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高校の探究学習とだっぴと、小学生。
学習指導要領の改訂によって、日本全国に広まっている探究学習。
――舞台は、矢掛高校。
この高校もまた、以前から探究学習に力を入れてきた学校の1つである。
今回は、その探究学習の一環として、だっぴのファシリテーション講座を活用して、高校生が対話の場づくりを行うプロジェクトについて、noteにまとめていきます。
プロジェクト概要
プロジェクト期間は9月~12月。
矢掛高校2年生探究コースの31人が、12月に倉敷市立薗小学校で実施予定の「薗っこだっぴ」のファシリテーター役として、その役割を完遂できるようにファシリテーション力を高める活動(月2回)を行っていきます。
各回の授業内容は以下のとおり。
①プロジェクトの説明・生徒同士でだっぴ体験
②吉備国際大学の大学生たちとだっぴ体験
③先生たちも入って自己開示&傾聴のワークショップ
④これまでを振り返り、対話が活性化するための仮説づくり
⑤ファシリテーションについて学び、その立ち居振る舞いを練習
⑥地域の人たちとのだっぴで、ファシリテーターの実践
⑦薗小学校に事前訪問・小学生たちと交流
⑧「薗っこだっぴ」本番
薗っこだっぴは、2019年度から実施しているだっぴで、通常のだっぴのプログラムデザインに加えて、西日本豪雨での体験をその当事者である小学生たちが、自分たちなりの意味づけを地域の人たちにアウトプットするという要素があります。
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異なる他者との出会いと対話
高校生たちは人と話すことが決して得意だったわけではありません。むしろ、「どちらかと言うと人見知りの生徒の方が多い」というのが先生からの前情報でした。参加前の自分について、
はじめての人と話すのが怖い、
普段から人と話すことをためらうこともありました。
と振り返る1人の男子高校生。そこで私たちが立てた仮説は、
2-A生徒には、異なる他者との対話経験がそもそも少ないのかもしれない。
ということでした。できる限りその経験量を増やして、その経験から得られたものを省察していくことを大切にしました。大学生や地域の人との対話の時間などがそれに当たります。
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そして当日・・・!
「薗っこだっぴ」当日。
小学6年生3人、大人1人のグループの中で、高校生(1~2人)がグループファシリテーター(だっぴではキャストと呼称)として関わり、より良い対話の場を目指します。
小学生や大人の人たちに色々と質問してみたり、笑顔でサポートしたり、場を盛り上げたりして、自分たちの役割をそれぞれができる方法で全うしていて、すごいなと思いました。
矢掛高校コーディネーターの井辻さんも
勉強や運動等日ごろの授業で分かる力ではなく、学校では測れない一人ひとりの良さや、才能を再発見する機会となりました。
と話します。
当日を終えての高校生たちの表情はやり切った気持ちが伝わってくる、良い表情をしていました。
学校に戻って昼食を食べて一息ついてから、記憶が新しいうちに振り返り。各々が印象的だったシーンを語り合いながら、自分たちの手応えを実感しているであろうことが、自分事で話をしている彼らの姿から伝わってきました。
高校生たちにとって、今回の経験は何だったのか。
一連のプロジェクトが終わった後、高校生2人(男女1人ずつ)に今回のプロジェクトで得られたものは何だったんだろうをヒアリングさせてもらいました。
元からコミュニケーション能力が高く、知らない人と話すのが苦じゃない女の子は、
ファシリテーションということ自体を初めて知った。大人の人との対話の中で色んな発見があったし、被災経験のある人(小学生も大人も)たちと話す機会があったことで、当事者の声を聞けて、災害に対する理解が深まった。
と話します。
人とのコミュニケーションに苦手意識があった男の子からは
自分の視野が広がった。これまでは自分の考えが全部正しいと思っていたけど、地域の大人たちの考え方を聞いて、そうじゃないと思い始めた。他の人の考え方も聞くことで、新しい自分の考え方が浮かんできて、柔軟な発想がもてるようになった。
という声が聞けました。また、
集団で会話するときに、質問したりして場をつくる力が身についたと思う。自然と話せるようになった。
とも話してくれて、自分の成長を実感できていて(メタ認知できていて)、それが自信につながっているようにも見えました。
これらを踏まえて、今回のプロジェクトでは
①対話からの発見・他者の体験や考え方を学びとして吸収する力
②人と関わる力・コミュニケーション能力
③それらを振り返るメタ認知能力
に対して良い影響を及ぼすことができたのではないかと思われます。探究学習を行っていくうえでも、他者との協働や物事の視野を広げていく探究心的感覚はとても重要で、彼らのこれからが楽しみです!
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