【障害者水泳 指導者養成研修】共泳・インクルーシブプール④
■冷たいプールと温かいプール
あるプールで障害児たちを指導していて終わったときのことです。
プールの監視員さんが、
「お疲れ様でした。寒いでしょう。少し泳いでいってください。」と声をかけてくれました。
介護者は自分のために泳ぐことはできませんので、ぼくたちはいつも寒いのです。
そういう事情をこの監視員はよくご存じなのでしょう。
あまりの温かいお誘いに感動しました。
そして、みんなで50mだけをゆっくり泳いで退水しました。
こういうプールは、障害者に優しいだけでなく、健常者にも優しいプールです。
一方、障害者や介護者につきまとって、細かく執拗に理不尽な注意を繰り返す監視員のいるプールもあります。
こういうプールは障害者に冷たいだけでなく、他の市民のみなさんにも冷たいプールです。
どちらのプールが利用するお客さんにとっていいプールなのかは、みなさんはわかりますよね。
ところで、プールの良い、悪いはどこで決まるのでしようか?
それは、指定管理をしている会社で決まるのではありません。
そのプールの館長の資質で決まるのです。
ですから、館長が代わるとプールの雰囲気は、ガラリと変わります。
人柄のいい、頭のいい、プールに関する知識の豊富な人で、公正なリーダーシップのある人が館長になると、間違いなくそのプールは素晴らしいプールになります。
※プール・ボランティアでは、「障害者がプールに来た時に、どう対応していいのかわからない。」という企業やプールの指定管理者の声に応えて「障害者対応研修」というものを無料で開催しています。 【別紙参照】
この事業は引っ張りだこになり、おかげさまで名のあるプールの指定管理者はほとんど受講していただいています。ありがたいことです。
思うに、プールの管理者側と障害者とのトラブルの原因のほとんどは、管理者側の障害者への「無知」が原因であると考えられます。知らないだけなんですね。
■プール管理側の変化
最近は、プールを管理する側にも変化がみられるようになりました。
実に、面白い。
あるプールに行くと、ダウン症の女性が受付に座っていました。
あるプールに行くと、耳の聞こえない女性が監視員をしていました。
あるプールに行くと、ヨタヨタ歩く脳性マヒのお兄ちゃんが監視員をしていました。
あるプールに行くと片足のない男性が水泳のコーチをしていました。
あるプールに行くと、精神障害者手帳を持っている男性が働いていました。
研修などで訪れたプールのほとんどにLGBTQの人が働いていました。
将来、当施設の館長は車いす者です、っというようなことがあるかもしれません。
そうなったら実に、面白い。
そのプールのプール専用車いすは、いつもビシッと完璧に整備されているでしょうからね。
■20年後もそうですか?
プール・ボランティアの活動は障害者専用プールを使いません。
普通の市民プールで市民のみなさんと一緒に泳いでいます。
ノーマライゼーションの実践ということです。
どうして障害者は障害者専用プールで泳ぎ、一般市民は普通の市民プールで泳がなければいけないのでしょうか?
みんな一緒に泳げばいいのに。
20年前に障害者施設で働く偉い人に聞きました。
「こういう障害者しか入れない施設は全廃して、みんなで一緒にスポーツしたほうが効率的だし、お互いのためにいいんじゃないですか?」
「いやいや、岡崎君、まだまだそういう時代じゃないんだよ。まだまだこういう障害者だけの施設というのは必要とされているんだよ。」
「ふ~ん!」
20年経った今、彼に同じ質問をしたら、20年前と同じ答えが返ってきました。
おそらく、彼に20年後に同じ質問をしたら、また同じ返事が返ってくるのでしょう。
思うのですが、もうそんな時代じゃないのです。
障害者も健常者もみんな一緒に!
そういう時代は、もうとっくに来ているのです。
こういう意識改革は、障害者の施設で働くスタッフもそうですが、障害児の保護者にも必要なんじゃないかな?
イタリアは、法律で障害者も健常者もすべて同じにすると決められていますよ。
カナダも、そうらしいです。知らんけど。(笑)