創業経営者が学ばないのは過信からだろう
創業経営者が学ばない理由は、自分自身の過信からだろう。
学ばないから過信に陥る。
創業経営者は、やはりそれなりに成功体験が強い。
俺がこの会社を大きくしたという自負がある。
大きくしたといっても、たかが300億円ほどの売上だ。
私に言わせれば、それがどうした、なのだが、創業経営者はお山の大将だ。
人もお金も自分のものだと錯覚している。
心地よい自分だけの世界に浸れる。
ここからでるのは、なかなかむずかしいのだろう、と思う。
私のような従業員が偉そうに能書きをたれていれば、経営者の罵声が飛ぶ。
これが創業経営者の実態だった。
いろいろな中小企業の面接を受けた。
経営者について出てくる参謀(迷?)は、経営者の言いなりだった。
このよう企業に入社するのはできるだけ避けた。
私が入社した経営者は、経営者ひとりで私の面接に出てきたタイプだ。
参謀がいない強烈なワンマン経営者だった。
入社後、しまったと思ったが後の祭りだった。
本質的に悪い人ではないのだが、従業員(管理職)を威嚇する。
どの管理職も仕事どころではなかっただろう。
対象はあくまで管理職なのだが、転職してきてもこのような経営者なので、だいたいすぐに逃げ出す。
また、一般職は、そんな管理職ばかりみているので、おそらくだが、心のなかで笑っていただろう。
組織の体をなしていない、とはまさにこのことだった。
私は人間性をみていたので物差しが飛んできても平気だった。
この経営者、ちゃんと当たらないように計算して投げていたからだ。
目をみればわかる。
殴ることもなかったので、恐れる(ビビる)ことはないのだが。。。
だが、声が大きくいかつい顔なものだから、多くの管理職は恐れる。
恐れると、さらに怒鳴る。
悪循環だった。
後に聞いたが、当たらなように物を投げていたそうだ。
当てれば、傷害だ。
やるわけがない、といっていた。
私は怖くなかっが、経営をまっとうな軌道に乗せることはできなかった。
自分を過信しすぎているのだ。
また、自分以外を信じない。
この人をみていて創業からの苦悩が手に取るようにわかった。
人間に裏切られているのだ。
成功者として持ち上げられたことも忘れらないのだろう。
中堅規模だったが、事業に成功して上場までしていた。
また、社員数が300名近くになっていたが、社員数が100名を超えたころから、どのように経営していけばよいのかわからなくなった、と企業が傾き厳しい状況に陥った晩年に話をされていた。
経営とは、むずかしいものだ。
ある時期まで勢いで企業は拡大するが、ある時点で成長が止まることがある。
その原因は、経営者そのものの存在だろう。
経営を学んでいないからだ。
学ぶといっても、成功している経営者ほど学ぶことはむずかしい。
学ばなくとも経営できていたからだ。
とくに学ばなくてはならないことは、組織のあり方と人の活用の仕方だ。
どんなに優秀な経営者であっても、このことを学んでいなければ企業は成長拡大しない。
この学びのタイミングを逸して事業が傾いていく。
だが、このような学びをしていなくとも、自然と人の活用ができて事業を成長させていく経営者もいるようだ。
天性というものだろう。
それでも大企業まで成長させていく創業経営者は、どこかに学びがあるはずだ、と私は思っている。
創業経営は、それこそ生きるか死ぬかのなかで事業を拡大させていく。
そんななかで、経営について学ぶどころではなかったのだろうが、ドンキ創業者の安田さんではないが、いつまでも「どろぼう市場」ではいけないのだ。
時間もなかっただろうが、安田さんは独学していた。
このような学びの時間が、後々、自分の経営に効いてくる。
事業が拡大していくなかで、人をどのように活用するかを考えていかなくてはならないからだ。
創業者は、事業に関して独特の嗅覚をもっている。
学ぶべきは、組織マネジメントだ。
この学びがあるかないかで、経営に対する向き合い方が変わるだろう。
とくに人に対する向き合い方だ。
大手企業などでの仕事の経験がないと弱点になる。
もっとも大手企業出身者(役員)だったが経営できない人間がいた。
こちらも自信過剰タイプだった。
人の活かせないのだ。
この人をみていて大手企業の役員になれた理由がわかったような気がした。
優秀なのだが、人を顎でつかうタイプだ。
この方も怒鳴る。
管理職を夜遅くまで残して会議で怒鳴りまくっていた。
良い意見が生まれるはずもない。
独力型、あるいは大手企業出身型の経営者でも、問題の本質は同じだった。
大手企業のなかで学んでいるはずだったが、実際は、本質的な組織マネジメントを体得できていなかったのだ。
私は、このような経営者と出会うことが多かった。
私自身は、ソニーの経営マネジメントと比較することで学ばせてもらうことが多かったが、経営者にとっては地獄だっただろう。
このタイプの経営者は、当然なのだが、ある時点から企業がまともに機能しなくなり、経営者に不都合な悪い局面が次々に襲ってくる。
経営者は、必死にかじ取りをしていたが、最後のときはくる。
大手企業出身のベンチャー経営者でも、企業における経営マネジメントができない人がいることを知った。
名前を書けばすぐにわかる有名大企業の役員出身者だった。
組織マネジメントを学んでいるはずなのだが、大企業を経験していない創業経営者と同じことをしていた。
企業を経営をすることに正解はないのだろう。
組織マネジメントをどのように学ぶかは、人間一人一人違うと思っておいたほうがよさそうだ。
創業する経営者への警鐘だ。