【開催レポ】刀鍛冶職人体験〜職人直伝!自分だけの刀剣作り〜
今回の記事は、2023年2月22日〜2月24日にかけて 岐阜県加茂郡で開催された宿泊型プログラム「刀鍛冶職人体験〜職人直伝!自分だけの刀剣作り〜」の様子をレポートしたものです。
加茂郡は岐阜市の東南側に位置しています。刃物の産地として知られ700年以上の歴史を誇り、「世界三大刃物産地」ともされています。刀を作るのに必須だとされている良質な「土」と「水」があったため、多くの刀鍛冶が岐阜県に移り住んだことが刃物作りの始まりだと言われています。今回はそんな岐阜県で自分たちで刀をいちから作る刀鍛冶職人体験を行いました。
刀鍛冶体験は以前にも行ったことがありますが、新型コロナウィルスの影響もあり3年ぶりの開催。3日間を通しての学びや生徒たちの様子をお伝えしたいと思います。
【1日目】
初日の集合場所は、後に刀鍛冶体験をさせていただく「刀鍛冶正也さん」(屋号)の近くにある美濃太田駅。長崎や仙台・東京・神奈川など日本全国から15名全員が無事に到着しました。
バスに乗って、まずは関鍛冶伝承館へ移動します。
入館前に全員が抗原検査での陰性を確認し、いよいよ中へ!
最初は見学スペースをお借りして、3日間お世話になる刀鍛冶正也の吉田さんとそのお弟子さんたちにご挨拶をし、開講式を行います。
簡単な自己紹介を行った後に、「鍛錬(たんれん)」と呼ばれる刀を打つ際の作業風景を見せていただきました。
鍛錬は、火の前に座り、鋼(刀になる鋼のかたまり)を操作する役目の「横座(よこざ)」と呼ばれる人と、横座の向かい側立ち、大きなハンマーのようなもの(大槌)を使って刀を振るう役目の「先手(さきて)」と呼ばれる人との2つの役割で行います。
先手の役割は「相槌」の語源にもなっているんだとか...!
刀を打つ瞬間は大きな火花が飛び散り、大迫力!生徒たちからも「おー!」という声が。写真を収めるのに必死になっている生徒もいました。
また、吉田さんのご厚意で生徒たちも1度ずつ刀打ちに挑戦させていただきました。
大槌は、約5kgあるそうです。振りかざすだけで精一杯な生徒たち。「重かった....」と多くの生徒が話していたことからも、とても力のいる作業だということがわかります。
作業風景の見学をさせていただいたあとは、関鍛冶伝承館の館内を見学しました。
館内では関市と刀に関する歴史や、刀ができるまでの工程などを学ぶことができます。刀の展示コーナーでは吉田さんが作った刀の展示も行われており、刀を1本1本、じっくりと観察している生徒が多くいました。
関鍛冶伝承館見学のあとは再度バスに乗って移動をし、吉田さんと対話の時間。
次の日に行う体験内容について説明をしていただくのと同時に、刀の歴史や魅力についてより深くお話を伺うことができました。
吉田さんが行っている日本刀の製造方法は、砂鉄を集めて鉄の塊(鋼)を作り、それを伸ばし、捏ねてを繰り返して刀を作っていく昔からの方法です。
刀を作る際は、おおよそ1300度に熱した鉄を叩いて伸ばしていきます。温める際に鉄を直接見ることができないため、火の形や音などから最適な一瞬を判断する必要があるのだそう。鉄の温度によって刀の質や刃文が変わってくるため、とても高い技術と長い修行が必要になるのだそうです。
「日本刀は”目指す理想像にどれだけ近づけるか”の世界であり、鍛錬に終わりはない。」と話す吉田さんの姿が印象的でした。
生徒からもたくさんの質問が。
お話をお聞きするなかで、メモを取ったり、前のめりになって話を聞いている生徒もおり、とても集中して吉田さんの話を聞いていました。
刀の知識を深め、魅力に触れ、とても満足した様子の生徒たち。明日の刀鍛冶体験がより楽しみになりました。
【2日目】
この日は朝から夕方まで、丸一日かけて刀鍛冶体験を行います。ワクワクした様子の生徒たち。吉田さんとお弟子さんのご指導の元、体験が始まりました。
今回生徒たちは15cmほどの小刀作りに挑戦します。
まずは、玉鋼を元にして作られた「刀身の土台(鉄)」を金槌で叩いて伸ばしていきます。
1日目に使った大槌と比べれば軽いものの、鉄を叩くためにはかなりの力が必要となります。次の日には筋肉痛になった生徒もいたようです。
伸ばしができたら、やすりをかけて凹凸を無くしていきます。
やすりがけが終わった刀身はピカピカになりとても綺麗でした。
ここまでが午前中の作業。
お昼休憩では、職人さんたちも含めみんなでお弁当を食べました。
より近い距離で刀や刀鍛冶師についてお話を聞くことができ、さらに刀の知識を深めることができるとても貴重な機会となりました。
そして、午後からも小刀完成を目指して作業を続けます。
刀の形が完成したら、次は作った刀に刃文(はもん:刀を焼くときにつける模様のこと)を入れていきます。それぞれ好きな刃文を選び、時には吉田さんのサポートをいただきながら作成していました。
乾いたらいよいよ「焼き入れ」という作業に入っていきます。
刃文がうまくいくかどうかはこの「焼き入れ」で決まるとのこと。いつもこの作業を行うときはとても緊張するのだそうです。今回も、1人ずつ慎重に行います。
焼き入れを終え、やすりをかけて仕上げをすれば完成も間近です...!
最後は、自分の作った小刀の柄の部分に好きな文字(銘)を打っていきます。
最初は練習用に小さな板をいただき、練習の後に刀で本番を行いました。
使うのは太めの釘のようなものと金槌です。釘を片鎚で打って点を作り、それを繋げることで線にしていきます。
この作業は生徒たちにとって一番ワクワクする時間。作った刀が自分だけのものになる瞬間です。生徒たちは難しい!と言いながらも好きな文字を入れるため、没頭して取り組んでいました。
この作業が終わる頃には、夕日が眩しく輝いていました。ついに長い時間をかけて作った小刀の完成です!みんなで完成を喜び、お互いを労わりあいながら2日目を終えました。
【3日目】
ついに最後の日。
3日間お世話になった刀鍛冶正也さんへ移動し、修了式を行いました。
吉田さんから講評をいただいたのちに、1人1人、完成した刀と修了証を受け取ります。
そのあとは職人さんたちと一緒に振り返りの時間。小さなグループに分かれ、3日間の学びや気づきを発表し合いました。生徒からは「楽しかった!」「また来たい!」との声と同時に、「職人の大変さが分かった」「刀鍛冶という伝統的な仕事に触れられてよかった」という声も上がりました。楽しい体験と同時にそれぞれが自分なりの学びや気づきを得ることが出来たようです!
最後に3日間お世話になった吉田さん・お弟子さん方にお礼をして修了式を終えました。
プログラムの締めくくりは、宿泊施設の近くにある里山公園へ移動しての自由時間です!
生徒たちは公園を見て回ったり、お土産を買ったりと思い思いの時間を過ごしました。
そしてついに解散の時間に....
全員で解散場所である美濃太田駅へ。生徒たちは仲間と最後のひと時を過ごし、別れを告げました。
生徒達からの声
3日間を経験した生徒達からの感想を一部紹介します。
学園と一緒にプログラムをゲストあるいはパートナーとしてつくりたい!という方や団体様もしいらっしゃれば、ぜひお気軽にお問い合わせ頂けますと幸いです。