【障害者水泳 指導者養成研修】その他①
■モンスターペアレント
障害児にも、もちろん保護者がいます。
そして、現実にモンスターペアレントもいます。
こういう保護者と関わると大変なことになります。
詳しいことはここでは書けませんが十分に気をつけることです。
26年前に、ぼくたちがプール・ボランティアを設立しようとしたとき、
「障害児を抱える保護者は、子どもの障害と向き合い、熱心に、真摯に、精力的に、真面目に、健気に、頑張っている。そこを少しでも助けてあげたい。」と思っていました。
設立して活動を始めてみると、現実は全く違いました。(笑)
この話しも、ここでは詳しく書けませんが。
■保護者との教育論争は避けること
プール・ボランティアは、生活の中のほんの数時間、障害児と接触しているだけです。
ですから、障害児たちの教育や子育てについて、保護者に、ああだこうだという資格は基本的にはありません。
子育て経験のあるボランティアが、保護者の子育て相談に乗ったり、アドバイスをしたりすることはありますが、保護者と教育について論争することは基本的に禁止しています。
特に、自閉症児の教育方針は、保護者によって正反対の場合も少なくありません。
でも、障害児に裸で接するわけですから、虐待の跡があったりすれば保護者に確認しています。
ところで、活動中にオシッコに連れて行くことが多いのですが、お父さんが積極的に関わっている家庭の障害児は、オシッコをするのが上手です。ちゃんとチンチンを手で持ち、皮をむいて、便器に近づいてから的を狙って放尿します。
■使用する資材について
ときどき見かける市販の黄色い色の「首を固定するライフジャケット」のような浮き具は、障害者を固定して浮かせるだけのもので障害者自身の動きを封じてしまいます。
本人は全然楽しそうではありませんし、自由な動きができませんのでプール・ボランティアでは一切使用していません。
また、ジョイポールのような浮き具も、固いし、浮力がありすぎて障害者自身が自由に扱えませんので、プール・ボランティアでは、これも一切使用していません。
本人は楽しくないし効果もないからです。
浮き具の必要性を否定はしませんが、基本的にプール・ボランティアは浮き具を使用しません。
使うとしても効果的にほんの少しだけです。
もっとも上質な浮き具は、指導者の手と腕と脚だからです。
みなさん、憶えておいてください。
実戦経験の少ない未熟な指導者ほど、こういう浮き具をたくさん使いたがります。
■プール・ボランティアが使用する資材
・プール専用車いす/サンダーバード1号、2号。(いずれも国産)
・重度身体障害者用/沈む浮き具/うきうきくん(国産)
・水に濡れても滑らない安全マット(エアレックスマット/外国製)
・汚物処理網やゴム手袋などの応急手当グッズを入れたバケツ
■重度身体障害者用浮き具「うきうきくん」について
今までプール・ボランティアは外国製の浮き具を使用していました。
でも、どれも高価だし満足なものには思えませんでした。
そこで、自分たちの手で作ることにしました。
それが、国産の重度身体障害者用浮き具「うきうきくん」です。
別名「沈む浮き具」と言いまして、水泳指導の玄人さん好みの浮き具です。
これを使いこなせるのは、かなりの水泳達者さんです。
あまり浮力がありません。だから、あまり頼りになりません。
だから、自由に扱えるのです。
■プール専用車いす「サンダーバード1号」と「サンダーバード2号」について
今までプール・ボランティアは外国製のプール専用車いすを使用していました。
でも、どれも高価だし使い勝手も悪いし満足なものには思えませんでした。
修繕するのも大変です。
日本人なら、もっと安くていい物ができるはずや!
