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【障害者水泳 指導者養成研修】入水編①


■プール専用車いすでの入水と退水

「前からの入水」と「後ろからの入水」の場合があります。
これは、プールの中で実際にやってみましょう。
後ろからの入水のほうがスムーズです。
基本的には2名の指導者が必要です。前側と後ろ側の二人です。
スロープの途中からは体が浮いてきますので、軽くひざを押さえましょう。
スロープの途中で一度止まって車いす者に水をかけ、プールの水温を体に教えてあげてください。
ゆっくり、ゆっくり、降りていきます。
「後ろからの入水」の場合は、ある程度の深さまで入水したら車いすを後ろに倒します。そして、頭側の介助者が障害者の両脇に腕を通して、そのまま後ろに下がります。
この時、背中や脚が車いすにひっかからないように注意してください。
これだと、ボランティアにも障害者本人にも負担がなく楽に入水できるのです。

■障害者の入水の方法のいろいろ

入水スロープがないプールや、あっても使えない場合は、どうやって入水しましょうか?
これには、いろいろな方法があります。
車いすからプールサイドに敷いてある安全マットの上に障害者を降ろした後の話です。

・安全マットの上に仰向けになって回転してドボン
・安全マットの上に四つん這いになって回転してドボン
・プールサイドに座って、イギリスのハロウィック式入水方法で挙げた片手  を見ながら背中からドボン
・安全マットの上に寝て、マットごと引き出して入水

そのプール、その障害者に合わせた入水方法を選択してください。

■お勧めしない入水方法

プールサイドに腰を掛けてひざから下をプールに浸けて、腕のちからで、そのまま体を前に持っていって入水するという方法があります。
これだと入水するときに、尾てい骨や背骨をズズズッーとこすりながら落ちていくという失敗をすることがあります。失敗すると、とてつもなく痛いし、大けがをする可能性もあります。
これをやって、一度でもひどい目にあった障害者は二度とやりません。
最初から、こういう入水方法は選択しない方がいいのです。
もう一つ、学校の水泳授業などでよくする「基本入水」という入水方法があります。
同じく、プールサイドに腰を掛けて、ひざから下を水に浸けて腕のちからで体を浮かせて、体をプールに背を向けるように反転させて入水するというのがあります。
この反転するときに、失敗してあごを強打するのです。
これも、一度、失敗した障害者は二度とやりません。
こういうのも、最初からしない方がいいのです。

■準備体操・整理体操

これも保護者からの要望の一つです。
学校の体育授業と同じように、プールの入水前には準備体操を、退水後には整理体操をしてください。
できない子もいます。簡単でいいのです。

■障害児は、怒られたことがあまりありません。

これも、保護者からの要望の一つです。
『障害児は、ほとんどの場合、怒られたり、叱られたりすることがありません。障害があるんだから、まぁまぁ、ってな具合で。いつも「すごいねぇ。」「やったね。」「よくできたねぇ。」「賢いねぇ。」
こんなんばっかりです。
でも、健常児と同じように、「悪いことは悪い。」と悪いことをしたら、しっかり叱って欲しいのです。彼らは、真面目にしっかり叱られることで、「ああ、ぼく悪いことしたんや。」って気がつくことも多いのです。ですから、悪いことをしたら心を鬼にしてしっかり叱ってやってください。』
これは、指導者にとって、なかなか厳しい要求ですよね。
誰だって叱ることはしたくないですから。
でも、できる限りプールのマナー違反の時などはしっかり叱ってあげましょう。

■入水時間と退水時間

プール・ボランティアでは、基本は1時間半入水しています。
でも、30分で退水するのがいい子もいますし、1時間半ビッチリ泳ぐ子もいます。
つまり、その障害者の体力やその日のご機嫌に合わせるということです。
その判断は、マンツーマンで担当している指導者が決めています。

■リストバンド

細かいことですが。
プールのロッカーのリストバンドを手首につけているのは障害者の体を傷つけるので危険です。足首につけるか、他のところに保管するかにしましょう。
超接近戦で指導する場合、ゴーグルも顔などにあたると痛いです。
プール・ボランティアでは、そういう場合はゴーグルを後ろ前につけています。

■敵を知り、己を知れば・・・・

プール・ボランティアでは入会したばっかりの障害者にいきなり積極的なことはしません。
保護者にも、「最初の5回くらいは、まずこのプールに来る習慣づけをすることと、このプールには君に悪さをする敵はいないんだよ。」っていうことを理解してもらうために、ほとんど何もしないで彼が気持ちよく遊べるように配慮しています、と説明しています。
この最初の5回の間に彼の観察をするのです。
そして、これからどうしていくのがいいのかを検討するのです。
つまり、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」ということです。
相手のことがわからないのに、いきなり何かをしようとしてはいけませんよ。

■ウンチと鼻血

プールと「ウンチ」や「鼻血」は、つきものです。
プール・ボランティアでは、活動時にはプールサイドに「ウンチ獲り網」「ゴム手袋」「消毒液」「ティッシュー」などを入れたバケツを置いています。
何かあったときに素早く対応できるようにするためです。
特に、ウンチの場合は秒単位の勝負です。
全員で、必死に原状回復に努めます。
そして、その後、保護者と一緒に館長に謝りにいきます。(笑)