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デイヴィッド・チャーマーズ『Reality +』「第1章 これは実在する世界なのか?」サマリー
バーチャルリアリティの哲学的問題についてデイヴィッド・チャーマーズの最新刊『Reality +』が興味深かったのでKindleで入手して斜め読みしたところで、目次と小見出しのみの私訳を以前に掲載しました。
少しずつ精読を始めていますので、一章ずつサマリーを掲載していきます。
「第1章 これは実在する世界なのか?」
三つのエピソード:胡蝶の夢・ナラダの変身・プラトンの洞窟の比喩
「これは実在の人生なのか?、それともこれは単なるファンタジーなのか?」という問いを考える上で古くから取り上げられてきた三つのエピソードであり、しかもバーチャルリアリティを考える上で最適なガイダンスでもある
<参考資料>プラトンの洞窟の比喩を説明する動画
洞窟の比喩においては、価値についての深い問いを促す。つまり、洞窟の内側で幻影を見る人生を送るのか、それとも洞窟の外に出て善のイデアを直視する人生を送るのか。プラトンは当然後者である。
これをバーチャルリアリティに敷衍すると、現代的に深刻な問いを突き付けられる。つまり、私たちはバーチャルリアリティの中で人生を送るのか、それともその外で人生を送るのか。
これら三つのエピソードは、それぞれ知識・リアリティ・価値の問いを突き付ける。
胡蝶の夢は、私たちがバーチャルリアリティの中にいることをどのようにして知ることができるのかという問いを突き付ける。(認識論:3~5章)
ナラダの変身は、バーチャル世界はリアルなのかという問いを突き付ける。(形而上学:6~16章)
そして、プラトンの洞窟の比喩は、私たちはバーチャル世界の中で善く生きることができるのかという問いを突き付ける(価値論:第17~19章)
更に詳しく見ると6つの問いに分けることができる。
1.精神の問い:バーチャル世界における精神の場所はどこか?
2.神への問い:私たちがシミュレーションの中にいるとすれば神は存在するのか?
3.倫理の問い:バーチャル世界では私たちはいかに行動すべきか?
4.政治の問い:私たちはどのようにバーチャル社会を構築すべきか?
5.科学の問い:シミュレーション仮説は科学的な仮説なのか?
6.言語の問い:バーチャル世界における言語の意味とは何か?
本書では、これらの問いに答えるよう試みる。一般的に哲学は問いを得意とするが、答えることが苦手である。稀に適切に答えられたとしても、一つの科学の分野としてスピンオフするのである。