まじプロ2019 〜まじプロとは〜
NPO法人Curiosity(キュリオシティ)代表の小川です。
■「まじプロ」について
まじプロは『高校生向けの起業体験プログラム』です。
11〜2月に行われる約3ヶ月間のプログラムでは、イベントや販売などを企画・アイデア出し、準備、実行まで、全て高校生たち自身で行います。
2013年に活動を開始し、今年(2019年)で6年目を迎えました。
参加した高校生の数はこれまでに100名を超え、高校生を支える大学生・社会人のボランティアもこれまでに60名以上が参加しています。
■自分の想い・経験から企画を実行
これまでに参加した高校生たちが企画・実行したものの一例を挙げると、
・自分たちの高校の近隣にある商店や企業から広告費 を得て、女子高校生向けのフリーペーパーを制作して配布・東京を訪れた外国人旅行者向けにガイドツアーを開催
・入院している子どもたちが描いた絵を文房具やスマホケースのデザインに取り入れ、販売した
・留学経験のある高校生は得意の英語を活かして、小学生向けに英語の歌やダンスをするイベントを行った
・筝曲部、華道部に所属している高校生が同じグループになったときには、琴や華道、お茶などの日本文化を体験できるイベントを行った
など、それぞれの得意分野や経験、問題意識などによって様々な企画が実施されています。
■「百聞百見は一験にしかず」
この活動を始めた当初から、大切にしているキーワードがあります。
松下電器の創業者である松下幸之助氏が著書の中で記している「百聞百見は一験にしかず」という言葉です。
著書の中では、『塩の辛さは、いくら頭で考えたり、目で見てもわかるものではない』『体験を通してはじめて本質をつかみ、理解することができる』(一部抜粋)と記されています。
小学生からスマホを使い、聞いたり見たりすることはそれ以前の時代と比較すると容易にできるようになりました。
しかし、”塩の辛さ”のように、スマホで見て、聞くだけではわからないこともまだ沢山あります。
特に社会に出る前の若い世代が実際に生身の経験、体験することは、その後の人生を選んだり、価値観を広げたりする上でも、代えがたい価値があるものと考えています。
まじプロに参加した高校生に対して、閉講後に感想を聞くと、
「想像していたよりもずっと大変だった」
という話を毎回必ず耳にします。
もちろん、「やってよかった」というようなポジティブな声も沢山聞いています。
しかし、良くも悪くも当初の想像以上の経験となったのは、実際にやったからこそ得られた成果です。
自分の想定した通りにうまく行ったこと、うまく行かなかったこと。
普段の学校生活からほんの少し踏み出し、それを知ることこそ、まさに「百聞百見は一験にしかず」と言えるのだと思います。
■きっかけは自分自身の「挫折」から
私は中学・高校時代に学校の人間関係で悩み、居場所の無さを感じていました。さらにはちょうど同じ頃、家庭環境の問題もあり、それを親に相談することは出来なかったことを今でも覚えています。
また、大学時代の就活で苦労したことや社会人になってからの挫折など……
自分自身の苦しかった経験が、なにか誰かの役に立つといいな、と思ったことが、
今の活動をスタートし、続ける原動力になっています。
実際にそれらの経験が活かされ、私たちの「まじプロ」は、高校生・大学生・社会人が一緒に活動を行っており、大きな特徴の一つとなっています。
大学生・社会人は高校生の活動を支える「伴走者」として、高校生の活動を二人三脚でサポートしています。
■新たな人脈の形成
最近では、いわゆる「サードプレイス」や「ナナメの関係」と呼ばれる、学校でも家でもない、第三の場所の重要性が認識され、NPOや行政などもこうした課題に対して取り組む事例が増えてきました。
まじプロでは高校生と大学生・社会人がともに活動しています。参加している高校生は学校や住んでいる地域はバラバラ。大学生も専攻や学年が異なります。社会人も20代〜40代まで、人それぞれキャリアや人生経験も様々です。
これだけ多世代、多様な属性の人たちが一緒に活動行うことは、意外とあるようでないと思っています。
まじプロでは高校生が大学生に対して、進路や受験に関して真剣に相談をする場面をよく目にします。
大学生にとっても、高校生に対して自分のリアルな経験を伝えられる場であり、また自分自身の将来や就職に関係すことを社会人に相談できる貴重な機会でもあります。
お昼ご飯の時間帯には、伴走者の大学生や社会人が高校生と一緒にご飯を食べることもあります。
恋愛や趣味の話で盛り上がったり……プログラム中の時間とは打って変わって、リラックスした雰囲気に包まれます。
部活の先輩後輩でもなく、大学のオープンキャンパスでも就活のOB訪問でもなく、上下・利害関係なしにお互いちょっと離れた世代と関わる場も、まじプロにおいてとても大切な要素の一つだと考えています。
■活動を通して得るもの
今年度のボランティア募集では現時点(7/11)で既に30名近い方にご応募いただいています。
特に社会人の参加の理由を見てみると、
「プロジェクトに興味を持った」
「学生のキャリア形成に興味があった」
など、人それぞれですが、共通しているのは
「誰かの役に立ちたい」
という点です。
私自身がこの活動をはじめ、続けている原動力がそうであるように、一人ひとりの経験や気づき、想いを次の世代に伝え、より良い未来にしていきたいという大きな想いは一致しているのだと思います。
やや蛇足にはなりますが、以前参加された社会人ボランティアの方が高校生の企画にアドバイスをしている際、こんな話をしていました。
**「この企画で誰を幸せにするのか?」 **
実際に仕事をしていると、つい仕事や働くことの本質をつい見失いがちです。
しかし、「正解のない時代」でも、このことはそう簡単には変わらないように思います。
正解のない問いにはなかなか大人でも答えられないものです。私もすぐに答えられる自信がありません。
仮に答えが出ても、その答えが変わったり、途中で迷ったりするかもしれません。でも、そもそも答えがないのですから、変わっても、迷っても、それは他人から否定されるものではありません。
**大切なのは、考えを押し付けたり否定したりするのではなく、自分なりの答えを探しつづけられるかどうかではないでしょうか。 **
■最後に
人脈づくりや自己実現など、社会人が参加するメリットは様々です。
自分がなにか教える立場だと思って参加してみたら、意外と高校生や大学生、
参加している社会人から教えられること、気づくことも少なくなかった、
というのもよく聞かれる話です。
それぞれの年齢や立場を超え、お互いに敬意を払って活動に望むことができれば、自分自身への活動の対価になり得ると思いますし、より良い活動になるものと確信しています。
少しでも興味を抱いた方はご連絡お待ちしています!
参考
10代の「生きづらさ」は、どこから来るのか~「思春期の実態把握調査」結果を読む【前編】