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事例集Vol.3|一人ひとりが居心地の良い環境づくり~動線や収納、ゾーニングなど 空間設計における工夫~

放課後NPOアフタースクールでは、放課後に関わる方や子どもの居場所づくりにご興味のあるすべての方を対象として、オンラインにて放課後勉強会を開催しています。

2月5日に開催する第8回目のテーマは「一人ひとりの居心地の良い環境づくり

放課後の居場所において、子どもたちがやりたいことを楽しめる環境づくりやリラックスして過ごせる空間づくりについて日々模索されている方も多いのではと思います。

そこで今回は、子どもたち一人ひとりが居心地良く過ごせる環境づくりについての工夫や実践事例をご紹介します。


事前アンケートの結果

勉強会に先立ち、参加申込みをいただいた皆様に「環境づくり」について事前アンケートへのご協力をお願いしました。

物理的な環境について、必要な広さが「十分にある」という回答が2割にとどまり、さらにひとりや少人数になれる空間は6割、スタッフの場所は5割以上が「ない」と回答という結果になりました。

また、施設において「せまい」「うるさい」「落ち着かない」をどの程度感じているかについては、すべての項目で5割以上が「とても感じる」「まあ感じる」との回答でした。

このような施設環境から、実際にどのような課題が起きているのかもお聞きしました。その結果、「活動の制限」や「子ども同士のトラブル」といった回答が多く集まりました。

さらに、フリーアンサーからは「静的活動と動的活動の区切り」や「活動場所の確保」、「落ち着ける環境の確保」についての課題が多く寄せられました。

  • 体調の悪い子が横になれるスペースがないため騒々しい。クラブ室内の端のほうで休ませていると子どもたちが休んでいる子を跨ぎながら遊んでいるので危ない

  • 既存の部屋の大きさに対して、児童数が多くなったからか、子どもたちが室内を歩くだけでもスペースが十分では無く、しょっちゅうぶつかりながら歩くようで、新年度スタート時は低学年同士の小さな喧嘩が頻発していた

  • スタッフルームは物が多く、雑然と重ねられていて、重要書類と思われる物が児童のすぐそばに置かれていた事も。スタッフは重要な話をしたくても、児童に筒抜けになりうる場所で、小声で手早く話すしか無く、スタッフ同士のコミュニケーションもゆっくりできない

等、既存の限られた空間でどのように対応したらよいか悩んでいるといった声も多く寄せられました。


■環境づくりに関する工夫・実践事例

アンケートを通じて寄せられた環境づくりに関するお悩みの中でも、今回は特に多く声が寄せられた4つのトピックから、私たちの運営するアフタースクール拠点の事例をいくつかご紹介します。

お悩み①

遊びや作業の動線が混線してしまうため、場所を十分に使えなかったり、活動同士が妨げになってしまったりすることが多い。子どもが好きな遊び・やりたいことを楽しめる環境が理想なのだが…

\解決のための一案/
遊びや活動ごとにコーナーとして分ける

工夫ポイント
遊びや活動の性質ごとにスペースを区切ることで混線を防ぎます。コーナーとして区切るだけでなく、コーナーに「こうさくラボ」や「リラックスコーナー」等といった名前を付けたり、その看板を作ったりすることで可視化され、子どもも大人もそのコーナーでなにができるのかがわかりやすくしています。

変化等のエピソード・実践してよかったこと
違う遊びをしている子ども同士が混線しなくなったことでトラブルが減るだけでなく、このコーナーでできることが子どもたちに浸透したことで、やりたいことを見つけやすくなったり、「今日は工作をやるんだ!」と自分で過ごし方を決める姿が見られるようになりました。
普通教室の2/3ほどの狭い部屋でも、遊びが混線せず、子どもが目的ややりたいことをもって、その時々で過ごしたいコーナーを選ぶことができています。

\解決のための一案/
子どもにとってわくわくする&手に取りやすい収納方法

工夫ポイント
活動・遊びをコーナーで区切るだけでなく、それぞれのコーナーを子どもにとってわくわくしたり、活動しやすくする工夫を取っています。
材料ごとに分類したり、どこに何が入っているかを可視化したりすることで手に取りやすくしています。また、子どもたちに人気な材料や道具、おもちゃを子どもの目線に合わせた場所に置くことも工夫の一つです。
コーナーの整備は、スタッフの中で担当を決めて、1日のやることの一つとして明確化し、備品や道具、おもちゃの状態のチェックや補充を行っています。

変化等のエピソード・実践してよかったこと
子どもたちがそのコーナーで楽しく夢中になって活動・遊べるようになっています。例えば工作コーナーは、工作をする子どもが増加し、子どもたちの作品も様々なものが誕生!きれいに整っている場所には子どもたちも使ったものをきちんと片付けるようになる等、そのコーナーを大事に使う姿も見られています。


お悩み②

学校のように机と椅子が並んでいて、座ってくつろぐ事ができない。くつろぎたい時に床に座ったり、時には寝ころがったり本を読んだりできる環境が理想だが…

\解決のための一案/
マットやラグでリラックスコーナーを!

工夫ポイント
マットやラグを敷くことでコーナーの区切りもわかりやすく、座って遊ぶ・過ごすコーナーであることが一目瞭然に。子どもたちにも浸透しやすくなるように、座って過ごす遊びと紐づけたり、ほかの遊びコーナーとの混線が少なくなるように端のスペースに設置したりする工夫を取っています。

変化等のエピソード・実践してよかったこと
遊びのスペースが広がりすぎてほかの遊びと混線してしやすいブロックあそびでは、マットやラグでの遊びに変えたことで、遊びや作品の幅が広がり、コーナーの内側で遊ぶ意識も生まれました。また、硬い机やフローリングではなく、柔らかいマットやラグにしたことで、ブロックの音の吸収にもつながっています。

\解決のための一案/
クッションやキャンプ椅子など柔らかい家具でリラックス!

