【活動記録】桜花会さんで当事者研究しました。2024年10月25日
当事者研究講座のご報告
不登校のお子さんをもつお母さんたちの会である「桜花会」さんで、当事者研究のグループワークを行いました。
今回ファシリテーターを務めたメンバーMは、自身も長期間にわたる不登校と引きこもり経験があるため、当事者意識を強く持ちながらの参加となりました。
当事者研究講座レポート
講座概要
日 時:2024年 10月25日(金) 10:00 - 11:30
場 所:大社公民館
人 数:スタッフ1名、参加者3名
内 容:「当事者研究」グループワーク
目 的:苦労や困りごとを題材にした対話を通じて、共有や発見の体験をしてもらう
講座内容
本講座では、通常の講座より当事者研究の紹介にあたる座学部分は短くまとめ、2つのテーマの当事者研究を行いました。
グループワークの流れ
ワークは以下の流れで進めます。
1.苦労の共有
2.研究テーマ選択
3.テーマ毎の研究
テーマ選び
グループ内でまず「みんなの苦労」を共有し、その中から当事者研究を行うテーマを選びます。
「みんなに聞いてほしい」「一緒に考えてほしい」という当事者の希望
「興味がある」「詳しく聞いてみたい」という他の参加者の関心
「自分も同じような苦労がある」という共感
このような要素が大切にされながら、グループ全体で研究テーマを決定しました。
テーマ毎の当事者研究のグループワーク
ワークは、テーマ毎に以下の流れで進行します。
当事者さんにみんなでインタビューし苦労について詳しくお聞きします。
インタビュアーから当事者さんに「発見」「共感」「対処方法のアイディア」を共有します。
当事者さんからインタビュアーに「発見」や「感想」を共有します。
ここからは各研究テーマについての概要をお伝えいたします。
※各テーマの「概要」はファシリテーター視点からのまとめの一つ」であり、参加者それぞれの体験を総括するものではありません。
研究テーマ1:「自分の子供を他の子と比べてしまい、落ち込んでつらくなる」
当事者さんは、自分の息子さんと、(不登校ではない)同年代のお子さんを比べてしまい、つらくなってしまうということでした。息子さんと同じ年頃だった頃のご自身と比較して違いを感じることも多いそうです。自分の経験とあまりにも違う生活を送っている息子さんに対して「人間として成長できるのか」と不安になる、と話してくださいました。
また、夫が協力的でないため、子育てにおける当事者さんの比重が大きいこと、そのことで「子育ての仲間がいない」と孤独を感じる、というつらさもあるそうです。
そんな中で当事者さんは、カウンセリングを受けるなど、家庭の外に助けを求めています。そして、そうした「共感が得られる対話」の中でなら、息子さんを誰かと比較して苦しむことは無い、ということがわかりました。
息子さんを誰かと比較してしまうのは、当事者さん自身が落ち込んでいるときが多く、また、比較する「誰か」は「ふつう」「当たり前」という概念とも言えそうです。
当事者さんのお話に対し、みんなからは圧倒的な共感の声が寄せられました。「自分のことのように感じた」「頭ではわかっていても難しい」「他のママ友には言えない」……
世間からの、親の責任を問う視線や意見がつらい。悪いことはしていないのに周りからどう思われているか気になる……
だからこそ当事者さんが「外(のサポート)を頼ったのは大きい」「共感してくれる人、安心して話せる人がいることが大事」ということが、大きな実感を持って共有されました。
また、「自分の機嫌を保つのも大事」「同じ環境や状況のグループの中でなら比べる物差しが変わり、ポジティブな変化に目を向けられるのでは」という指摘もありました。
当事者さんは、グループワークをやってみた感想として「共感がほしい。同じ立場や経験の人とつながりたい」と語ってくださいました。
研究テーマ2:「二人の子どもを比べてしまう。親としての関わり方、バランスのとり方がわからない」
二人の息子さんをもつ当事者さんは、子育てをする中でどちらか一人にかかりきりになってしまうことがあり、「もう一人への接し方がおろそかだったのではないか」と悩んでしまう、ということでした。
お子さんの特性や調子の波により、接し方に差ができてしまう。お子さんが何を求めているのかわからなくなる。つい上の子ばかり気にかけてしまうが、下の子のことをもっと考えてあげなきゃ、という思いがある。一方で、「お兄ちゃんはできたのに……」と兄弟間で比較してしまうことがある。すでに同じ時期の子育てを経験している上の子を基準に考えてしまう。
当事者さんの真剣なお話ぶりからは「二人の子供をどちらも大事にしたい」という気持ちが伝わってきました。
当事者さんのお悩みに対して「その気持ちはよく分かる」「二人兄弟の場合は、その中で比較してしまうのは仕方のないこと」と、共感の声があがりました。「子どもは一人ひとり違う」という当たり前の事実がとても大きなことなのだと、改めて考えさせられる指摘もありました。
当事者さんは「お子さん本人に気持ちを言葉で聞いてみる」というアイデアをやってみたいということでした。
ワーク後に「共感してもらえること、一人じゃないと思える、理解してくれる人がいるのはうれしい」という感想とともに、「どうして孤立しちゃうんだろう」と呟かれていたのが印象的でした。
参加者さんの感想
講座に参加いただいた皆さんから、たくさんの嬉しい感想をいただきました。
「他のお母さんにも体験してほしい」
「子どものこととしてではなく、自分の悩みとして語れるのが良かった」
「気づきの多い会でした」
ファシリテーターMの感想
お母さんたちのお話を聞く中で、「つらさ」を生んでいる「問題」ははたしてお子さんの「不登校」なのだろうか、と考えていました。ここで語られる「不登校」という単語は他の特性やマイノリティ的な在り方に交換可能であり、それらは同じ文脈で語れるように思いました。
同じ子どもは一人もいない、子育ては人それぞれで、正解はない。そこに一人で向き合わなければいけないつらさ。仲間であるはずの夫や他の家族から理解や協力を得られないつらさ。
それは子どもが不登校かどうかに拠らない、親として共通のつらさであるはずです。それなのにお母さんたちはなぜ、孤独になってしまうのか? 共感を得ることがなぜこれほど難しいのか?……
お母さんたちが孤立せず、安心して悩みを話せる場所と時間、優しく共感してくれる人たち。そんなお母さんへのサポートは、そのままお子さんへのサポートにもなりえるはずです。
子育てという「正解のない悩み」にとって、「解決を目的とせず、共感をもって寄り添う」姿勢の当事者研究は、一つの取り組み方・居場所になりうるように思いました。
当事者研究出張講座を承ります
当事者研究講座のレポートを読んできただきありがとうございました。
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