スポーツとケガと身体の〈修理〉
鳴尾浜で練習見学させてもらった恩があり、また私の親が長年のファンなこともあって、試合はあまり見ない私も阪神タイガースを応援していた今シーズンでしたが、いろいろ不本意な結果に終わり、残念でした。もちろん、岡田監督の監督姿が、もう見られないことも大いに残念!です。
個人的に、というか整体屋的に残念なのはケガの〈修理〉がうまくいっていないままの選手が多いことで、これはスポーツ界全般と言えば言えるし、スポーツ界に限らずそこら中あちこちで、と言えば言えることですが、〈ケガ・手術の傷痕を修理して丁寧に身体を使う〉考え方がもっと当たり前になってくれると良いのだけれど、と思う。
スポーツ選手がケガで不調、とか引退、とか聞いて私が嘆くと、お客さんから「スポーツ選手に施術したいのですか?」と訊かれることがあります。もちろん施術してみたいのもしてみたいけれど、それより、もったいない!の思いが強いです。
もともと素質的に運動ができる身体で、しかも大抵運動がお好きでしょうから、趣味というか遊び方も身体を使ったものが得意なのだろう、と想像します。そしてそんな人が身体をしんどくしてしまったら、気晴らしに困るんじゃないかしら、と思う。いや、まったく余計なお世話なのですが。
私が施術を引き受けているお客さんの中には、リハビリやトレーニングをするよりささっと〈修理〉したほうがよほどすんなり改善するかたもおられますから、その努力をしている時間ももったいない、と思います。スポーツ選手は時間との闘いな側面もあるわけですから。
聞いた話では、私のお客さんのうち、そんなタイプの筆頭のようなかたが、また、かなりの大ケガをされたらしい。「まだ連絡はありませんか?」と、そのかたのお友だちであり競技仲間でもあるお客さんが〈密告〉してくださって、「ええっ?! また?!」落ち込みました。
その前には、別のスポーツされているかたが、こちらは比較的軽いケガをされていて、ちゃちゃっと〈修理〉をしてました。古傷の〈修理〉がメインになる〈熱心な運動家ではない方々〉と比較すると、やっぱりスポーツはケガをしがちだな、としみじみ思います。
太極拳はかつて、他流試合を入門から10年の間禁じていた、と何かで読んだことがあって、その説明として〈習得にそれだけ時間がかかるから〉みたいなことが書かれていたように記憶しますが、読んでいたときに私が思ったのは、試合をするとケガをして身体を傷める→そうすると身体能力が目減りする→それを門下生に避けさせるため・門下生の身体と能力を守るために禁じたのじゃないか?でした。
傷めた身体は、傷が治った後も、必ず自由度が低下している。本来のスピード・安定感が損なわれ、動きの質は低下する。この変化は、ケガの内容にもよりますが、単純な加齢の影響とは比べ物にならないくらい、大きいものです。緻密な動きを観察し・流れで捉える太極拳の師匠筋が、そのことに気付いていなかったはずはありません。