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2019/08/23 陶器の街カルタジローネと、その文化
すったもんだの大波乱があった夜の次の日。
天気は気持ちの良い青い晴れだった。
「我々は、大事件から起死回生した。」
そんな気持ちもあってか、スカッとして、少し冷やついた空気が肌に触れる朝。
その大事件記事はこちら。
ハラハラが止まらない。
昨日はお世話になったと、宿主のステファノに気持ちを表したくて、去り際にお土産を置いてくことにした。あられと、日本酒と、手紙を。
このあられは日本人でもなんじゃこりゃ、だけど、果たして、ステファノは食べれたかな?
朝ご飯は、Air B&Bがおすすめしているバールにて。どっちだか覚えてないけど、だいたいこういう時、朝ご飯無料みたいになっていることが多い。
この場合はどっちだったか、覚えてないけど。
お金のことなど、そんなことはどうでもよく、とにかく気持ちのいい朝。
テラス席で甘そうな大きめのクリーム入りのパンと、イタリア人的には朝専用のカプチーノをかっこむ。
日本では、いつでも好きな時にカプチーノを飲むけど、大抵、イタリア人は「それは朝飲むもの」と言う。
日中は、事あるごとにエスプレッソをドライブスルーかのようにさっと胃に入れるのが基本スタイルの彼ら。どんだけカフェイン摂るんだよ、と思っていたけど、イタリアと付き合うようになり、その気持ちがわかるようになった。
日本にいると、なかなかその習慣を付けたくてもお店がなくて、寂しいなと思う。
けれども、最近自分の店の斜向かいのイタリア料理屋と仲良くなり、オーナーがイタリア人なので、私の顔を見れば「Vuoi caffe?」と誘ってくれるようになった。「いつでも、君は好きに飲んで」と。スタッフにも、この子にはフリーね。と言ってくれてた。
めちゃくちゃ嬉しいやないか。
商売をしていると、対価でお金をもらうのがまぁ当たり前だと思うけど、エスプレッソは彼らの文化であるので、それを分かち合える人間は日本には少ないから、お金は関係なく、その私とのひと時を大事にしてくれるのかな、と思う今日この頃。
彼らの文化は深い。
砂糖まで入れてくれる
コロナがもう少し落ち着いたら、自分の店でも、そういうひとときを提供したいな、と尚更思うようになった。
と、かなり脱線したが、舞台はシチリアの陶器のまち、カルタジローネである。
甘いパンを大量に食べる丸々とした老夫婦を見送り、食後の散策をした。
さて、イタリアに来て数日経ち、色々冒険したが、やっと買付らしいことをしようじゃないか。
私の旅自体も大体こんなかんじで脱線がもはやレールである。
さすが、陶器の街。
街の中心には大階段があり、その側面には全て陶器のタイルがびっしり貼られている。
その頂上には、教会があり、レリーフが。これも陶器。
確か、日本の駅の階段側面に広告を貼るようになったのは大阪の鉄道会社がはじめてのことだったが、その鉄道会社もびっくりのびっしりようだ。
なにより、美しい。
それに尽きる。
猫様も、美しい模様を纏っているようだ。
いい街に住んでるね。
この階段脇に、ズラーっと陶器屋が並んでいる。
同じようで、ちょっとずつやっぱり個性があり、自分の好き嫌いが、精査される。
何軒か覗いてみた。
だだっ広い空間に、大小さまざまなお皿や坪、シチリアのシンボルのシュールなメデューサに足が三本生えたトリナクリアや、これもまた恐ろしい伝説のあるテスタディモロという、ムーア人男性とシチリア人女性カップルの頭が鉢になったものやらが並んでいる店。
そのお話については、また後ほど触れる。
…かもしれない。
彼らの頭から、植物が生える
地下からロフトのような二階まで、びっしり土っぽい作品が並んでいて、工芸が本当に好きなんだな〜というような店。
エレガンテで、高級ホテルのエントランスやら調度品で選ばれそうな店。
