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幼児教育「数の学習③」

「感覚・イメージ・操作」

今日は、幼児教育者の方々と昼食をとりながら熱く語り合っていました。変化する教育界をにらみ、その基礎という、最も重要な部分を預かる者として、新たな展開が予想される幼児教育の未来を語ってきました。そして、この話し合いの中、新たな幼児教室の形が次第に見えてきました。外は本格的な雨模様でしたが、その上は真っ青な空が果てしなく続く青空です。幼児教育に新たな光が降り注ぐのも間近です。

 基礎の数指導と言ってどんな指導が思い浮かばれるでしょうか。「数える」でしょうか。それとも数字を見せて「いち」「に」「さん」と一緒に唱えさせるでしょうか。古典的なのは、お風呂で1から100まで数える事かも知れません。私達はよく「風呂場の算数」と言っていました。銭湯に行くと、親子で湯船に浸かり数えている光景が毎日のようにありました。親もかなり積極的に教えていましたが、最も大切な教えを行っていました。それは「先生」に対する尊敬です。いつの日か高学歴社会と呼ばれるようになり、大学進学率も上がりました。このことに比例し、先生に対する尊敬の念は次第に低くなってきました。学校に於いて「師弟関係の崩壊」とも言われ、子ども達は次第に我が儘になって来ました。

教育は「ICT化」の波を受け始めています。教育に効率化を望む声も数多く出始めてきました。たぶん、幼児教育は、一見こうしたテクノロジーとは無縁の所に位置しているかも知れません。Information Communication Technology と呼ばれる情報化社会の代名詞となる言葉ですが、幼児には無縁です。幼児教育は、最もアナログ的な教育だと言えます。幼児期でしかできない教育があります。それは、人が必要とする機能、つまり五感に代表される感覚の発達は幼児期に最も顕著な発達を遂げるからです。数指導に於いても、この感覚教育がとても大切になります。

 いくら教育にICT技術が高度になっても、対する子ども達が認識できなければ何の意味も持ちません。教育は技術、つまりテクノロジー優先ではないのです。

 幼児期の数学習、その第一歩は比較です。それも、量として最も解りやすい「大小比較」です。それは、立体であったり、面であったり、量として捉えやすい具体物の大小比較から始まります。実際に手にとらせてみます。あまりに大きければ手に持ちきれないほど、目で見て、触って、ことばで(おおきい!・小さい)実感します。身体に大小を経験させます。これが感覚教育です。この時に必要な指導法が「一言指導」です。同時に「大きい」「小さい」を指導しないことです。相対する要素を同時に指導すると、共に印象が半減され、どちらがどっちか戸惑います。指導する場合は、必ず一方に注視させます。「大きい」なら「大きい」を何度も復唱し認識させます。実際に触れること、操作してみること、すると、大きいというイメージがこうした感覚指導から理解出来てきます。

 幼児教育には、触れる事ができる学習は欠かせません。実際、手に取り、操作する。大小比較は、もう一つの量の世界である「重さ」にも関係してきます。大小比較が済むと多少比較へと一段階段を上がります。比べる対象が複数に変化してきます。個対個から複数の比較対象になり、ここで、大小比較で行う一対一対応の比較法が登場します。ここで、ことばとして「いち」「に」等が出てきます。この辺りからタイルが出てきます。ここではまだ「1のタイル」「2のタイル」と名前で区別をさせます。そして、目をつむってもらい、1のタイル・2のタイル・3のタイルを握って貰い、何のタイルか当てて貰います。感覚で大きさを感じ、タイルをイメージします。こうした具体的な量の理解がなければ、正しい数指導のステップは上がっていきません。幼児の数指導は取っても人間臭い指導になります。

 タイル指導では、こうした基礎ステップがあることから、幼児の基礎算数だけでなく、障がいを持たれたお子さんの数指導にも適していると言われています。

2014/9/1


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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