平岡希望

毎月刊行中の『平岡手帖』をはじめ、展示・舞台・イベントなど、見聞きしたことについて文章を書いています。詳しくは、固定記事をご覧ください。

平岡希望

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マガジン

  • 春分・秋分のパフォーマンスイベント『Equinox』

  • 『平岡手帖』各号サンプル

    毎月見た展示に私事や連想を絡めてエッセイ・小説風にまとめた『平岡手帖』、その各号サンプルです。

  • 『平岡手帖』クラウドファンディング

  • Durational Performance 記録文

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活動報告 (2024年10月17日現在)

紙媒体①『平岡手帖』  企画: 平岡手帖制作委員会、ハンマー出版、額縁工房片隅。2024年4月にクラウドファンディング、同年5月より毎月刊行 (詳細については、以下をご覧ください)。「アートブック小祭」(2024年8月23~25日。赤木遥 個展「なくなる場、なくなった場、場、場と、バカンスする。八月。覚えている?」と同時開催@幾何 う ) に参加。  クラウドファンディングに際して寄せていただいた応援コメントについては、以下をご覧ください。  『2024年4月号』~『

    • 『私たちは猫のように集い、しばしを共にし、また散っていった ~「Equinox - Same but different 2024 秋分の日」に寄せて』

      薄雲の切れ間から注ぐ、仄かに黄色がかった光に染められた水面は東京湾なのだろうか。目の前を横切る、水平線のような柵で隔てられたこちら側は青海南ふ頭公園で、 「この前はキリンみたいだったんですよ。」 と、美秋 Meerkatさんが指差した大型クレーンは、公園と隣り合う青海コンテナ埠頭にあった。“キリン”は、今やその首を水平にまで下げてコンテナを運んでおり、その金属音に、切れ切れのラジオのような、あるいは水面に雫が落ちるような音を滑り込ませているのがムラカミロキさんだった。彼は

      • 「Equinox 2023 秋」に寄せて(2023年12月執筆)

        春分の日も、秋分の日も、特にこれまで意識したことはなかったけれど今年は違った、というのもその二日間にはSame But Different(Equinox)というパフォーマンスイベントが開催されていたからで、私はたまたま前橋で出会った村田峰紀さんから教えてもらって、春分の日の回を見に行った。 春会場は東京北区の岩淵水門で、自宅から近いので散歩の心持ちで行った、その日は五分咲き、桜は満開にはほど遠かったが、その後の天気を知っている今からすると絶好のお花見日和で、秋分の日の藝大

        • 【サンプル】『平岡手帖2024年7月号』

          『平岡手帖』の企画詳細については、以下をご覧ください。 『平岡手帖 2024年4月号』~『2025年3月号』の定期購読については、以下より随時募集中です。よろしくお願いいたします。 ーーーーー 24日 “新ナミイタ” を訪れる日は、しかし意外と早くやって来た。鶴川駅近くのカフェ、キッチンカーとウッドデッキが目印のそこに到着すると既に朝田さんがいて、栗原さんもすぐに車で向かいに来てくれる。15~20分くらいだったろうか、蛇行した急な坂道を登り切った先は、それでもまだ裾野と

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        活動報告 (2024年10月17日現在)

        マガジン

        • 春分・秋分のパフォーマンスイベント『Equinox』
          3本
        • 『平岡手帖』各号サンプル
          4本
        • 『平岡手帖』クラウドファンディング
          32本
        • Durational Performance 記録文
          4本

        記事

          【サンプル】『平岡手帖2024年6月号』

          『平岡手帖』の企画詳細については、以下をご覧ください。 『平岡手帖 2024年4月号』~『2025年3月号』の定期購読については、以下より随時募集中です。よろしくお願いいたします。 ーーーーー    我が家では、ダイニングテーブルの各辺に椅子を一脚ずつ置いていて、母は窓辺、私はキッチンを背にした母の真正面、そして“お誕生日席”の父は私の左側が定位置だ。最近では、『平岡手帖』のカバー折りや発送準備の作業場でもある。 28日     一段高くなった奥にはテーブルが設えられ

