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足のスポーツ障害のお話

足のスポーツ障害はジャンプや走る競技をやっている方に多く、年齢層から中年層まで幅広くみられる疾患です。
これからご紹介する二つの症例は、主にオーバーユース(使いすぎ)が原因となることが多く、運動強度が高い競技を継続的に行うことで発症する特徴があります。
その他、日常生活の中でも突発的に受傷するケースや外的要因でも発生するケースもあるので合わせて解説していきたいと思います。


シンスプリントシンドローム(過労性脛骨骨膜炎)


シンスプリントシンドロームとは ランニング、ジャンプ、ターン、ストップなどに伴う足首の曲げ伸ばし動作の反復 (オーバーユース)脛の内側に痛みが出てくるスポーツ障害になります。

・シンスプリントシンドロームの病態


主に、成長期にスポーツに取り組む学生アスリートにみられ、進学後の部活に入りたての選手が練習の運動強度に耐えられず痛めてしまう例が多いと感じます。

外見上のX脚


正常な人と偏平足の人の脚の形の違い


その他の要因では、偏平足や膝が X 脚などによる骨格的な問題によるアライメント不良の選手が痛めやすい傾向にもあります。
また、痛みを長期間我慢して練習を取り組むうちに痛みがひどくなり疲労骨折に繋がる重症例も少なくないことから注意が必要なスポーツ障害になります。



痛みが起きるメカニズム


本症例に関与する筋肉

前述で、足首の曲げ伸ばしの動作の反復動作で痛みが出ると説明しました。
本症例において、その運動に関係する筋肉は下記のものとなります。

・ヒラメ筋
・長趾屈筋
・長母趾屈筋


これらの筋肉は、脛の内側の縁(ふち)に沿って付着している筋肉で「骨膜」と呼ばれる膜にストレスがかかったり、「偏平足」・「X 脚」の影響で前脛骨筋、後脛骨筋といった筋肉の影響で間接的に炎症を起こすことで痛み出現します。


シンスプリントの分類

・シンスプリントの分類



シンスプリントはスポーツの競技特性によって痛む部位が変わり、 跳んで痛める「跳躍型」と走って痛める「疾走型」に分けられます。
・疾走型:「 脛骨上中 3/1 境界」
     「脛骨中下 3/1 境界部」(最も多い)
     「腓骨下半分の後外側」
     
・跳躍型 :「脛骨中央 3/1」
     「腓骨上半分の前外側」

走るときも飛ぶ時もどちらも地面を蹴る際に出現する痛みに関しては比較的重症度が低く回復が早い場合が多く、
着地の際に痛みが強くなる場合は、重症度が高く回復が遅い傾向にあります。


・シンスプリントの症状


局所症状では、脛の内側の縁に沿って押していくと痛みを訴えることが多く、炎症症状があるとポッコリ盛り上がり熱感や圧痛が見られます。
症状が進行すると歩くだけでも痛みが強くなり、3 週間程度経過しても痛みが改善されない場合、疲労骨折になっていることもあるので注意が必要です。


・シンスプリントの治療


当院での治療方針として、まず運動を中止し安静に過ごしていただきます。
足首の柔軟性向上の施術、ストレッチ指導、運動指導を行い改善に努めます。
3 週間以上痛みが続いている場合、あるいは来院時の症状が強い場合は、「疲労骨折」を起こしている場合もあるため信用のできる医療機関での精密検査をお願いする場合がございます。

本症例に関して、学生アスリートは痛みを我慢してまで運動を続けてしまうケースが大半になります。適切な休息・ストレッチなのでケアをすることで痛みの改善や重症化の予防につながります。
心あたりがございましたら、お早めに当院でお話を聞かせてくださいませ。



アキレス腱周囲炎、滑液包炎


急にランニングを始めた方やジャンプやダッシュなど強度の高い運動を続けている方で、アキレス腱に痛みを訴える方はいらっしゃいませんか?

アキレス腱は人体最大の腱であり、腓腹筋やヒラメ筋が折り重なって踵(かかと)の踵骨隆起と呼ばれる部分に腱が付いています。アキレス腱の役割は、腓腹筋やヒラメ筋の力を踵へ伝えることで、 歩行や跳躍などの運動・つま先立ちなどの運動が可能としています。

腓腹筋、ヒラメ筋、アキレス腱の解剖図


・アキレス腱周囲炎、滑液包炎の分類


・アキレス腱が骨につく部分には 2 つの滑液包と呼ばれるものがあり、
・アキレス腱周囲炎:表層のアキレス腱皮下滑液包炎周囲炎
・アキレス腱滑液包炎:深層部分の踵骨後部滑液包

 上記の種類分けをされています。


アキレス腱皮下滑液包、踵骨後部滑液包の解剖図


・アキレス腱周囲炎、滑液包炎の病態


アキレス腱周囲炎、滑液包炎はアキレス腱に繰り返し負荷がかかることで発症すると言われています。
足首は多くの体重がかかる部位であり、人は走ったり・ジャンプするなどの動作で体をわずかにねじる癖があります。その際、骨盤に左右のブレや捻りが残る状態によりアキレス腱周囲が過度引っ張られます。
このような動作が繰り返されるとアキレス腱周囲に過剰な負担が生じ、炎症により痛みが生じます。
その他にもビジネスマンの方で靴やヒールの形が合わず踵の部分に摩擦や圧迫刺激が加 わり続けることで起きるとも言われています。

