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【障害者水泳 指導者養成研修】それぞれの障害者について④


■指導者が絶対にしてはいけないこと。

熱心で、真面目な指導者にありがちなことかもしれません。
言うことを聞かない、ニヤニヤヘラヘラして集中しない、見苦しい言い訳ばかりする、真面目に練習に取り組まない、暴力を振るわれた、暴言を吐かれた、あまりにも簡単なことができない、そんな態度にイラッとして、強引で無理な練習をさせたり、水に沈めたりなどの行為は、指導者は絶対にしてはいけません。
それは指導ではありません。
要するに頭に血が上って、ムキになってしまっているのです。
そんなときが、一番、事故の可能性があるのです。
気をつけることです。

■ポツンと一人の全体監視者

集団で障害者水泳指導をする場合、特に役割分担のない人を一人、全体の監視者として配置しておくことは重要なことです。いわゆるフリー役のスタッフです。
水の中に入ってしまうと全体が見えません。
「水の事故は、少し離れたところで静かに発生します。」
ですから、全体を見る監視者が必要なのです。
プール・ボランティアでは、その役割をほとんどの場合、職員がしています。
何もないときは何もすることがないのですが、とても必要な存在なのです。

■プール・リハビリとは

26年前の設立直後に、SCD(小脳変性症)の車いすのおじさんを担当したことがありました。
彼は、当時60歳。医師であり、もともとがマラソンが得意のスポーツマンでした。
SCDは、進行性の病気です。
最初は、病気の進行を少しでも遅らせようと、プールで機能訓練みたいなことばかりしていました。いち、にい、さん、しーと号令をかけながら手足の運動をするのです。
あるとき、
「岡崎君、ぜんぜん楽しくない。ぼくは、こんなことをしに来たわけじゃない。ぼくは泳ぎたいんや。
泳げるようになりたいんや。
リハビリの効果は、水泳練習の延長線上にあるんとちゃうか!」
この言葉は、その後、ずっとぼくの心に残りました。
ぼく自身、機能訓練的なことをやっていても全然楽しくなかったし、そのやり方に疑問を持っていたからです。
例えば、病院の医師がリハビリ治療ということで水中でリハビリをする場合ならいいかもしれませんが。
それでも、小さいプールで、一人だけで機能訓練。
やっぱり楽しくないよね。
プール・ボランティアは、医師の集団ではなく、スポーツの集団であり、楽しく泳ぐということが目的です。
その後、この「楽しく泳ぐ」ということが、リハビリに大きな効果があるということが経験としてわかってきました。
やっぱり、どんなスポーツも楽しくないと続きませんし、楽しくないと効果がないのだと実感しました。
もう一度、言います。
「リハビリの効果は、楽しい水泳練習の延長線上にあるのです。」

■水中ストレッチ、水中マッサージ

身体障害者に、水中でストレッチやマッサージをすることがあります。
ここでも、理学療法士や作業療法士やマッサージの専門家の資格は不要です。
もちろん、あるに越したことはないのですが、それらは、あくまでもプラスαにすぎません。
その障害者に合った力の入れ具合、支え方、どうしたらいいのかという工夫、観察力などは、
ほとんどセンス、今まで培ってきたスポーツ体験からの資質と言っていいと思います。
会話のセンスも重要です。
ですから、教えようがないのです。
これも、実際に水の中に入って体験していただくとすぐに実感できます。
上手な人は最初から上手です。ウン?という人は、ずっと、、、、

■難聴、聴覚障害者の対応

これも、よく一般的によく知られていることばかりなので省略します。
マスクをとって、しっかり顔を見て、口をわかりやすいように動かして、、、
筆談ボードを用意する、簡単な手話を使う、、、、
考えれば当たり前のことばかりです。
指導者にお願いしたいのは、そういう対応をプールのスタッフにもお願いすることです。
みんなでサポートする、こういう環境を整えることが大切なのです。
 

■障害児が走り出したら、、、

障害児が走り出したら、そして、それが危険な場合は、指導者は自分の体全体を使って、前から抱きしめるようにして止めましょう。
ただし、走り出した子どもの後ろを追いかけるのは止めた方が賢明です。
なせなら、子どもは転びませんが、大人は転倒するからです。
ですから、向かってくる子どもを止めることはいいのですが、後ろから追いかけて止めることは、しない方がいいのです。
別の止め方を工夫してください。
ぼくに、苦い経験があります。
走り出した子どもを止めようと腕を引っ張ったのですが、その子どもの肘関節が抜けてしまいました。
痛みには鈍感な子どもたちですから、そのまま腕をブランブランさせながら走っていきました。
大失敗です。