【後編】地域の人と交流する場にも!サマーフェスレポート 子ども実行委員と伴走する大人たち
■「子どもと運営するイベント」とは?-サマーフェス担当スタッフに聞いてみました
サマーフェス当日は会場全体を歩き回り、お店担当スタッフの相談を受けつつ、子どもたちの対応をしていた武田さんと芦沢さん。 サマーフェス全体の企画・運営担当として関わったお二人に、どんな想いで取り組んだのか、お話を伺いました。
――「サマーフェス」お疲れさまでした!まずは、当日実施してみていかがでしたか?
武田さん:
お疲れさまでした!始まるまでは私も子どももそわそわしてしまいましたが、本番は準備していたものを出し切って、やりきれたなと思います。
――開催日は夏休みでしたが、小学校の先生方も来場していて驚きました。
武田さん:
先生方について、実は……、開催お知らせのために子どもたちと小学校の職員室に行ったら、急に先生方の前で概要を告知することになって。招待状をちょっと渡すだけの予定だったので、突然のことで子どもたちもドキドキしたと思いますが、当日来ていただけて良かったです。
■遊びたい子どもたちに取り組んでもらうために、声掛けを一工夫してみる
――早速ですが、サマーフェスの伴走方法についてお聞かせください。主に夏休みを使っての準備になりましたが、実行委員として子どもたちが真面目に取り組んでいて驚きました。何かやる気を出すコツなどあるのでしょうか。
武田さん:
やりたいと思うときに、少しずつやるのが一番かなと思っています。今回の準備では、基本、拠点スタッフが一緒に進めるようにしたんです。普段見守っている大人として子どもたちのやる気がありそうなときがわかるので、そのタイミングで『やってみない?』と声をかけました。
――声掛けは、例えばどのように?
武田さん:
『先生は準備したいんだけど、みんなはどう?』とか、『○個作ってみようよ』と具体的なところまで提案するとか。『自分でやりたいと言ったことだけど、ここでやめていいの?』と聞いてみたりもします。
そもそも、最初の立候補の段階で『出店すると遊びの時間が少なくなるよ』というのは伝えていたので、『自分がやるって決めたんだよね』と言うと、子どもたちも『そうだよな』と思うようです。 私自身としては、やりたいならやる、そうでないならやらなくてもいいとも思うくらいなんですが、子どもたちの想いに寄り添いたいと思っています。
大人は早く終わらせなきゃと思ってしまいがちですが、『やる気があるときに、やれるところまで進める』という折り合いをつけることが大事だなと思っています。大人が焦ると、強制することになるので。
――芦沢さんの声掛けでは、子どもたちと友達のように気軽に意見を交わしていたのが印象的でした。関わり方で意識したことはありますか?
芦沢さん:
そうですか?ありがとうございます(笑)。 私はアイデアとして『こういうのができるよ』と提案はできますが、それを実行するのは子どもたち自身なんです。
提案したものを採用するか、そしてそれをどう実現するのか、実行する子どもたち自身で選んでほしい。子どもたちのやることを、大人がすべて決めてしまうことはしたくないと思っています。
――普段から関わりがあって信頼しているスタッフさんだからこそ、子どもたちも頑張ろうと思ったのかもしれませんね。
武田さん:
スタッフの配員は工夫しました。あのチームは自分で進められるから大人は少なくて大丈夫だけど、このチームは一緒にやったほうがいいだろうと考えたり。 普段子どもたちと関わっているからこそ、子ども自身でどこまでできて、どこをサポートするかを見極めて配員しました。子どもたちがやりきれたのも、各担当スタッフの手腕が大きい部分がありますね。
■スタッフ間での共有は「簡単に書いて」「簡単に見れる」形式を採用
――それぞれの関わり方があるんですね。今回の準備では各チームのペースで進めていきましたが、進捗状況はどのようにスタッフ間で共有したのでしょうか。
武田さん:
今年は会話を通しての共有の他に、チームごとのファイルを作って、チームメンバーや進捗状況、準備物などメモを残すようにしました。
というのも、昨年初めてサマーフェスを担当したんですが、自分が知っていることを他のスタッフさんは全然知らないということが結構あったんです。例えば、昨年は大人と子どものお店とで2日間に分けていたのですが、地域の方がどんなお店を出すのか、1日目か2日目なのか、どちらの日に実施するのかを知らないなんてことも。
スタッフ全員が毎日出勤するわけではないので、誰がいつ見てもわかる形にしたかったんです。
ファイルに書いておくことで、次出勤したときや、他の人に準備を任せるときの引継ぎに利用することができました。記入するときに、やったことや考えが整理されますし、そこも利点でしたね。