          【サンプル】『平岡手帖2024年6月号』

          『みずから回る輪【第2部】-「DPPT workshop vol.3 Performance by 北山聖子+山岡さ希子」に寄せて』

          山岡さ希子さんがチョークで「」を引いている。しかしそれは黒い壁ではなく木製の仮設壁の表面で、「往復する拳 vol.2」と題された今回も、ふたつのテーブルの間で石をひたすら運び続けていた (前回については『みずから回る輪【第1部】』を参照)。しかし、それらテーブル間の距離が片道7、8歩に伸びている (前回は5、6歩だった) のは、ここが同じ「PARA神保町 2F」でありながら空間の使い方が違うからだ、今回は前回よりも2倍近く広い。 それも、PARAが「美学校」とビル2階のワンフ

          『みずから回る輪【第2部】-「DPPT workshop vol.3 Performance by 北山聖子+山岡さ希子」に寄せて』

          『みずから回る輪【第1部】―「DPPT workshop vol.2 Performance by 山岡さ希子《往復する拳 Fists going back and forth》」に寄せて』

          窓がL字に伸びている。 その “L” の角には、細く長い、音叉の先のような脚を2対持ったスツールが3組、座面同士を合わせた形で寄せられていて木立のようだ。傍らの、カートに積まれたスタッキングチェアの脚部が銀光りする “Z” の川みたいで、左の窓辺にも、背後の壁沿いにも、「PARA神保町 2F」の備品が置かれている。 「“倉庫っぽい” 雰囲気を残したい」という、山岡さ希子さんの意向により、今回は備品を片付けたり、あるいは可動壁で隠したりはしなかった。しかし、ではそのままか、と問

          『みずから回る輪【第1部】―「DPPT workshop vol.2 Performance by 山岡さ希子《往復する拳 Fists going back and forth》」に寄せて』

          【サンプル】『平岡手帖2024年5月号』

          『平岡手帖 2024年4月号』~『2025年3月号』の定期購読については、以下より随時募集中です。よろしくお願いいたします。 ーーーーー     「真似をするうちに、自分の言葉になってゆく。」という一節は、5月2日、保坂和志さんの公式SNSに投稿されたものだが、その5日前には山下澄人さんとの対談があった。その時、私の左前に座った人がおもむろに手を挙げて、どうやら小説家志望の学生さんだったらしい。もちろん、保坂さんと山下さんはその場でも回答していたが、冒頭の言葉は、その質問

          【サンプル】『平岡手帖2024年5月号』

          【サンプル】『平岡手帖 2024年4月号』

          『平岡手帖 2024年4月号』~『2025年3月号』の定期購読については、以下より随時募集中です。よろしくお願いいたします。 ーーーーー 本文     4月25日。こんなに早く再会できると思わなかった齋藤春佳さんの絵(“初対面” は3月6日だし、その11日後にも見ている)の、左手前へとなびいている桜色のカーテンに手招きされる心地で【Up & Coming】へ入る。すると奥の壁には、張小船(Boat ZHANG)さんの《自殺した作家の目、ベビーのスマイル》が投影されていて

          【サンプル】『平岡手帖 2024年4月号』

          『山河に遊ぶ ― 玉川上水46億年を歩く× DPPT 「取水口付近でパフォーマンスをする」および北山聖子さん《太陽に輪ゴムを打つ》について ― 』

          第一部「玉川上水46億年を歩く× DPPT 『取水口付近でパフォーマンスをする』」  「DPPT (Durational Performance Project Tokyo) 」では、デュレーショナルパフォーマンス (Durational Performance, 以下DPと表記) という、長時間にわたって同じ動作を反復したり、あるいはひとつの行為を引き延ばし続けたりするが故に、身体的・精神的負荷のかかる(だからこそ、Endurance Performance とも呼ばれる

          『山河に遊ぶ ― 玉川上水46億年を歩く× DPPT 「取水口付近でパフォーマンスをする」および北山聖子さん《太陽に輪ゴムを打つ》について ― 』

          「うみおとす手、すくいあげる手」 【Durational Performance Project Tokyo (DPPT) ワークショップvol.1 石田高大さん《6つのサイコロ》について】

