BTS "소우주(Mikrokosmos)" お互いが見たお互いの光 ~日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.053
소우주(Mikrokosmos)
煌めきは星の輝き
瞬きは明かり灯るビル
僕らは輝いているね
それぞれの部屋
それぞれの星で
或る光は野心を持って
或る光は戸惑いながら
人々の灯火
全てが大切な ひとつ
暗い夜
(寂しがらないで)
全てが星のように
(僕らは輝くよ)
消えないで
大きな存在だから
僕らを輝かせてよ
もしかするとこの夜の趣きが
こんなにもまた 美しいのは
あの星たちでも灯火でもなく
僕らのせいなのだろう
君は僕を見つけた
僕は君の存在に夢を見る
僕は君を見つけた
漆黒そのものだった夜に
お互いが見たお互いの光
同じことを言っていたんだ 僕らは
最も深い夜に一層輝く星の光
最も深い夜に一層輝く星の光
夜が深いほど更に輝く星の光
ひとりにひとつの歴史
ひとりにひとつの星
70億の光で輝く
70億通りの世界
70億通りの人生
都市の夜景は
もしかするとまた別の街の夜
それぞれの分だけの夢
僕らを輝かせてよ
君は誰よりも
明るく輝く ひとつ
もしかするとこの夜の風景が
こんなにもまた 美しいのは
あの暗闇でも 月影でもなく
僕らのせいなのだろう
君は僕を見つけた
僕は君の存在に夢を見る
僕は君を見つけた
漆黒そのものだった夜に
お互いが見たお互いの光
同じことを言っていたんだ 僕らは
最も深い夜に一層輝く星の光
最も深い夜に一層輝く星の光
夜が深いほど更に輝く星の光
街の明かり この街の星
幼い頃見上げた夜空を僕は思い出すよ
人という明かり 人という星で満ちた
正にこの場所で 僕らは輝いているよ
君は僕を見つけた
僕は君に生かされている
僕は君を見つけた
漆黒そのものだった夜に
輝き、夢を見て、笑う
ああ 今夜僕らを輝かせて
僕らは僕らのままに輝くよ
輝き、夢を見て、笑う
ああ 僕らに夜を照らさせて
僕ら自身で輝くよ 今宵
韓国語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/31548669
『소우주(Mikrokosmos)』
作曲・作詞: Matty Thomson , Max Lynedoch Graham , Marcus McCoan , Ryan Lawrie , Camilla Anne Stewart , RM , SUGA , j-hope , Jordan “DJ Swivel” Young , Candace Nicole Sosa , Melanie Joy Fontana , Michel Lindgren Schulz
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今回は2019年4月リリースのミニ・アルバム第6集「MAP OF THE SOUL : PERSONA」に収録された "소우주(Mikrokosmos)" を意訳・考察していきます。
この楽曲は、公式アンケートに答えたのべ約34万9千人のARMYが選んだ「好きな楽曲」として上位に挙げられており(出典)、リリース後のライブはもちろん、対面公演が叶わなかった2020年においてもTV番組のパフォーマンスに選曲されるなど、メンバーとARMYさんたちにとって特に大切な楽曲のひとつとなっています。
そんな "소우주" について、「MAP OF THE SOUL : PERSONA」発売時にV LIVEでアルバムビハインドエピソードを語ったナムさんは「コンサートでやったら本当に最高だと思います」と感想を述べています。
1.月で聴きたいプレイリスト
"소우주(Mikrokosmos)" は、"134340"、RMの "Moonchild" と共にNASAが計画している月面着陸50周年記念プロジェクトにおいて宇宙空間で再生されることが決まっています。
(この募集当時はまだジンくんの "Moon" 発表前…今アンケート取ったら絶対リスト入り必至なのに!)
個人的にこの件についてはかなり興奮しておりまして、というのも私、物心ついたころからの天文ファンで、幼稚園時代にもらった誕生日プレゼントが星座の図鑑だったという感じで…そもそもバンタンの歌詞に心を惹かれたのも星や宇宙に関する言葉が多いな、という気づきから始まった部分もあるのです。
そしてここにきて、好きになったアーティストの楽曲がかのアポロ計画の延長線上で本物の宇宙に響き渡るなんて…!
