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現実と幻想の間で 私と台湾。

理由もない鬱々とした気持ちを抱えつつ、私は今日も仕事を終え
家路に着く。

連休明けの外来は、意外に患者が少なく
お昼で全ての診療が終わっていた。

お昼はスーパーで買った冷凍のパスタに、ホットコーヒ。

TVはあまり好きではないので、
Netflixで昨日チェックしていた映画をみながら、お昼にしようと決めていた。

邦画より海外ものが好きだ。


今日の映画は、
「素晴らしき眺め」という中国の映画。


*こちらは中国語版↓


心臓病の6歳の幼い妹は、手術をしないと死んでしまうかもしれない。
主人公の若い兄は携帯の修理を細々と生業にしたが、
親もいなくて、家賃も払えず、窮地に立たされていた。

携帯の修理は天才的な才能があった主人公は、ある日
妹の手術代を稼げるかもしれないチャンスを掴んだ。
期日までに、不良品で廃棄予定の膨大な数の携帯電話を修理し、
大会社に収めることができたら、
妹の手術代が稼げるかもしれない。唯一の希望だった。

でも、修理工場も、人手もない。それは無謀な挑戦だ。

主人公の若い兄は、自ら小さい修理工場を作る。
訳ありで癖強の、従業員たちを雇い
トラブルを起こしながらも
段々と、仲間になっていくところもグッとくる。

兄は身を粉にして働くが、次々に襲ってくる難題、逆境・・・・・

それでも兄は諦めなかった。

どんなに強い風が吹いても、幼い妹のため
絶対に負けるわけにはいかない。


******


そんなお話。


平和な日常に暮らせば、この世の中にそんな映画みたいな世界が
本当にあるんだって、想像すらできないかもしれない。


でも、この映画の世界は実在していた。


舞台は中国の深圳だったが、


ビルが立ち並ぶ大都会の裏には、雑多な路地、
格子のついた出窓に、薄暗くて、厚い玄関の門
幼い妹が被っている鮮やかなピンクの小さなヘルメットや、

バイクの前に妹を乗せての送り迎え、
ハッとするくらい青が目立つ幼稚園の制服。


あの時の台湾と同じだ・・・・・・・・・・




いつも仕事の話をしている男たち、
少しでも稼げる話があれば、たとえその場限りでも挑戦する
ダメならまた、一からやればいい
家族を養うためなら、失敗して凹んでいる時間なんてない。


仲間意識が強くて、
一度仲良くなればもう家族同然で、
ねぶった箸でもお構いなしに、皿に菜を「食べろ、食べろ」とのせてくる。

子供が多くて、一体誰の子かわからないけど
子供の世話は、近くにいる大人がすればいい。

バイクの2人乗りは当たり前で
時には家族全員で、犬まで乗っけてたりする。

初めて2人乗りをして台北の夜を走った時は
ドキドキが止まらなかった。

そのころは筆談しか出来なかったけど、
無言でも、全然心地よかった

大阪の都会育ちで、コンビニ行くにも化粧をかかさなかった私。
流行りの服や化粧品が好きで、髪はいつも綺麗に巻いていた。


そんな私の常識は、
ここでは非常識だった。


言葉はあまり通じない、
日本から来た女孩子。

逆に珍しいと、最初のうちはたくさんの人が寄ってきて
「一緒に写真を撮ろう」というのだ・・・・・(笑)
ん〜悪い気はしない・・・


私は、次第にどっぷりとその映画のような世界にはまっていった。


休暇が取れそうなら、何度でも台湾へ向かった。


約束なんかは特にしない、
でも行けば、誰かしらが迎えてくれた。


行けば、私は
現実を忘れていた。

日常の悩みも憂鬱も、全て忘れられる。

流行りの服なんか着なくても、綺麗に化粧をしなくても
髪がボサボサでも、誰も気になんてしないのだ。




みんな元気かな・・・・・




映画を見終わった私は、
また明日のことなどをぼんやり考えていた。

GWの間の診療だけど、明日はめっちゃ混むんだろうな。
夕食、何作ろかな?


ああ・・・


いっそ、
幻想のようなあの世界にずっといてもいいとさえ思ったこともあった。

でも、
私はそれは一時のことで、


慣れてしまえば、あちらの世界も私の「現実」になると、
そんな気がしていたし、


やっぱり、
私はこちら側の世界で、

今日も明日も、
ちょっぴり鬱々と生きるんだろうな。





















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