Jin "Running Wild" 思うがままに生きてゆく 〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.143
Running Wild
僕らには手段が残されている
再び飛ぶことができる方法が
思い出してよ かつてあの頃
命に終わりがないかのように
僕らがどう愛し生きたのかを
出掛けよう 夜明けまで
朝陽を浴びるその時まで
思い出してよ かつてあの頃
僕らが どうしていたのかを
帰れなくなっても 構わない
僕らの愛を冷え切らせないで
僕らがここで耐え抜いていれば
再び光を灯すことができる
僕が 君を連れて行くよ
僕らは思うがままに生きてゆく
陽が昇るまで愛し合い
全てを懸けて走り抜く
命果てるその瞬間まで
僕らは思うがままに生きてゆく
運命のように愛し合い
全てを懸けて走り抜く
命果てるその瞬間まで
僕らは思うがままに生きてゆく
忘れないで
僕らが共に過ごしたあの時間を
僕らがかつて訪れて
世界を制したかのように生きた
あの 全ての場所を
僕らの愛を冷え切らせないで
僕らがここで耐え抜いていれば
再び光を灯すことができる
僕が 君をそこに連れて行くよ
僕らは思うがままに生きてゆく
陽が昇るまで愛し合い
全てを懸けて走り抜く
命果てるその瞬間まで
僕らは思うがままに生きてゆく
運命のように愛し合い
全てを懸けて走り抜く
命果てるその瞬間まで
僕らは思うがままに生きてゆく
英語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/6270644
『Running Wild』
作曲・作詞:Jacob Attwooll , Josh Record , Gary Barlow
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今回は2024年11月にリリースされたJinのソロアルバム第1集「HAPPY」収録のタイトル曲 "Running Wild" を意訳・考察していきます。
Take ThatのGary Barlowが制作陣に名を連ねていることでも話題となったこの楽曲。アルバムリリースを記念して開催された「'Happy' Special Stage」でのジンくん自身によるプレゼンテーションによると、この楽曲をひと言で表すと〈Popping Candy〉である、とのこと。
この件について「以前インタビューでスポをした」と彼は言っていましたが、雑誌「Harper's BAZAAR」2024年9月号のインタビューにて準備中のソロ楽曲たちをアイスクリームのフレーバーに例えていました。↓
ランニングにぴったりのテンポで軽快に弾けるエレクトリックなサウンドが、ジンくんのハイトーンボイスの爽快感を一層際立たせています。
まさにパチパチ弾けるポッピングキャンディー。
ソロ曲としては初の試みである全編英語詞となったこの楽曲で、転役後の本格的なリスタートを切ったジンくん。
楽曲にこめられた想いを読み解きます。
まず、タイトルにもなっている「run wild」というフレーズの意味を考えたいと思います。
「wild」が持っている語感のまま単純に「暴れる」や「暴走する」といった日本語にしてしまわずに、今回は「理性を働かせずに思った通り行動する」というニュアンスでこの語を捉えることが重要だと私は思います。↓
幼い子どものように、我がままを通すことに躊躇しない。後先を考えず、目の前のことに素直に反応し思ったままに振る舞う。
人それを「自由」と呼んだりもするのですが、小さなお子さんが「自分は自由だ!」と思いながら過ごしている訳ではないですよね。
悲しいかな、人が自由を認知するのは自分が「自由ではない」と気づく瞬間であって、本当の意味で身も心も自由でいられる時に自分に与えられている自由に対して感動や感謝、欲求を感じることはまずありません。
楽曲 "Running Wild" で歌われている「wild」は、無自覚に自由を享受していた過去の日々を思い、傍から見れば向こう見ずに行動しながらも幸せに過ごしていた自分たちの姿を取り戻そうとする気持ちの表れなのだと思います。
つまりこの時点でWe(僕たち)が置かれている状況は「自由ではない」と言えるのです。
再び自由を取り戻すために、自分たちに何ができるのか。
物語はそこから始まります。
※1 分詞構文「~しながら」(参考)
※2 stay out all night…朝帰りする(参考)
※3 the last train home…(帰宅するための)最終列車(参考)
命に終わりはなく、家に帰る必要もない。
無限に続く幸せな時間を、あの頃の自分たちは一体どう過ごしていたのか。
ヴァース1では、何事にもいずれ訪れる「終わり」を意識せず自由奔放に過ごしていた時代を振り返り、かつての自分たちの行動をなぞることで自由の不在を解決する術としようとしています。
そしてプレコーラスで注目したいのは「stand」と「light it up」です。
※4
・接続詞When…【条件】~ならば(ifよりも確実な場合)(参考)
・stand still…じっとする/stand…(困難に)立ち向かう、耐える
※5 light up…(物理的・精神的に)明るくする(参考)
standは言わずもがな「立つ」の意ですが、ただ漠然とそこに立っている様子だけでなく、不利な状況下で何かに立ち向かっている様子を表すこともできます。
この「立ち向かう」の意味でstandが使われているのがJung Kookの "Standing Next to You" です。
そんなstandに更にstillが添えられることで、不利な状況を頑として耐える様子が強調されています。
様々な理由で愛の温度を持続させることが困難であっても、じっと堪えていれば「We can light it up once more(再び光を灯すことができる)」。
「light it up」は、あのモンスター・チューン "Dynamite" の主題です。↓
暗闇に光を灯す。
それが自分にできること、すべきことなのだという思いがあらためてここに結実しています。
ヴァース2からのプレコーラスを読み進めると、「かつての僕たち」が「かつてのARMYとバンタン」であることが明確になっていくように感じます。
※6 rule the world…世界を支配する(参考)
※7
・Don't you~…(命令形で)~するな(参考)
・go cold…冷める(参考)
まさに世界を制したとも言える数々の記録を打ち立てたバンタンですが、彼らがその名を背負い世界中の国々を訪れたこと、そのために費やした時間は今時間の流れと共に必然的に「過去」のものとなってしまっています。
無我夢中で生きていた「かつての僕たち」を――全てが輝いていたあの「人生で最も美しい瞬間」を再び取り戻すために、「run wild」の精神を呼び覚まそう。ARMYとバンタンならそれができるだろう。
そんな思いを乗せた歌詞は、空へと突き抜けるような透き通った声で響き渡ります。
※8 will be ~ing…【未来進行形】(未来の時点で)~しているだろう(参考)★計画性がある場合や現状を考慮して確信が強い場合
※9 one's last breath…死の間際、臨終(参考)
ARMYとバンタンなら、再び自由を取り戻すことができる、そう確信を持っているということが、この言葉選びから伝わってきます。
家に帰らないまま朝が来ようが手元に何も残らなかろうが、必ず訪れる全ての「終わり」を恐れずに、そして、自らの命の終わりすらも恐れずに、僕たちならそれができるだろう、と。
自由の不在を以てその存在に気付いたことで、より一層自由に対する欲が強まったとも言えるかもしれません。
メンバー最年長として先頭を切って入隊し最も早く転役を迎えたジンくん。防弾会食でのグループ活動休止宣言から入隊までの時間が他のメンバーよりも短かったこともあり、今回のカムバックが彼の本格的なソロ活動のはじまりとなりました。
転役直後からフル稼働で元気な姿を届けてくれている彼が目指しているものの一片を、この "Running Wild" に見たような気がします。
今回も最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
🐶