【障害者水泳 指導者養成研修】その他②
■「大きな保険」に入ること。
万一の事故に備えて事前に大きな保険に入っておきましょう。
保険のない指導は無謀なだけでなく、大きな悲しみと苦痛を伴います。
プール・ボランティアでは「NPO活動総合保険」に加入しています。
ひとつ、覚えておいてください。
事故があったとき、「ボランティアさんには、いつもよくしていただいているので気になさらないでください。大丈夫です。」なんてことは、保護者は絶対に言いません。
■水泳の家庭教師について
障害者であれ、健常者であれ、水泳指導をするにあたって、公営プールで指導料をとって、
つまり営利目的、有償で指導することは禁じられています。
普通に考えれば当たり前のことなのですが、現実にはそういうルールの網をくぐって「闇営業」をしている偽水泳指導者は少なくありません。
みなさんは、そういうことをしてはいけませんよ。
純真な障害者のみなさんを「闇ビジネス」の世界に巻き込んではいけません。
まさに、「障害者を食い物にする」情けない行為です。
■事故の可能性
私たちは神様ではありませんので事故の可能性をゼロにすることはできません。
安全を第一に優先する、ということは当然のことですし、事故の可能性をゼロにすることはできなくても、限りなくゼロに近づける最善の努力は続けていかなければいけないことも当然のことです。
事故には「不可抗力による事故」と「指導者に過失がある事故」とが考えられますが、
その境界線は微妙なものです。
どちらの場合も、それなりの責任はとらなければならないでしょうし、そのときの指導者の精神的な負担はかなりのものがあります。
障害者の水泳指導中に事故があり、保護者から何百万、何千万円の損害賠償金を請求されたという事例が新聞にときどき載っています。
障害者水泳の指導者は、常にこういった事故のリスクを背負いながら指導しなければならないのです。
ですから、「腹をくくる覚悟」が必要です。
ぼくも、この活動を始めるにあたって、何かあったときには見苦しい振る舞いだけはすまいと心に決めています。
でも、あまりにこの点を強調すると「障害者に水泳を指導してあげよう。」なんて人は、いなくなるよね。
障害者水泳のすそ野が広がらない最大の理由がここにあると思っています。
やっぱり事故のことを考えるとリスクは大きいし、躊躇するよなぁ。
プール・ボランティアでは、保護者に誓約書を書いてもらっています。
「活動中に万が一、事故などが発生し会員の障害者がケガなどを負った場合、プール・ボランティアに対してその場で可能な限りの手当てをすること以外の一切の責任を追及しません。」
この一文が強力な法的拘束力を持つことはないとしても、ちょっとした保護者への牽制球にはなると思います。
もちろん誓約していただけない人には入会は認めていません。
プール・ボランティアの26年間の活動の中で、一回だけ生死にかかわる事故がありました。
そのときの精神的な疲労は、それはもう言葉では言い表せないものでした。
このお話しは、別の機会がありましたらお話しします。
■グループ練習もいいですよ。
プール・ボランティアは完全マンツーマンが原則ですが、ガンガン泳げる障害児たちは、まとめてグループ練習をすることもあります。25m単位で泳げる障害児たちです。
仲間ができるとみんなが頑張ります。「集団のチカラ」です。
ですから、マンツーマンの進化形としてグループ練習を位置付けています。
■悪役と天使役
障害児の水泳指導をするにあたって「悪役」と「天使役」を作ると、子どもたちの意外な可能性や限界点を知るのにいいですよ。
プール・ボランティアのマンツーマンの担当ボランティアさんは当然「天使役」ですが、数人の「悪役」が少しずつ子どもたちをまわって、ちょっと強引なこと、ちょっと意地悪なことをして回ります。
「意外とできるやん!」ってことが、とても多いのです。新しい可能性の発見です。
悪役が来ると、子どもたちは天使役のボランティアさんに助けを求めます。そこで、強い信頼関係が生まれます。
障害児を指導するときには、こちらもいろいろと戦略を練ることも必要です。(笑)
■寒いときの心得
真冬のプールは温水プールといえども、やっぱり寒いです。
特に、更衣室に入ると、それはもう震えあがります。
そんな季節に、保護者から「寒いのでジャグジーや採暖室で、しっかり温まってから更衣室に連れてきてください。」という要望があります。
そうすると、どうなるかな?
ポカポカした状態で保護者にバトンタッチします。保護者はすぐにセーターやマフラーを着せます。そうするとその時には暑いので、多量の汗をかきます。そして、寒い外へ出ます。汗が冷たく体を冷やしてしまって風邪をひきます。このパターンがとても多いのです。
私たちでも、お風呂から上がってすぐに服は着ませんよね。そんなことをすると汗だくになってしまいます。ある程度、からだから汗がひいてから服を着ますよね。
更衣室で震えるような状態から服を着ると、しばらくすると体がポッカポッカしてきます。
この感覚はスポーツをしていた保護者は理解できるのですが、そうではない保護者にはなかなか理解できません。
だから、少しくらい寒くて震えた状態でもいいのです。むしろ、その方がいいのです。
保護者は子どもに対して、厚着をさせる傾向にあります。よく動くタイプの子どもは、もう少し薄着のほうがいいのになぁ、っていつも思います。