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しっぽのある日常

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愛犬の犬生の日記
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#家族

そらまめ

そらまめ

「そらまめかぁ……」

 これが最初の印象だった。

 知り合いのおばさんから、

「シーズーの子犬、いたよ」

と、写真が送られていた。

 約二ヶ月前まで、同じシーズーを飼っていたのだが、そのコはまんまる顔で誰が見ても正統派のザ・シーズーだった。

 なので、送られてきた写真に写るこのコの容姿がまさにそらまめだったので、あの呟きになったのだ。

「う〜ん、そらまめかぁ……」

とかいいつつも、

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はやくお家に連れて行け

はやくお家に連れて行け

 ななが入院中、毎日お見舞いに行っていた。

 手術当日以外は、必ず抱っこしてひとときを過ごしていた。

 ななは、ぎゅっと腕をつかんで離さない。

 毎回、ゲージに戻すのが忍びないほどだ。

 いっそ、泊まり込みができるなら、退院まで一緒にいたいくらいだ。

 来るときは、ななの甘えた鳴き声が聞こえてきたが、病院を出るときは、ななの寂しそうな鳴き声が聞こえてきた。

 病院に置いていかれるから、

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違和感

違和感

 腫瘍は取り除き、再び一週間の入院を強いられることになった。

 今回は、なんだか変な感じがした。

 手術後のお見舞いのときには、後ろ足に巻かれていなかった包帯が、翌日のお見舞いには巻かれていた。 

「毛包虫で指の間が割れていたので、縫合した」

との説明だった。

 ときどき、そんな症状はあったが自然治癒していた。

 大病をしたから免疫力が低下してるせいかとも思ったが、なんとも歯切れが悪か

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集大成

集大成

 一番初めに迎えたコは、マルチーズ。

 名前は、まるちゃん。男の子だ。

 超未熟児で、成犬になっても片手に乗るくらいの小ささだった。

 老衰だったが、寝静まった時間帯にひっそりと死んでしまい、たった八年の寿命だった。

 獣医いわく、

「よく八年も生きたね」

 だった。

 数年後、家族がシー・ズーを飼いたいといい、ブリーダーさんから迎え入れたコの名前は、ぴーちゃん。男の子だ。

 生後

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つまんない……

つまんない……

 おこちゃまだった頃のななは、放置プレイが嫌いだ。

 家族がドラマを真剣に見だすと、途端にサークルのプラスチック部分をわざと大きな音をたてて掘りはじめる。

 「な〜な、やめて」

といって、素直に止めるはずもない。

 チラッと家族を横目で見る。

 家族の視線がテレビに集中する。

 再び、大きな音をたてて掘る。

 そして、チラッと家族を横目で見る。

 声をかけられないと、不貞腐れて、私

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血ぃタレと放置プレイ

血ぃタレと放置プレイ

 ななが我が家に来て一ヶ月くらい経った頃。

 抱っこしようとして、手を噛まれたことがあった。

 親指の付け根から血が出るほどの噛み傷。

 これは今のうちに教えなければと、このとき初めて真剣に怒った記憶がある。

 まず、輪っかにした指でマズルと口が開かないようにし、ダメだと言った後は、しばらくななに反応しないように家族にも協力してもらった。

 家族の眼の前をウロウロしても、誰も反応してくれ

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