海で聴きたい、山で聴きたい、街で聴きたい…シチュエーションごとに聴きたい音楽をあれこれ楽しく考える作業に「宇宙」という選択肢が加わる日も思っているより早く訪れそうですが、実際に叶うなら私も、この曲を宇宙から地球を見下ろしながら聴いてみたい。そう思います。
2.最も深い夜に更に輝く星の光
ナムさんは、この歌詞の中で以下の部分が最も好きだと前述のV LIVEで話してくれています。「(自分で言って)すみません」とはにかみながらも「これは本当によくやったと思う」と自己評価しています。
"소우주(Mikrokosmos)" はイギリスで活動する2人組のプロダクションチーム「ARCΛDES」が主にその制作に携わっており、彼らは他にも "Jamais Vu" "Inner Child" などでバンタン楽曲の制作に関わっています。
また〈Genius〉にはARCΛDES本人たちによる制作秘話も掲載されています。
これらの記事を総合すると、ARCΛDESが制作した原曲はBigHitに採用された後に韓国側で元々英語だった歌詞とタイトルが変更されたようです。楽曲が "소우주(Mikrokosmos)" として再びARCΛDESの元に戻って来た時、彼らは「その創造性と才能に圧倒された」と振り返っています。
ちなみに"소우주(Mikrokosmos)" というタイトルは、当初英語表記のみだったものにメンバーたっての希望でハングル表記が加わったと前述のV LIVEで言及されています。
私はこの "소우주" の歌詞を読んだ時、飛行機の窓から見下ろした夜の景色を思い浮かべました。まるで星のように散らばる街の灯り。小さなそのひとつひとつが人間の生活と共に在り、ひいては人生そのものの輝きであるという発想には、人への思いやりと尊重の気持ちが込められているように思います。
最も深い夜の闇の中、その闇が深ければ深い程一層輝く星。
人の命が持つ輝きの力強さを描き出すために、敢えて塗り重ねられた漆黒の闇。この明暗の対比からは、画家レンブラントの作品にみられるような崇高な美しさを感じます。
3.同じことを言っていたんだ
楽曲タイトルになっている「小宇宙(ミクロコスモス)」は、宇宙を「大宇宙(マクロコスモス)」とすることを大前提とした上で「人間」を指す言葉であるとのこと。(参考)
要するに、宇宙と人間の間には大きさの単位こそ違うけれど構成要素に一致性があるよ、ということなのですが、この概念を前にして私はふたつの作品を思い出しました。
ひとつは映画「ミクロの決死圏(1966)」。そして小説「銀河鉄道の夜」です。
■ミクロの世界
「ミクロの決死圏」は、人間が小さくなって人間の体内に潜入し、限られた時間の中で治療を施して脱出するSF実写映画です。自分が生まれる前の作品ですが、小さい頃に何らかの形で観たことだけは良く覚えています。
ざっくり言うと「はたらく細胞」のようなイメージの作品なのですが、当時の技術を以てして大変良く作りこまれた名作です。
体内を突き進む間に出会う得体の知れない景色は、地球上では決して出会うことのできないであろう異世界のようでした。まるで別の星を探検しているかのような。それは人間の身体には小さな神秘が宿っているのだと私が感覚的に理解した瞬間だったのだと思います。
前述のV LIVEでナムさんは「身体が透過されて人体の組織が星座のように輝く」のを想像しながら作業した、と、人という容れ物が内に秘めている神秘を意識した話をしてくれています。
■マクロの世界
宮沢賢治作「銀河鉄道の夜」は、天の川についての授業の様子を伝える描写から物語が始まります。
この解説はつまり、自らが縮小される「ミクロの決死圏」とは逆に自分自身の視界の単位を宇宙規模にまで拡大することで、天体の存在がよりわかりやすくなるよ、というしくみになっています。
宇宙はとてつもなく大きくて広く、そして遥か彼方の存在ではあるけれど、そこに在る星々の存在は、我々が見た事のある身近な景色の中にもあるのだ、と。
「같은 말을 하고 있었던 거야 우린(同じことを言っていたんだよ、僕たちは)」と "소우주(Mikrokosmos)" の歌詞にありますが、これはこの「想像の範囲外で理解不能だと思っていたことが、実はとてもよく知ることと同じだった」というミクロとマクロの関係性を歌っているのだと思います。
☆
まずは何事も主観で物事を判断するのが人間を含めた生物が持つ本能なのだと思いますが、自分の視点の位置や視界の尺度を意識的に操作する能力は、感情を持ち理性を得た人間がそれを失わないために必要な力であるのではないかと考えます。
見えている景色を見たままに捉えるだけはでなく、それを構成するひとつひとつの要素に想いを馳せ、また、自分自身がどんな景色を構成する要素のひとつとなっているのかを意識したりすることで、自然と自分に見合った輪郭が生まれてくるのです。
広い広い外の世界にとっては小さな存在でしかない自分自身も、自分という存在にとっては世界の全てそのものである。
自身が世界の全てだと思ったとしても、実際は世界で生きる大勢の中のたったひとりである。
自身のサイズ感を自在に操ることができる「想像力」。
結局、自分のことは誰にもわからないし、他人のことは自分もわからないのですから、わからない部分は豊かな想像力で補っていくしかないのだと思います。大事ですね、想像力。
観客席を埋め尽くすアミボムの光をひとつずつ愛でながら、そこにあるARMYひとりひとりの物語を想う彼ら。そしてそんな彼らの輝きを見守るARMYさんたち。互いの光を互いに見つけ出し、尊重し合う関係が、これからも末永く続いてゆきますように。
最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
Happy Birthday A.R.M.Y!!💜