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ソフトウェアと戦略と文化と私的報告

ソフトウェアのコストは人件費がその多くを占めます。
人の要素がとても強いのがソフトウェア開発に見られる特徴のひとつです。

したがって、ソフトウェアに何がしかの変革をもたらせるためにアプローチすべき対象として人の要素は外せません。
その考えから常々ボトムアップに人にアプローチする形で動いていたわけですが、どうにもこのやり方では、はるかかなたの目的地に到達するという芸当が難しいということが分かったのが2年ほど前でした。

もちろんこの目的地というのは、経営層からのリクエストに応える形で、開発者の視点から5年10年というスパンの将来を予測し導き出した目標地点です。

なぜ難しいか。
大きくふたつの要因があります。

ひとつ目の要因として挙げられるのは経営戦略への関与が難しいという点です。
夢か現か実際に行ってみなければ分からないような目的地に向かうためには、組織の進化が必要です。
そのような変革は必然的に大きな投資が伴い、一朝一夕では実現できません。
長期的な投資を伴う目的を実現するには、戦略への関与が不可欠です。

開発者でもある程度の職位以上であれば戦略に触れられはしますが、戦場にいる関係上、戦術面での関わり方が主体となります。
戦略に大きく関与するには経営層と対等な立場を構築する必要があります。
これが非常に難しい。
視点も視野も視座も違う立場では、対等に議論ができません。
ボトムアップなアプローチには限界があります。

ふたつ目の要因は、戦略は文化に歯が立たないという点です。
いかに論理で説いても、ホメオスタシス(恒常性)の機能は本能であるがゆえに、それを乗り越えるのは外的要因では難しいです。

人は変えられません。
人は自身が望む変化しかできません。
戦略と戦術に文化が伴わなければ圧倒的戦果は得られません。

いち開発者の立場では、自分が手掛けるチームの文化は作れますが、組織全体の文化は御しきれません。
たとえば直近ではイネイブリングチームの組成をして、文化を浸透させるという戦術を実行しました。
戦果は一定以上出ていたものの、個人的には不満足な結果でした。
技術革新をもたらし、文化を変化させるきっかけを与えることはできますが、進化をするか否かは個々人の観心次第になります。
これを後押しするにはコンフォートゾーンを抜け出せる環境作りまで手を回す必要があります。
それを実現できるのはマネジメント層であり、彼らに働きかけてもらうには経営層からのアプローチが不可欠です。

したがって、かすむほど遠くの目標にたどり着くには、戦略に関与し、文化にテコ入れする力を手にするということになります。
それができるのは経営層ないしはそれに匹敵するロールです。
そのような立場は、生半可な覚悟で目指すようなものではないのはわかります。
運命を共にするつもりで本気でコミットしないと失礼ですし、そもそも歯牙にもかからないでしょう。

ここ二年ほどは開発業務以外に多種多様な活動を行っていたため、スケジュールおよび体力的にはオーバーワークでしたが、精神的にはコンフォートゾーンにいました。
次に進むべき方向が見えていながら心地良いと感じる領域に留まっていたのは、個人としてのバリューを活かしきれるかつ、経営から携わりたいと感じるほど強い情熱に駆られるステージが私の観測範囲に見当たらなかったからです。

しかしながら、ごく最近、そういった場所を見つけました。
どうやらコンフォートゾーンを脱却し、次のステージに進むときがきたようです。

というわけで三月末日をもってGMOインターネット株式会社を退職します。
開発者、特に最近はスタッフエンジニアとしてのワークロード以外にグループ内技術顧問、DevRel、CSR活動、学生支援、採用広報とさまざまな活動を許可してくれたことに感謝します。
これらの活動で成果を出せたのは、GMOインターネットグループのエンパワーメントがあったから、ということは間違いありません。
七年半という長いような短いような期間でしたがお世話になりました。

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