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【障害者水泳 指導者養成研修】共泳・インクルーシブプール②


■障害者用更衣室について

まず、ほとんどの場合、障害者用更衣室は整備がされていません。
プール用の車いすも、まず、ほとんどが壊れています。(信じられないでしょうが…)
ドアのストッパーも、空調も、トイレも、ベッドもです。
指導者は、まず、そこから施設側と交渉すべきです。そのあたりの環境を整備することが先なのです。充実した水泳指導なんて、その先の先の先の話です。
水泳教室のコーチや子どもたちが、当たり前のように障害者用更衣室の中にあるトイレを共同便所として使っているケースもあります。全く腹の立つ話しなんですが、こういうのを一つひとつ潰していくのです。
 
※プール・ボランティアでは、「障害者用更衣室の定義」というものを提案していますので、ぜひ、参照してみてください。
 
【フランス式更衣室】
フランスのプールには更衣室が一つしかないそうです。
その一つの更衣室で、男性も女性も性的少数者も、異性の親子なども更衣するのです。
更衣するときは、個室になったブースで着替えてそれをロッカーに入れるのです。
これだととても合理的で、誰もが更衣することができます。
グッドアイデアだとは思いませんか?

【参考資料】「障害者用更衣室」の定義

「障害者用更衣室」の定義
以下の要件を、すべて満たしているものを「障害者用更衣室」と呼ぶ。
① 男性用更衣室、女性用更衣室とは別の更衣室であること。
② 男性用更衣室、女性用更衣室を通らないで障害者用更衣室に行けること。
③ 更衣の後、男性用更衣室、女性用更衣室を通らないでプールに行けること。
④ 障害者用のトイレ、シャワーが更衣室の中、またはすぐ近くにあること。
⑤ 室内にベッドがあること。
※ 最近では、「家族更衣室」「多目的更衣室」という表現が多く使われています。
※ 「身体障害者用更衣室」という表示は適切ではありません。
※ 障害者用更衣室が二つある場合、それぞれを「男性用障害者用更衣室」「女性用障害者用更衣室」と分けることは間違っています。
※ 障害者だから障害者用更衣室を使うわけではありません。男性用更衣室でも女性用更衣室でも更衣ができない人が、「第三の更衣室」として障害者用更衣室・多目的更衣室を使うのです。

■多目的更衣室の意味

必要のない人が、自由に使っていいものではありません。
「多目的」の意味を間違って解釈している人は少なくありません。
この多目的更衣室というのは、
「どうせ誰も使っていないのだから・・・・」
「すぐ近くにあって、使うのに便利だから…」
「あっちのトイレは寒いから・・・・」
「広くて静かだから・・・」
「多目的なんだから・・・」
などという理由で、当たり前のように使っていい部屋ではありません。
社会的弱者がいつ来てもいいように整備して空けておくべき部屋です。
「多目的なんだから、みんなが平等に使っていいのです。」なんてのは全くの大間違いの理解です。
 

■障害者用更衣室の表記の歴史

少し、歴史をお話しします。
昔、大阪市営のプールでは障害者が使う更衣室は、すべて「身体障害者用更衣室」と表記されていました。
障害者と言えば、「身体」障害者だけをイメージしていたからです。
でも、障害者基本法という法律で、障害者には、身体、知的、精神の3種類が定義されるようになりました。
「身体障害者用更衣室という表記だと身体障害者だけしか使ってはいけないように受け取られるじゃないですか!これは、差別になりますよ。」
と私たちが大阪市に抗議したところ、日頃、腰の重い行政も「それは、その通りですね。」と、一週間も経たない間に、すべての「身体障害者用更衣室」という看板から「身体」という文字が削除されました。 
 