そこで、自分たちの手で作ることにしました。
そして、完成したのがスタンダード型の「サンダーバード1号」とベッド型の「サンダーバード2号」です。
こういうプール専用車いすが各プールに1台あると、障害者が気楽にプールに行けるんだけどなぁ。
今、日本にあるプール用車いすというのは、ほとんどがただのシャワーチェアです。
手前みそになりますが、このサンダーバード1号は、それはすごい車いすです。
これに乗った障害者の人は、みなさん驚嘆の声をあげます。
そもそも、日本に本格的なプール専用車いすというものはなかったように思います。
例えば、ティッピングバーがむきだしの金属棒だけなら、プールは裸足なので介護者は痛くて踏めるはずがないのです。
座面も背もたれ部分も、今までの車いすだと取り外しができないので、しばらく使えばカビで真っ黒になってしまいます。
パイプに水がたまるので、ときどき真っ黒な水が流れ出したりします。
こういうところをすべて改善したのがサンダーバード1号です。
詳しくは、プール・ボランティアのホームページで確認してください。
■監視員が裸足で監視業務をしているプールは要注意
市民プールの壁に書かれているルールは、「一般的標準的な市民を想定してつくられているルール」です。そのルールを障害者にそのまま平等に適用することは真の平等ではありません。
(平均的平等と配分的平等の違い)
当たり前のことなのですが、このことを理解していない監視員はとても多いのです。
つまり、理解が遅れているということです。
こういう人権意識に欠けているプールの多くは、監視員が裸足で監視業務をしていることが多いのです。つまり大昔のままの監視体制です。
こういうプールは、注意しましょう。
【参考資料】
監視員はサンダルを履きましょう。
あなたのプールの監視員は、まだ裸足で勤務をしていますか?
なんとなく、昔からの慣習で「お客さんが裸足なのだから、監視員も裸足で勤務しなければ・・・・。」なんてことになっていませんか?
でも、よく考えてみると、監視員が裸足なのはおかしいですよね。
すでに多くのプールで、監視員はサンダルを履いて勤務していますが、あなたのプールの監視員がまだ裸足で勤務しているなら、この機会にぜひ一度ご検討ください。
◆監視員自身の足の保護の観点から
・ 人間の足は硬いコンクリートの上を裸足で歩くようにはできていないので、足を痛めてしまいます。
・ 濡れたプールサイドでは足の裏がふやけてきて、その状態で歩くと細かい擦過傷が生じ、感染の可能性があります。裸足だといろいろな足の病気に感染しやすいのです。ウィルス性のイボ、魚の目、水虫などです。ですから、マイサンダルが必要です。
・ 薬品が置いてある倉庫に裸足で出入りする場合は、特に危険です。
・ そもそも裸足では何をするにしても滑りやすく、ケガをする可能性が高いのです。
◆事故対応の観点から
・ プールの壁や天井の落下事故は、各地でよく発生しています。また、地震が起きて観覧席のガラスや壁時計が落下したり、利用客のメガネが落ちてガラス片が散乱したり、血液や嘔吐物がプールサイドにあるときなど、監視員が裸足では利用客を迅速かつ安全に誘導できません。
・ 担架のセッティングは、素手や素足ではケガをする危険がありますし、サンダルに比べて裸足は滑りやすく、傷病者の搬送の際に危険を伴います。
・ AEDを使用するときに、濡れた裸足だと躊躇してしまいます。
※「わしらが裸足やのに、なんで監視員がサンダルを履いてんねん。」という利用客の声は、「苦情」なのではなく、「質問」なのです。
合理的な理由のあることを、きちんと説明すれば納得していただけます。
■クレーム対応について
一般的に障害者の世界は、
「暗い、怖い、臭い、汚い、気持ち悪い、関わりたくない」の6Kと思われがちです。
そういう一面があることは否定しませんが、少しでもこういうのを吹き飛ばすように努力することです。
プール・ボランティアではプールに入るときには、とにかく一般のお客さんたちに挨拶することを心がけています。
「おはようございます。」「こんにちは」
この活動のファンを作っていくのです。敵ではなく味方を増やすのです。
「同じ水泳仲間です。一緒に泳がせてください。」
クレームに対してはケンカをするのではなく、理解してもらえるように努めましょう。
でも、現実には、、、あまりにひどい場合は、、、、、、
やるときはやります。
■クレームについて(隔離教育と統合教育)
長い間、この世界に関わってきて、たくさんのクレームを頂戴しました。
が、少しずつ減ってきています。
ほんとに昔に比べると激減したと言ってもいいくらいです。
社会が障害者を受け入れるよう少しずつ変わってきているからでしょうね。
そして、今でもあるクレームのほとんどは、60歳以上の高齢者からです。
若い人からのクレームは、ほとんどありません。
なぜだかわかりますか?
高齢者の多くは隔離教育しか受けていないからです。
障害者に会ったことも話したことも、ほとんど経験がないのです。
若い人は統合教育を受けていますから、学生時代に学校に障害児が何人もいたのです。
つまり、障害者がいる風景が自然な風景になっているのです。
障害者の存在に違和感がないのです。
だから、若い人からのクレームは少なく、高齢者からのクレームが多いのです。
障害者水泳指導に関わる人は覚えておくといいですね。