アキレス腱障害の痛みの分布図


また、アキレス腱の後ろ側には隙間が存在し 踵の骨と皮膚の間にある膨らみは脂肪体といって、脂肪組織が網目状に密になっています。
滑液包や脂肪組織には可動性・滑走性が求められるため、関節運動時にそれぞれの滑走性を補助する役割を担っています。
短期間の固定や軽い炎症程度であってもその可動性・滑走性は低下することから非常にデリケートな部分になり、その影響でアキレス腱部分に負担がかかり、痛みが出ると考えられます。
また、踵部脂肪体は体重負荷時に衝撃を緩衝し、骨や神経を保護する役割もあります。

アキレス腱の裏にある空間にアキレス腱脂肪体と呼ばれる脂肪が空間を埋めている。
(ケーラーズトライアングル、ケーラーズ・ファット・パッド)


・アキレス腱周囲炎、滑液包炎の治療


当院の治療内容としては炎症や運動時の動きの評価を行います。
本症例において足首を上にあげる動きが悪くなっていることが多いことから
ふくらはぎ(下腿三頭筋)のアプローチをはじめ、脛の前側の筋肉(前脛骨筋)のアプローチ・アキレス腱脂肪体に対しての直接的なアプローチを行います。
足首の運動機能を高めることで、痛みの軽減・可動域の改善を目指します。
また、ヒール等の靴の影響で痛みが出る場合であれば靴の交換、もしくはテーピングによる 患部の保護を行うことで対応いたします。



足関節捻挫


学生でスポーツをしている方から大人になってもアクティブにスポーツに取り組む方で 足首を捻ってしまい痛めてしまう事があります。
俗に言う、「足をくじいた」軽度のものや足首を捻って転んだ後から「足を着いて立つことができなくなる 」ほどの重症例など様々なケースがあります。

足首の捻挫は全身の関節で起きる怪我の中でも多く、身近なもの言えます。
各スポーツでも起きるのは勿論、日常生活でもふとした時に起こることから広い年齢層で起きる怪我になります。最も多い年齢層では小学生高学年~高校生などの学生スポーツの層が割合を大きく占めます。
また、日常生活で起きるシチュエーションでは階段下降時などで段差を踏み外した際に強く捻ってしまうなどが挙げられます。

捻挫の種類で「内返し」と「外返し」の捻挫がありますが、多くは「内返し」に捻って痛めるケースが多いため、こちらでは「内返し捻挫」の内容を中心に説明していきます。

内返し捻挫と外返し捻挫の状態


足首は関節の構造上「内返し」の動きが一番動かしやすいため捻りやすいです。※内返しとは、足関節の複合運動のこと(底屈・内転・回外)

内返し捻挫で損傷する靭帯について

内返し捻挫では外側の靭帯部分の損傷が多くみられます。

・前距腓靭帯(最も痛めやすい)
・踵腓靭帯
・後距腓靭帯


その他にも、受傷肢位により足の甲に近い所で「二分靭帯」と呼ばれる部位も損傷する場合があります。


内返し捻挫での靭帯の損傷レベル

・足関節捻挫の損傷レベル


捻挫の損傷度合いには 3 段階のステージがあります。

・Ⅰ度損傷:靭帯が伸びてしまう or 微細損傷、腫れはひどくなく、
      外くるぶしを押して痛みがある程度の状態
・Ⅱ度損傷:靭帯部分の部分断裂が起き、腫れや痛みが強く、
      関節の不安定感が見られ、 歩くのも難しい場合がある状態
・Ⅲ度損傷:靭帯部分が完全に断裂し、内出血や腫れがひどく出現。
      歩くのは困難で関節の不安定感もある状態

捻挫をした際の靭帯損傷のイメージ



・足関節捻挫の症状


主症状は患部(外くるぶし)を中心に腫れや熱感、歩行時痛あり、重症度が高い場合は歩行時痛のほか、安静時痛や荷重時痛などが見られ、受傷後数時間後より内出血が出現することが多いです。

また、足関節捻挫には合併損傷で下記の症例が見られることもあります。
・外果下端部骨折(外くるぶしの骨がかけた状態)
・第五中足骨基底部骨折(下駄骨折とも呼ばれる)
・脛腓関節離開(脛骨と腓骨をつなぐ靭帯の損傷・断裂により起こる)


そのため、「ただ足を捻っただけ」だからと言って合併症の存在があるため注意して観察しなければいけない症例でもあります。

捻挫をしている側の外くるぶしは晴れ上っている状態



・足関節捻挫の治療


当院の治療内容はスポーツをされている選手であれば運動を中止し安静指導を行います。
靭帯部分に対して負荷がかからないようにテーピングや固定具作成しを包帯などで固定し日常生活を過ごしていただく形になります。
その後、患部の腫れや痛み、動きなどの状態を考慮し再発防止の為、
外返し動作の運動及び、腓骨筋群(すねの外側の筋肉)の筋力強化を行うほか、 神経機能に対してのアプローチとしてバランス強化訓練を行い症状の早期回復を目指します。 関節の不安定性が高い重症症状では手術での治療をお勧めします


当院の「足のスポーツ障害」の独自治療メゾットの一部を公開♪

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