名前を聞き忘れた看護師さん
名前すら聞き忘れてしまった看護師さん
当時、私の心はコップ一杯に注がれた水のようだった。
インターンをしていたベンチャーにそのまま新卒入社。
ありがたいことに、新卒ながらも新規事業の部署に入れていただき
全く身の丈に合っていないが、様々な案件を任せていただいた。
本当に、ほかの新卒同期に比べたら一番クライアントから怒られていただろうし
一番ミスも沢山していると思う。
経験を貯めるためにベンチャーに入ったので、もちろん大変ではあるが、それはそれは非常に良かったと思っている。(それについては今度纏めてみよう)
ちなみに、その新規事業ではギフトという有形商材を扱っていた。
母の日もですが、1年を通してやはり年末年始は法人・個人どちらも販売が恐ろしく伸びる時期で昨年対比で3.4倍?という噂も聞いた。
部署自体には3人しかおらず、先輩が在庫管理・配送周りを部長が全体を見つつtoC、私が法人営業toBの担当+インターン生と一緒にわちゃわちゃやっていた。
そんな中、1年目で今までは週3のバイトでも多いなと思っていた実家でぬくぬくしていた奴が、いきなり一人暮らしを始め週5でベンチャーで働き、12月のピーク時期を迎えてしまった。
通常の1.5倍増しの案件量に事業史上最も大きな案件の納品時期ともかぶってしまい、配送管理をしていた先輩が諸事情でリモートワークをはじめ通常はお任せしていた業務が最繁忙期に降りかかってきて、新人の私はお恥ずかしながらてんてこ舞いに・・・
部長の先輩は他社とのやり取りや自社内の経営会議系で多忙を極めており、当時社内だけでは回らなくなっていた仕事を外注に移行中でそれまたカオスな状態だった。
そんな中、最繁忙期のクリスマスの週が始まろうとしていた日曜日の夜。
悲劇が起こってしまう。
そう、私は肌や体調にストレスが出やすいのだが
最終的には極度に胃が弱い。過去にも胃潰瘍や急性胃腸炎らしきもので夜中に3.4回救急搬送されて点滴様にお世話になっている。
この日は、夜中の2時、痛すぎて寝れずに困っていた私は調べに調べ歩いてみたりおなかを伸ばしてみたりしたが収まらず深夜に先輩にスラック。大雨の中5分くらい歩かねばならぬコンビニへ胃痛に効く薬を買いに猛ダッシュ。#一人暮らしってつらいのね
学生時代はのたうち回るほど痛く、母に車を出してもらい夜間救急に行っていたが、そうもいかずどこに病院があるかもわからず困り果てていたところ4時ごろに意識を失うかのように寝ていた。
月曜日は火曜日の商談へ向けて提案資料があったのでリモートで半ドン。午後にようやく病院へ行けたのだがその頃には完全に収まっており採血だけ行い年始に胃カメラを行うことに。
その時の私は通常業務に加え、新商品のコンセプト・パッケージデザイン(これが楽しくてやめられない)や誰もが通る道の忘年会幹事に追われており精神的に余裕のない状態、まさに冒頭のコップの水が表面張力で何とかぎりぎり保たれている状態だった。多分その一言が、誰から言われた何であろうと時が来ていただけで溢れてしまっていた。仕事がうまく人に振れず(皆様忙しそうすぎて誰に振っていいのかわからず)、抱え過ぎて納品がままならない状態で資料提出なんかまったく回らない典型的なパツリ状態だった。
そんな時に、恐らくストレスから来た胃痛で病院に行き名前もしっかり見ることができなかった看護師さんの言葉に涙が止まらなかった。
「仕事は?何やってるの?」
「ベンチャー、そりゃ大変ね、仕事大変なんじゃない?ストレスたまってるんじゃない?」
「身体が休めなきゃだめよ~。身体が資本なんだから。健康あっての仕事だからね。悲しそうな眼してたよ。無理しちゃだめだからね。」
恐ろしく、心に、ストレートに響いた。鐘がなるかのように、その鐘がまるで私の涙腺を支配しているかのように鳴るごとに涙があふれ出て止まらなかった。
母の言葉とそっくりだ。まさしく、私が欲していた言葉はこれか。
本当に、その通りだと思う。
入社当時、私は特に企業したいとか、全くなくて何がしたいのか希望は何かと聞かれたときには
「ただただ、健康的に生きたい」「おいしい珈琲を飲んで家族との時間も大切にできるようになりたい」と書いていた。
「本当に、そのままだね(笑)」と人事の方は悪気無く半笑いで答えてくれた。
だが、当時も今も変わらず、
朝、珈琲の焙煎される香りを目を閉じて肺一杯に吸い込むように深呼吸をした時
パンが焼ける香りが鼻を抜けるとき
日曜日に自分の子供ができたらピクニックに行くとき
日常の小さな幸せが私にとってはとても幸せだと思っているからだ。
理想の働き方や時間の使い方をコントロールできる力を身に着ける為
今日もせっせと積み重ねていきたいと思う。
名前だけでも聞いておけばよかった。看護師さん、ありがとうございます。
貴方の言葉に、私の涙は逆らうことができませんでした。コップからあふれる水のようにとめどなく流れ、私の心を軽くしてくださいました。
ありがとうございます。
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