追想〈#15.後篇〉
#15
何度も学校に行こうとした。朝、制服に袖を通してボタンを閉め、通学路に足を進める。しかし、途中でザワザワする。心がきゅっと縮んで、手足が震えるような感覚に陥る。堪えきれずに自宅へと引き返す。毎日がその繰り返しだった。
「定期試験だけでも受けたほうが良い」と先生から説得を受けていたこともあって、なんとか保健室で試験を受けるという日もあった。勿論、授業を受けていないので成績は壊滅的。僅かにあったプライドもズタズタに引き裂かれた。
不登校となり進路選択が難しくなった僕に、叔父が助け舟を出した。叔父は中学教師をしていて、不登校生徒の進路について詳しかったのだ。僕は或る高校を見学して、進学することに決めた。その高校は通学日数を決めることができる。
不登校だった自分にとって、いきなり週5日の通学は負荷がかかりすぎると考えられた。僕自身も不安だったし、母も同じように不安に思っていたようだった。だから登校日数を選ぶことができることは、とても大きな安心材料になっていた。
──この高校で、全てを立て直す。ちゃんと学校に通って、ちゃんと勉強をして、ちゃんと卒業をする。そして4年制の大学に進学して看護師になる。僕みたいな人間に手を差し伸べられる人になるんだ。夢というよりは、生きる目標だった。
*
中学校の卒業式、胃がキリキリ痛むほどの緊張を味わったものの、なんとか出席することができた。式典後、友人が飛鳥ちゃんからの伝言を持ってきた。「ちゃんと学校、行けよ」。言われなくてもそのつもりだ。大学だって行ってやる。