それから月日が経ち、
「障害者用更衣室という表記では、障害者しか使えないじゃないか!」という議論が起こり、
最近では、「多目的更衣室」という表記に代わってきたのです。
この「多目的更衣室」を使うのは、
障害者はもちろんですが、男性更衣室でも更衣ができない、女性更衣室でも更衣ができない、そういう人たちが安心して更衣をする「第三のお部屋」なのです。
例えば、
・LGBTQの人たち
・お父さんと小学生の女児(異性の組み合わせ)
・お母さんと小学生の男児(異性の組み合わせ)
・体に大きな傷跡やケロイドがある人たち
・すごい入れ墨をした人たち
・障害者だけれども、障害者手帳をあえて申請しない人たち
・子どもたちの更衣中の騒がしさが、苦手な人たち
・うつっぽい人たち
・手帳のない自閉症児と介護者
・乳児と一緒に着替えるお母さん
など、こういう「多目的」に使う人たちが安心して気兼ねなく着替えるためのお部屋なのです。
コーチや水泳教室の子どもたちや一般市民が当たり前のように使うべき部屋ではありません。
こういう心ない人たちが頻繁に使うと、本来使うべき人たちがその利用を躊躇してしまうのです。
 

【参考資料】トランスジェンダーのお客様対応 (模範応対)

トランスジェンダーのお客様対応 (模範応対)
いらっしゃいませ。少しお話しをしませんか?
    (二人だけで話せる静かな個室に誘導する。)
間違っていたら、ごめんなさい。
あなたは、トランスジェンダーの方ですか?(性同一性障害者→性不合者)
当施設は、LGBTと言われる方たちを排除しようとする施設ではありません。
そういう方たちにも、気持ちよくご利用いただけるよう、日ごろからスタッフにも指導教育しております。
しかし、まだまだ年配の方を中心に偏見や差別意識を持っている人たちも
多数いらっしゃるのが現状ですよね。
この施設を利用するに当たり、何か不都合なこと、お困りのことがありましたら、遠慮なさらずにご相談ください。あなたと一緒になって、私たちは考えていきます。他のお客様たちにも、私たちが積極的に理解を求めるようにしてまいります。
まずは、
更衣室のこと、水着のこと、プールのこと、お風呂のこと、
一緒に考えませんか?

■突き当りスペースの活用

水中スロープの奥には、たいがい5mほどの「スペース」があります。
昔はこのスペースの入口には柵があり、「危険だから入らないでください。」と標識が立っていました。
「なんで? 全然、危ないことないやんか!」
長年の交渉の末、このスペースの柵を撤去してもらい市民のみなさんが自由に使えるようにしてもらいました。
今では多くの市民プールが、そういう対応をしています。
こういう小さなスペースで障害者はストレッチをしたり、水中座禅をしたり、背浮きをしたりして、いろいろ活用しているのです。
最近の市民プールは動いていないと注意されるからなぁ。
 

■水中にある柵

プールの中央に柵のあるプールが少なくありません。端から端まで柵が25m続いています。
水深が違うところに設置されているのですが、これがとても危険なのです。
火事や地震や有事の際は、すぐにプールから上がって避難しなければいけませんが、障害者や脚の不自由な高齢者は、どこからプールに上がるのでしょうか?
逃げられないよね。
タイタニック号が沈んだ時の二等船室と同じ状況になります。
この柵があるために逃げ遅れて混乱している姿が目に浮かびます。
プール・ボランティアは、この柵の両サイドだけ撤去するように提言しました。
心ある施設は、「なるほど、そうやなぁ。」って撤去してくれました。
こんなん当たり前のことなんやけどなぁ。
 

■目洗いシャワー

ピューと垂直に水が吹き上がる目洗いシャワーを使っている民間スイミングスクールや公営プールは、ただの一つもありません。
医学的にこの目洗いシャワーが不要だということは、インターネットでも公表されています。
すべてのプールの洗い場に、いくつもいくつもこの目洗いシャワーがあって、とても場所をとるので邪魔なのです。
みんなが不要だと思っているこの目洗いシャワーは、どうして存在しているのでしょうか?
どうして撤去できないのでしょうか?
これは戦後に制定された古い大阪府の条例でプールを建てるときには、この目洗いシャワーを設置しなければならないと定められているからです。(大阪府)
プール・ボランティアは、大阪府議会に撤去の議案を提出しましたが、見事に否決されてしまいました。
どうして否決されたのか、いまだにわかりません。