日本で知っているところで言うと、沖縄のやちむん村やらその一帯の陶器屋さんの集まりといったところか。
まち丸ごとなので、それよりも、だいぶ規模は大きいわけだが。
そんな中から、なんだか懐かしいような、そんな気分になれるお店を発見した。
店自体は、他店と比べてとってもこぢんまりとしていて、大人5人もいればぎゅうぎゅうになりそうな店内に、所狭しとお皿やらオブジェやらが並んでいる。
懐かしいと思った要因は、この絵付けの感じか。
青と黄色が基調になり、あたたかみのある風合いに、小さい頃家で見てたような、なんとも不思議な「おかえり」と言われているような、そんなものを感じとった。
なぜだろう。
色々見たけど、ここだ、とピンと来たのでもうここで買い付けることにした。
ご主人は、調子の良いおじいちゃん、その奥さんはおちゃめなおばあちゃん、そして息子たちやらで家族経営のようだ。
「うちの陶器がここの階段の一部にあって、雑誌に載っているんだよ」と店主のおじいちゃんが自慢げに教えてくれた。
そして、ふんふんと物色をした。
色々気になったけど、日本の家庭で使いやすそうなサイズ感のものを、数点と、シチリアでよく、見た、型抜きの型のような小さなお皿を買い付けた。
どうやらこの型は、もともとお祭りの時などに、柑橘を煮詰めたものを流し固めて食べていた風習のものらしい。
シチリア到着からずっと、いろんな街でそれぞれ個性が違ったその型を見ていて、これはシチリアにしかないものなのかな、と、アンテナを張っていた。
私が買い付けたのはイタリアらしいオリーブや、教会の聖杯、魚、そしてトリナクリア。
トリナクリアはシュールでなかなか好きな人は少ないかもしれないから、自分用にした。
こう言うのん、好きだわ〜
そして、ひとしきり買ったらなんと「工房も見ていかない?」とのお誘い。
乗ります乗ります。
道案内は、まだ10歳くらいの可愛らしい女の子。大事な役目を任命され、少し誇らしげに先導してくれた。
こちらがその工房。彼は、ここの息子で先導者の女の子の父。
思い思いに仕事している職人さんの雰囲気が、そのまま作品に反映されているよう。
だから、ここの商品がいいと思ったのかもしれない。
ひとしきり、説明を聞いた。
私は単語はわかっても、陶芸のことはわかっていない。相方は、実は元々陶芸家だったので、通訳すると「なるほどーそういうことね〜!日本のやり方とかわらんなぁ」と言っていた。
そして、シチリアのこの独特の街やもののデザインは、やはり、いろんな文化を融合してきたからだ、ということを聞いた。
なので、やっぱり陶器にもそれが反映されているんだ、と。
アラブ、スペイン、イタリア、ギリシャ、色んな国がやってきて、荒らさせたり、統治されたり、さまざまな歴史があり、今があり、この独特の文化が出来た。かいつまんで言えることではないけど、それを全て経て、自分たちの文化として誇りに思っている。
それは、シチリアだけでなく、フィレンツェでもそう。
フィレンツェの場合は東方貿易の影響を受けた紋様があり、それを箔置きしたトレイの装飾として取り入れている。当店では、それのトレイに惚れ込み開店当時からずっとおすすめしている。
ある時「こんなエジプトっぽいのじゃなくて、イタリアぽいの欲しいんだけど?」とお客さんに言われ、なんとも乱暴な、、というかあなたの思うイタリアっぽいてどれですか?と思ったけど、そう感じるのも無理ないし、それは自然なことと思い、東方貿易の説明もした。あんまり響いてなかったけど。
文化は、ひとことでは説明できないし、ついつい〇〇ぽい、と自分も言いがちだけど、それぞれの文化にリスペクトするならば、気をつけないといけないなぁ〜と思った。
イタリアの、いや、ここではシチリアの彼らのえもいわぬ懐の深さは、まだまだ掘り甲斐がありそうだ。
大階段を登り切った光景
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