2017/5/14 モナコ公国へ潜入...?
イタリアからフランスの国境をドギマギしながら超え、(その時の越境体験はこちら)ようやく目的地のモナコに着いたものの、目当てのカフェを楽しむような時間がとっくに過ぎていて闇夜に退散した我々。その夜は、とにかく車を西へ西へと走らせた。
友人のいるマルセイユまで行こうか、けど今晩中にはちょっと難しいぜと気付き始めた5/13の夜。
フランス情報全くなしの状態で、とりあえず着いたのはニースの街。
有名だから、とりあえず寄っとけ、それにもう晩御飯を逃すとまずいような時間だから、とりあえずなんか食おう。そうだ、ニース風サラダって言うけど現地でほんとにあるのかしら?というノリであった。
なんとも場当たり。
いつもことながら、駐車の仕方に迷い、これでいいのかと相方と小競り合いになりながら、車から降りニースの街を散策する。
ニースの中心街らしきところへ到着。
すっかり夜の街は、オレンジの街灯が石造の建造物と広い遊歩道をぬらりと照らしていた。人々は思い思いに夜の時間を楽しんでいる。建物は一つ一つが大きくゆったりとしていて、広々と海風がよく通りそうな、そんな街。
とにかく腹ごしらえを、と適当に入った、いかにも観光地のブラッスリー。イタリアだったらこういう観光地プライスで大したことない店の嗅ぎ分けは付くと勝手な自負があるが、やはり何も知らない観光客になるとこういうとこに吸い込まれてしまうもんだなぁ、この仕組みを作ってしまっている店は勝ちだなぁなど、商売のことを勝手に褒める。誰でもそれが出来たら苦労しないもんだ。商売って難しい。
サーブしてくれたのは、ハスキーボイスにそばかす、ボブの金髪癖っ毛のいかにもちょっと生意気けど憎めない、といった感じのフレンチガール。今にもステップをふみ、軽快に踊り出しそうな、そんな役者のような立居振る舞いの彼女だった。まるでフランス映画の登場人物みたい、と勝手に感動する、フランス初心者。
もしかしたらそばかすは無かったかもしれないが、勝手な刷り込みイメージというもんだ。
そして本当にあるのかな、と探してみたら、ありましたニース風サラダ。もちろんそれを頼みましたよ。
味はあんまり覚えてないけど、野菜のイキがそんなに良くなく、「やっぱり観光客の店だなぁ」と思った記憶がある。まあ、そばかすガールが印象に残っていたから、それで良しとしよう。そういう観光地の洗礼も、たまに味わっておくべきだ。
腹の心配を解消し、しばし散策を、、、と思ったけど、我々はもう少し進むことにした。運転手がこうなったら行くとこまで連れて行ってもらおう。
といっても結局二人とも疲れていたし、それによりイライラし始めたので、もう今日は寝ようとなった。といっても急に宿を取るのも億劫で、その日は高速道路のサービスエリアで車中泊をした。無計画のなせる技。こういうのも悪くない。なんせお金がかからないし。
あくる日、サービスエリアでコーヒーを飲み、歯を磨き、そんなにさっぱりした気分になれずに向かったのはカンヌ。
これもまた安易な選択。カンヌのレッドカーペットは常設されているのか、いや、そんなわけないだろうけど、空気を吸ってみたいよね、というほんとに軽いノリ。
天気のいいその午前中、晴れてカンヌに到着。昨日のニースより小洒落た街がぎゅっと詰まった雰囲気。青空マルシェがあり、覗いてみた。イタリアのそれと良く似ていて、マダムが一生懸命物色している感じもまた似ている。乙女はいつだって、どこだって、お買い物が好きなのだ。
腹が減っていたので、フランスのカフェで食事をするというミッションを敢行してみることにした。フランスといえばやっぱり…フランスパンのサンドかな、と地元民に紛れてオープンカフェに陣取ってみた。
これが、美味だった。
朝日を浴びながらフランスパンを頬張る、そしてカフェオレを喉に流し込む、、、一気におしゃれな気になるフランス初心者。ここはバゲットでなく、フランスパンと呼びたい。なぜならフランスにいるんだから。フランス人にバカにされそうだけど、構わない。
ひとしきり腹を満たし、また少し散策した。
観光客や地元民が往来するエリアを抜け、海側に向かうと、どでかい施設が目立つ。もしかしてここら辺でカンヌ映画祭が?絶対そうだよね、と勝手にミーハーになるフランス初心者。レッドカーペットも、もしかしたら見つかるかも、とはしゃいでみたけど、結局見つからなかった。けど我々はカンヌの空気を吸ったぞ、と満足して街を後にした。
なぜなら、次はモナコでカフェというミッションがあるから。
この時、もうすでにマルセイユ行きは諦めていた。
今日イタリアに帰るとすると、マルセイユまで行くのは割と遠いということに気がついた。今考えると、なかなか無謀な目論見だったが、やりかねないのが我々だ。
ということで、快晴の中、昨晩の宿題を完了するためにモナコへ向かう。
「モナコでカフェ」
このミッションに我々は今、まっしぐらだ。
カンヌからモナコは、日中の明るさも合間ってか、行きより帰りは短く感じるあれか、割と近かった。
いよいよ、モナコ。
また、カーレースゲームの舞台のような入り組んだ長いトンネルを通過して、街の中心に出る。もうこれは慣れたぞ。
と、余裕の思いでトンネルを抜け、外の明かりを感じたのも束の間、、、、なんだか街の様子がおかしい。
トンネルの出口に、人だかりが出来ていて皆、本気のカメラを構えている。まるで報道陣がセレブの外出を見計らって家の外に殺到する、あのよくテレビで見るような格好だ。
え?え?我々なんかした?ん?ん?????