          以前、展示で訪れた時には、腰高よりも下がオレンジ、上がレモンイエローに塗り分けられていた【PARA神保町 2F】の壁は、いつからかマットな黒一色になっており、その手前に、一本足で、天板の四角いテーブルを置いたのが、『Durational Performance Project Tokyo (DPPT) ワークショップ vol.1』のプレゼンターである石田高大さんだった。 テーブル向かって左手には、愛全地蔵通りに面した窓があって(すりガラスで8枚、すなわち4対横並びになっている

          「うみおとす手、すくいあげる手」 【Durational Performance Project Tokyo (DPPT) ワークショップvol.1 石田高大さん《6つのサイコロ》について】

          【遅いご報告】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング)

          あっという間に2日が経とうとしていますが、『平岡手帖』クラウドファンディングでは、164名の方々より、目標を大きく上回る1,966,055円のご支援を賜りました。作品をご提供くださったり、コメントを寄せてくださったりした協力者の方々を合わせれば、200名を超える方々から様々な形でお力を頂いたということで、この度はありがとうございました。厚く御礼申し上げます。 期間中は、手帖を押し付けたり、突然ご連絡をしたり…という不躾な形でお願いして回りましたが、その際に、どなたもあたたか

          【遅いご報告】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング)

          【『手帖』と手“帳”(30)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 30日目)

          特にここ数日は、クラウドファンディングの“伸び”に一喜一憂してしまって、肝心の文章を書くエネルギーが削がれる…!(なんて言いつつ、展示を見ることにはまったく影響がない)ということでなるべくチェックしないようにしていたが、それでも動向を何となく追っていたのは、つぶさに確認している父が、「〇人増えて○○%になったよ!」と伝えてくるからだ。4月はずっとこの調子だったので、始まった当初はうっとうしいばかりだったけれど、ことここに至ると精神衛生上たいへんありがたい。 先ほども、「12

          【『手帖』と手“帳”(30)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 30日目)

          【『手帖』と手“帳”(29)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 29日目)

          修復された《睡蓮、柳の反映》を見たのは、2019年の「松方コレクション展」だろうか。その時は全然気がつかなかったけれど、渋い金色めいたキャンバスに固定された残存部分は、釘の打たれていた側面(錆色と穴が残っている)もろとも、いわば“開き”となって貼り付けられていて不思議だ、痛々しいはずなのに妙に現実感がない。 その正面に、人が行き来できるくらいの間隔を開けて竹村京さんの作品が、レースのカーテンのようにはためいているのは、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?

          【『手帖』と手“帳”(29)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 29日目)

          【『手帖』と手“帳”(28)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 28日目)

          昨日は家で、企画メンバーとして関わっているDPPT(Durational Performance Project Tokyo)、その第1回ワークショップについて書いていて、今月中には完成させたい(そもそももう1か月経っている)が、書きたいことが多すぎてなかなかまとまらない。そもそも気圧のせいか、あまりはかどらないまま、夕方になったので散歩がてら、巣鴨に保坂和志さんと山下澄人さんのトークを聞きに行く。散歩がてらなのは家から近いというただそれだけのことで、内心は緊張している。『君

          【『手帖』と手“帳”(28)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 28日目)

          【『手帖』と手“帳”(27)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 27日目)

          17時。新宿【デカメロン】の2階に上がるとがらんとした空間が広がっていて、左手の、隣り合う展示室を覗く。ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの《貧しき漁夫》みたいに、木舟の舳先でこうべを垂れた人影がいて、その人が三谷蒔さんらしい。 手に持った、ゴールデンハムスターくらいの氷を三谷さんはがりりと齧る。飛び散った破片がひとつ、舟と私の間に落ちて、私がいた3時間の内に、当然溶けてはいたけどぷっくりとした水滴のままだった。 船首には(おそらく)ユリが、まだ青々とその花弁を閉じていて、舟の“進

          【『手帖』と手“帳”(27)】(美術鑑賞の日々を小説風に綴る月刊誌『平岡手帖』クラウドファンディング 27日目)