志もなく、この責任者がみているのは、常に本社でした。
この所長、市場をみることもなく、取引先を理解するのでもなく、本社しかみない姿勢に、私はあきれていました。
会社をなんだと思っているか、と私は不信感を募らせました。
また、別な機会に書きますが、もともと私がいた企業がもっていた福岡における強い市場を、本社にばかり顔をむけていた長い時間のなかで販売シェアを落とし、他社にシェアを奪われるという情けないくらいのていたらくでした。
販売シェアを奪い返すのに、どれほど時間とコストがかかるかなど、なにも考えていませんでした。
市場は生き物です。
日々、商品は販売され消費者が購入していきます。
代理店の倉庫に眠っている商品在庫にはなんの意味もありません。
商品は、市場のなかにあってお客様のもとへ旅立つことを願っています。
このような流通が、本道であり、お客様にもっとも近い場所へ商品を供給するのが営業職の使命だ、と考えていました。
だからこそ、各エリアにおける販売を計画的に、とくに量販店における特売において販売計画を策定することが重要となってきます。
販売目標となる数量を直接お客様のもとへ届けてはじめて私たち営業職の仕事が完結します。
代理店の倉庫への販売は、企業(責任者)のための販売であり、お客様へ届けるための販売ではありません。
いわば仮需であり、実需になっていないのです。
ここに大きな問題があると、入社時から違和感を感じていました。
所長を除き、上司を含めて他の社員の協力を得て、すべてエリアの販売計画をもちより、販売がうまくエリアとむずかしいエリアを全員で検討しながら、当初目標を達成するために、どの月、どのエリア、どの量販店を攻めるかという会議(所長未公認)をおこない、それぞれの社員が協力しながら、営業所の目標達成をおこなうというものでした。
うまくできるようになるまで「言うは易く、行うは難し」でしたが、福岡営業所へ異動して4年ほどのときが流れていたでしょうか。
福岡営業所で他の社員の協力もあり、はじめてこの取り組みは成功しました。
福岡で8年間勤務した後、私は千葉営業所へ異動すると間もなく転職しましたから、販売施策が継続されたかどうかはかわかりません。
それでも他の社員の協力があれば、あれだけのことがやれるという自信がもてるようになりました。
転職したソニー子会社では、このような憂いはまったくありませんでした。
理由は、事業計画は現場責任者自らが作っていくからです。
また、ソニーでは内部監査制度がしっかりと確立していますから、押し込み販売などすると、確実に指摘され、改善されることになるでしょう。
企業とは、経営能力に大きな格差があるのだ、と私は理解することができ、私の違和感が、すべて晴れた瞬間でもありました。
もっとも、その分私自身に課せられた仕事において、営業職時代とは比べものにならないくらい強烈な時間を過ごすことになりましたが。。。