まさしく目をパチクリして、唐突の光景に戸惑う我々。
ちょっと明るさに目が慣れて周りを見渡すと、トンネルの出口以外にもカメラのパパラッチたちがありとあらゆるところにいる。そして、場所的に、何やら車を待ち構えているようだ。よくみると、素人目にもわかる、ギラギラした高級車がズラズラと入場している。そう、ここはモナコ公国であるが、入国した、というより、入場した、と行った方がピッタリ来る。
街全体、いや、国全体が、何かの会場のようだ。
傷一つつけてしまったら何百万とかかりそうな、ツルリとした高級車に乗った煌びやかなセレブリティたちの群れの中、一般人がそこら辺にあるような埃まみれのレンタカーで紛れ込んでしまったような格好だ。
なんだか、よくわからんが、まずい流れに飲まれてしまったぞ、とだんだん焦る我ら。
とりあえず、この車の流れから脱出を図りたいと、駐車場を探す。
こんな高級車に揉まれ挟まれ、居た堪れない気分だ。なんせ、一般車らしき仲間が見当たらない。
そう、我々の目的は、モナコで茶をしばくこと、その目的を達成するぞ、と使命を思い出し、息継ぎをしようともがく。
そう、いまできることは駐車場を見つけて、車を停めて、カフェに入ること。車から降りてさえ仕舞えば、安心だ。我々の目はもはや駐車場マークを察知するためだけに据え付けられている。
あった!駐車場だ!
前方に駐車場の看板を発見。
なんか地下に入るっぽいけど、とにかくここしかなさそうだからと藁にも縋る思いで近づく。
入り口の傾斜に差し掛かったところで、ある電子掲示板に気づく。
『Complet』
んん?コンプレ?
なんかそういえば、ガレット屋さんでそんなメニューがあったな、意味は確か完成された….イタリア語のにも似てるな…それは完了という意味…….
それが駐車場の入り口に掲示されているということは……
「やばい、満車だ!!!」とゲートギリギリに叫ぶ私。
秒の一瞬でぐるぐると回る思考回路、凄まじいシナプスの伝達スピードだった。
「おいおい待てよ!急に無理だよ!!」と叫ぶ運転手。
Uターン可能域ギリギリで、狭い通路を運転手の腕あってか、なんとかゲートのポールに触れずに戻ることができたが、心臓がバクバクしてきた。
そして、急に後進した我らの車に、通行人が思いっきり嫌な顔をした。
昨日のマントンの「どうぞお先に⭐︎」とは天と地の差。
いや、うちらが悪いんだけどさ。
とにかく、また元の流れに戻った我々。高級車は続くよどこまでも。
なんだか嫌ぁな予感。
この時の心境は、選ばれたものしか泳ぐことができない流れるプールが存在し、場違いにもそこに迷い込んでしまい、もつれそうに、溺れそうになりながらなんとかしがみ付く岸を見つけたい、そんなものだった。
これはやばいぞ。
ただでさえ勝手がわからんのに、道は狭いし、高級車ばかりだし、かすりでもしたら一生かかって返済しないといけない額を請求されるのでは….。
やばい。
とにもかくにも、元来た入り口を目指す。
もうカフェなんてミッションは、遠くに置き去りになり霞んでいる。
息をするのも躊躇うくらい、助手席で出来ないナビをするために目を凝らす。
運転手も、かなり冷や汗もので緊張感とイライラがピークに来ている。
とにかく、無事でここから出たい。
一言発するにも、命取り。
よし、あのトンネル入り口に戻ってきたぞ!
と安堵したのも一瞬。
トンネルの中の道は複雑に交差し、また道がわからなくなり、一生ここに埋まり続けるのでは…….という窒息しそうな状況。
早く、光を、、、、、
あと少しでどうにかなってしまうのでは、というところで、なんとかもはや見慣れたフランスの国道に出た。
シャバだ。
助かった。
んん?????
なんか逆走してる……??????
危ないっつ!!!!!!!!!!!!
危機一髪。
あまりにもテンパったので、モナコのダンジョンを抜けて安心しきったのか、
つい日本式の左車線になっていた。
なんとか気付き、元の車線へ。
文字通り、命辛辛逃げ切ってきた、といった我ら。
やっと息ができた!!!!!
まさに溺れていたところ、引き上げられ、息を吹き返したようなぶはぁーーーっと感を噛み締める我々。
思わず、ハイタッチした。
今思うと、なぜあんなに焦ったのかわからない。
多分、とにかく別次元の世界に圧倒されたんだろう。
あそこは、お金の匂いで街が成り立っていた。
それが、徒歩だったら「わぁーすごい!!!」とはしゃげたのかもしれないが、高級車に挟まれ、狭小な道に放り出され、何もわからず、ただただ事故ってお金に困りたくはない、と焦っていたのかもしれない。
しがない一般市民の弱いことよ。
本当に、無事に帰って来れてよかった。
胸を撫で下ろす、その感覚を身を持って体感した我々であった。
そして、謎の達成感があった。我々は帰還した。
「モナコでカフェをする」
達成できなかったこのミッションは、今後とも我々の一つの果たすべき事項になっている。
買付日記はこちらにまとめています。と言っても、ほぼ珍道中の様子レポートですが。。。