砂の中の約束
登場人物のプロフィール
美咲(みさき)
主人公。事故で入院していた裕太の幼なじみで、彼と砂時計を使った約束を交わしている。
内面には繊細な感情を秘めており、裕太の回復を信じながらも、郁也への新たな感情に揺れ動く。
裕太(ゆうた)
美咲の幼なじみで、事故により入院していたが、物語の途中で目覚める。
明るく元気な性格であり、美咲との約束を大切に思っている。
郁也(いくや)
美咲のクラスメイトで、彼女の心の支えとなっている。
優しい性格であり、美咲に対して深い理解と支援を提供する。
あかり
美咲の親友の一人。
明るく活発な性格で、美咲のことをとても大切に思っている。
ストーリー概要:
夏休み前のある日、美咲と椎名は海で遊んでいる最中に突然の事故に遭遇する。椎名は重傷を負い、意識不明の重体となる。この事故がきっかけで、美咲と椎名が子供の頃に交わした「砂の中の約束」を思い出す。
美咲は毎日、病院で椎名の横で時間を過ごす。その間、彼らの周りで時間が止まったかのように静かに流れる。美咲は椎名との約束を果たすために、彼の意識が戻ることを願い続ける。
一方、学校では美咲の存在が際立ち、彼女を心配する同級生たちが集まる。その中には、特に美咲に対して特別な感情を抱く佐藤もいた。
時が経つにつれ、美咲は椎名のために何ができるのかを模索し始める。彼女は幼い頃の「砂の中の約束」を守るため、そして新たな未来を築くために、自分自身と向き合うことを余儀なくされる。
『砂の中の約束』は、友情と愛情、そして時が刻むものの尊さをテーマにした青春物語です。
目次
プロローグ
夏の日の事故
病院での日々
学校での反応
内面の葛藤
友情と愛情の模索
椎名の目覚め
結末と約束の履行
あとがき
プロローグ
海辺の風が優しく吹き、砂浜の砂がさらさらと指の間をすり抜ける。幼い美咲と裕太は、砂浜に小さな砂山を作って遊んでいた。夏の日差しが降り注ぎ、二人の笑い声が波の音とともに響いていた。
「ねえ、裕太。これ、見て!」美咲は、手のひらで形を整えた小さな砂の山を見せる。
「すごいね、美咲!」裕太も自分の作った砂山を見せ、二人でそれを比べて笑い合う。
その時、美咲はポケットから小さな砂時計を取り出した。透明なガラスの中で、細かい砂粒がゆっくりと落ちていく。
「これ、パパからもらったの。約束を守るために使うんだって。」美咲は砂時計を裕太に見せながら言った。
「約束?」裕太が首をかしげると、美咲は真剣な表情で頷いた。
「そう。大切な約束を守るために、この砂時計を使って時間を測るの。お互いに約束をしたら、この砂時計を使って忘れないようにするんだよ。」
裕太はしばらく考えた後、にっこりと笑って言った。「じゃあ、美咲、僕たちも約束しよう。ずっと一緒にいようって。」
「うん、約束!」美咲も笑顔で答え、二人は手をつないで小さな砂時計を見つめた。
それから何年も経ち、二人は高校生になった。幼い頃の約束は時の流れの中で忘れ去られることもなく、二人の心の中で大切に守られていた。しかし、運命は二人に試練を与えようとしていた。
夏休み前のある日、美咲と裕太は再び海辺を訪れた。幼い頃と同じように、砂浜で遊びながら笑い合っていたが、その瞬間、突然の事故が二人を襲った。
美咲が目を覚ますと、周りは病院の白い壁に囲まれていた。混乱と不安が彼女の心を覆い尽くす中、裕太の姿が見当たらないことに気づいた。
「裕太はどこ?」美咲は看護師に問いかけるが、返ってきたのは重篤な状態であるという冷たい現実だった。
病室の窓から見える景色は、夏の日差しがまぶしく輝いている。美咲はベッドに横たわる裕太の手を握りしめ、幼い頃に交わした「砂の中の約束」を思い出す。
「裕太、お願い。目を覚まして…。私たちの約束、まだ終わってないよ。」涙をこらえながら、美咲は心の中で祈る。
砂時計の中で砂が落ちる音が、静かに時を刻んでいく。美咲は、あの日の約束を果たすために、そして裕太が目を覚ますその瞬間を信じて、時間の流れに身を委ねるのだった。
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