このファイルが、来年以降も役立つものになっていれば、とも思っています。
■地域の大人との関わり方――きっかけから、さらに大きな輪へ
――ありがとうございます。ここからは、地域の方との関わりについて質問します。地域の方々には、どのように参加依頼をしたのでしょうか。
芦沢さん:
私が小さい頃からの知り合いの、地域コーディネーターとして活動している方がいるんですが、 その人にサマーフェスをアフタースクールでやることを話したら『道具が借りられるかも』と地域の方につないでくれたんです。それが昨年ポップコーンやかき氷を出店するきっかけになり、今年も協力してもらうことができました。缶バッジ作りを担当された社会福祉協議会さんも、同じようにつながった方々ですね。
武田さん:
社会福祉協議会さんは、年度初めの4月、ご挨拶に来てくださったんです。その時に、『今年も是非サマーフェスしましょう!』と言ってくださって。もちろん、『やります!』とお返事しました(笑)。
また、今年初めて参加してくださった忍者修行の方々は、普段のアフタースクールでボードゲームを持ち込んで遊んでくれるボランティアさんなのですが、参加できるか聞いてみたら『ボードゲームもあるし、忍者遊びもできるよ』と答えてくださって、今回の企画につながりました。
バルーンアートをしてくれたのは、私の友人のお母さんですね。あと実は、忍者修行、かき氷では小学校の同級生もボランティアとして参加してくれていました。
――皆さん前向きに協力してくださったのですね。地域の方とのやり取りで、窓口は誰が担当されたのですか?
武田さん:
私と芦沢さんです。やり取り自体は、今年は昨年から引き続き参加してくださった方も多いので、スムーズに話が進みましたね。
スケジュール管理も担当していたので、地域の方とのお話の中で『この日は別のお祭りがあるから、違う日にしたほうがいいよ』とアドバイスをいただいたり、ボランティアの方々が来てくださる日も考慮したりして、子どもも地域の方も参加できるような日を開催日にしました。
■実はこんなエピソードも――実行委員では無い子どもたちも大活躍していました
――ありがとうございます。他にもサマーフェスで印象的な出来事があれば教えてください。
武田さん:
今回、実行委員の子どもたちがメインになって準備を進めましたが、実行委員でない子たちにもたくさん手伝ってもらったんです。
例えば、体育館で流したBGMは、投票ボックスを用意してアフタースクールに通う全員からリクエストを募集しました。何か手伝いたそうにしている子には、折り紙で景品や飾りを作ってみない?と提案してみたり。夏休み中はここで過ごす時間も長いので、朝、アフタースクールに来るなり『暇だー!』と言う5年生の子たちに、受付の看板を任せてみたりもしました。
あと、地域の方が出店したお店の看板は、アフタースクールで実施している定期プログラムで習字を習っている子たちに書いてもらいました
――目を引く立派な看板があるなと思ったのですが、これも子どもが作ったんですね!
武田さん:
はい。5年生2人に頼んで書いてもらったものです。この子たちはいつも一緒にプログラムを受けていて、ライバルみたいに切磋琢磨している関係なんです。それもあってか、それぞれ3枚ずつくらい任せてみたら、いつになく真剣な様子で取り組んでくれました。
実行委員の子に限らず、アフタースクールのみんなが準備に関わり、『自分もサマーフェスをつくった』と思うことでより楽しんでほしいという願いがあったので、みんなに色々やってもらいました。
■子どもたちの進め方に合わせて、無理のない範囲で実現してみる
――ありがとうございます。最後に、サマーフェスへの想いを教えてください。
武田さん:
サマーフェスは、子どもたちの『やりたい』という想いから始まっているので、大人の基準に沿わせるのではなく、子どものやりたいことに寄り添うイメージで取り組みました。 内心では『これでいいの!?』と思うこともありましたが、その子たちがやっていることを尊重するように心がけました。
今回、準備段階から、進め方はこれでいいのか、子どもたちとできるかななど、不安なこと もありました。ですが、不安な部分が分かっていたからこそ、子どもたちに合わせることで、それぞれができる範囲で無理なく進められたのではと思っています。
■おわりに
暑い夏の熱気さながら大盛況に終わったサマーフェス。
地域の皆さんの協力も得ながらの一大イベントは、それぞれの尽力によって、会場のどこを見ても笑顔があふれていました。
日頃から子どもたちに関わっている大人だからこそ、「やりたい」「できる」のラインを見極めてその気持ちに寄り添い、時には道標となることで成し遂げられたのだなと感じました。
文:コミュニケーションデザインチーム・伊嶋