工夫ポイント
クッション椅子やキャンプ椅子は木製のものとは違い、体に程よくフィットして落ち着きやすくなります。学校の椅子とは違う家具があることで、自由でリラックスした放課後らしい空間づくりにもつながっています。

変化等のエピソード・実践してよかったこと
静かに過ごす読書コーナーとこの柔らかい家具を組み合わせることで、子どもたちにこのコーナーでの過ごし方が浸透し、リラックスした過ごし方を楽しんでいる様子を見ることができています。また、気持ちのリセットとしてここに来る子どももいます。


お悩み③

子どもたちが片づけない、注意してもなかなか聞いてもらえない…

\解決のための一案/
道具や材料を置いてある棚とコーナーの位置・動線の工夫

工夫ポイント
活動スペースとそこで使う物を離さないことが工夫の一つです。例えば、工作コーナーのすぐ近くに、工作で使う材料や道具をしまっている棚を設置しています。子どもたちにとって、そのコーナーで過ごすこと・片づけることがスムーズにできるかどうかをポイントに環境づくりをおこなっています。

変化等のエピソード・実践してよかったこと
活動スペースと棚の動線が短いことで、子どもたちの集中が途切れにくく、ほかの遊びとの混線も防げるようになりました。遊んでいるときでも手に取りやすい場所に棚があることで、片づけへの意識も上がっている印象です。

\解決のための一案/
ものの住所を決めて子どもにとってわかりやすく可視化

工夫ポイント
道具やおもちゃ、材料などを収納している棚は、それぞれものの住所を決めて、文字や写真・イラストを使って、「どこ」に「何」があるのか、片づけるのかを分かりやすくしています。
同じ引き出しに複数の物を収納している場合は、引き出し内を小さなケース等で区切り、引き出しに何が入っているのかを可視化しています。
子どもたちだけでなく初めてのスタッフ等誰でもわかりやすい表示をすることを心がけています。

変化等のエピソード・実践してよかったこと
遊び終えたあとに片づけずそのままにしてしまっていたり、適当に片づけていたりした子どもたちも、ものの住所が明確になることで、片付ける子どもが増加!
また、おもちゃや道具が見つからずイライラしてしまったり、遊びに集中できなかったりする姿が減っています。
特に文字だけでは難しい入学したての1年生や海外ルーツの子どもたちにとっては、イラストや写真があることで片づけやすく、スタッフも声をかけやすくなっています。
子どもたちの過ごす場所だけでなく、スタッフの働くスペースでも実践して、物を探す時間を減少!初めて勤務するスタッフや慣れてないスタッフにとっても迷いや不安が最小限に抑えられ、勤務に集中ができています。


■事前アンケートでいただいた参加者の皆さんの工夫

勉強会参加者の皆さんに「環境づくりにおける工夫や取り組み」についてお聞きしたところ、たくさんのご回答をいただきましたので、一部をご紹介します。

同じような取り組みをされている方も多く、私たちとしても非常に励まされ、学びを多くいただきました。

ものの住所を決める&可視化

  • 道具やおもちゃのしまう場所を明確にし、片づけやすいようにしている

  • おもちゃを片づける場所にその写真を貼る

  • 子どもたちが片付けしやすいように収納場所の定位置管理(おもちゃ・本・文具類)

遊びや活動ごとにコーナーとして分ける

  • 活動をしっかり分け、子どもに『ここはこれをやるところだ!』と認識してもらう。さらにその場所での活動を最大限に活かせるスタッフを配置する

  • ゲーム専用スペースを導入したり、BGMをかけて落ち着きを促したりするようにした

  • 本の部屋の確保。猫部屋で猫と触れ合える。工作コーナーを作っている

  • 長机を島に分け、遊びや宿題で住み分けをするようにしている

  • 会議室をパーテーションで分けて、運動したい子と静かに遊びたい、または宿題をしたい子のエリア分けをしている

  • 一部のスペースに壁を作りリソーススペースを作った

  • ワンルームだが、天井にカーテンレールを取り付けてもらい、活動内容によって閉めたり開けたりして区切りをつけている。声は聞こえるが、視覚刺激が減る分、互いのやりたいことに集中できていると感じる

その他にも…

  • 体調不良の子どものための和室があり、普段は使っていなかったため、高学年の居場所として使った

  • 高学年の子たちも落ち着いて過ごせるように、高さの違う机を用意し、壁向きに座れるようにした。程よい距離感のあるスペースが確保できた

  • 端から端まで一直線に何もないと、一気に走ってしまうため互い違いにテーブルを配置した

  • 指導員の私物が子どもたちに触れられないように机を仕切りにして入れないようにしている


■最後に

既存の限られた空間の中で、子どもたち一人ひとりにとって居心地の良い環境をつくっていく方法は、それぞれの現場の状況や子どもたちの様子・成長に合わせて試行錯誤を繰り返していくものではないかと思います。そのような中でも、子どもたちが快適に過ごせるようにするための工夫の中には、共通している項目もいくつかあることが分かります。

今回ご紹介した工夫・実践事例はあくまで一例で試行錯誤の途中のものですが、子どもたちがやりたいことを楽しめる放課後の居場所づくりの一つのヒントになれば嬉しいです。

引き続き皆さんと共に、実践事例を交えながら学びを深めていけたらと思います。
次回もどうぞお楽しみに!

文:事業開発チーム/杉山

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